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第十四章 フォーマメント、リゾート化計画 ~保安庁長官ご子息のまさかの趣味、暴露です。~

 この日の晩。

 領主邸の門の前にはウッドデッキが増築され、焚き火台やグリル、調理台、テーブルなどが用意されていた。フォーマメントで手に入る獣肉や魚、畑の恵みなどをまな板で形をそろえて鍋やグリルに入れれば、スープとワイルドな串焼きの完成となる。

 領主邸の魔導ランプをすべて消して、ランタンと焚き火の明かりだけにすれば、真珠を添えたような月と石英をちりばめたような星たちが輝く美しい夜空を満喫することができる。また湖面が真っ暗な森と鮮やかな夜空を映し出し、鏡写しの絶景を演出している。

「こんな素晴らしい景色を毎晩眺められるのね。確かに、泊りがけで訪れられたらいい癒しになれるわ。これから建てようとしているキャンピングハウスも、こんな風にウッドデッキでキャンプ料理が楽しめられるようにするの?」

「そのつもりッス。キャンプ料理に舌鼓を打つもよし、ハンモックやキャンプチェアを広げてのんびりするもよし、日々の忙しさから逃げた先でのんびり書類仕事片付けるもよし、『何でもできる家』にしたいッスねえ」

「何でもできる家、ですか。それは面白いアイデアね。そうねえ。私だったらだらしない夫と手のかかる息子から逃げて、『奥様の愚痴り大会』と称してワインとチーズとソーセージで盛り上がりたいかしら」

「ぜひぜひ、大人数でお越しくださいッス!」

「あとは、そうね……。息子がここに来たら、絶対に『ライブがやりたい』って言いそうね。あ、言い忘れてたけどうちの息子、『メリクス共和国スタイルのヘヴィメタルバンド』をやってるのよ。アホなことしてるわよねえ、王国議会の一長官の息子のくせに」

「ほほう、それは興味あるッスなあ」

 すると、ピエリーナが意見した。

「それなら、アルケモートのクラヴィアと同じように音楽家や舞台役者を応援するための施設を作るのはどうなのです? いつか作る湖上ホテルの船を背景に『円形劇場』を作るのです!」

 円形劇場。

 円形のステージの周囲に放射状かつひな壇状の客席を設けた施設のこと。観客はなだらかな坂に用意された客席から見下ろす形でステージを眺められるため、前の人の頭で遮られることはない。この形状のステージは、旧・大ノルド帝国時代にすでにあったものだ。

「それはいい考えです、ピエリーナ。見せ方によっては、冒険もの、海賊ものなどの演目が見られそうですね」

 空はイノシシ肉の串焼きを頬張ってうなずくが、ひまりはワインを少し口にして思案する。

「されど、ヘヴィメタルライブについてはそれだけの集客が見込める楽団でなければ受け付けられぬでござるな。癒しの空間でなくしてしまう以上は、多くの利用者を呼び込めねば採算が取れそうもないでござる」

 すると、グレンが意見した。

「それなら、人気の少ないアーティストや楽団などを多く集め、その中に目玉となるだけのアーティストを呼び込むと言うのはいかがでしょうか。弊社の社内パーティーでもよくやっていたことです。社員には何が受けるか分からなかったこともあるのですが、多くのアーティストの発表の機会となり、あるアーティストのことは知らなくても別のアーティストを目当てでやってきた観客が新しい表現と出会うきっかけにもなりましょうし、フォーマメントにとっても採算が何とか取れなくもないと思いますが」

「採算が取れなくもない、という微妙な感じは元社長らしくないッスね」

「こういう若者を育てるための機会や先行投資は、あってよいものかと存じます。そのうち面倒を見たアーティストが有名になって里帰りし、この地に多くの観客を呼び込むのではないかという夢も見られないでしょうか」

「ん~、そういう考え方もありッスね」

 そこに、レリックが口をはさんだ。

「確かに事業者としては経費をかけて人を育てるという考えもあるでしょうけど、これは客相手の話よ。商売人としては元を取れればいいだけではなく、きちんと自らの成長と更なる飛躍のために利益をきちんと出さなければいけないわ。たとえ半額セールを実施しようとも絶対に赤字にならないくらいにはね。そこは、この子たち以上に元社長の方がご存じでしょうけれど」

「そっか、そッスね。ピエリーナ、そこらへん商売人の娘としてはどう考えるッスか?」

「長官さんのおっしゃる通りなのです。ちなみに、原価や仕入れ値については絶対にどの商売人も教えない社外秘なのですし、従事先で知ってしまったそれを外で吹聴しようものなら……、殺されるのです」

「死!? まあそれだけ重大な企業秘密ってやつッスよね。ズルい客はどこまでも値切って原価に近い価格で買いたいだろうし」

「それに、『原価で欲しけりゃ自分で作れ』って言葉があるのです。でも増産体制が整っている製品こそ安く仕入れ安く提供できるので、たったひとつの物を原価で作ろうとするなら人から買った方が安いのです。ズルい人は痛い目を見ろ、なのです」

「かわいい顔してえげつねえ……。でも確かに商売として、自分らはひとつの事業として成立させるのであれば、きちんと利益の出る方法を考えないとダメってことッスね。でもそれにはどうしたら……」

 小鍋で溶かしたチーズにソーセージを絡めてかじりつくアレットに、ピエリーナは言った。

「方法はふたつあるのです」

 ピエリーナが提唱する、ふたつの方法とは?

「とは!?」

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