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第十四章 フォーマメント、リゾート化計画 ~高級リゾート開発は無茶な夢っだったんッスかね……?~

 ライノックからの開拓支援金も三分の二ほど使い、領主邸、来客用宿泊棟、ピエリーナの両親の別荘、井戸と風車小屋、畑、その他こまごまとした設備が完成した。開拓には四人の縁で結ばれた人々、主に陸軍関係者やアルケモートの住民が協力し、節約できるところはできた。

 しかし肝心要の、金持ち相手のリゾート運営計画は多少座礁気味にあった。と言うのも。

「お金持ちさんの感覚って、分からないんですよね」

 と言う空の意見に、誰もが頷いた。

「そこで、保安庁諮問探偵と言う立場から今度はこちらから依頼を出したッス。ご登場、保安庁長官、シヴァ・レリック女史ッス!」

「私もいますが」

 アレット、そして雇われ経営者グレン・パワードに紹介されて登場した人物、保安庁長官シヴァ・レリック。ウェーブがかった白髪の年配の女性で、淡いライトグリーンのスカートスタイルのスーツに純白のドレスシャツ、銀色の縁の眼鏡に、ビビッドオレンジのタイが映える。

「お初にお目にかかります、皆様。只今ご紹介にあずかりました、シヴァ・レリックです。今日はこのような素敵な湖畔のお屋敷にお招きいただきまして、ありがとうございます」

「初めまして、呉空と申します」

「河上ひまりと申します」

「ピエリーナ・マルゲリータなのです! どうぞ、お茶を用意しているのです!」

 グレンとレリックは、空にテーブル席まで案内されてピエリーナのポーションティーを味わう。「なかなかいい抽出加減だ」とレリックに言われ、ピエリーナもうれしそうだ。

 開拓の具合を尋ねた後、レリックは本題に入る。

「それにしても素晴らしいわ。これだけの手つかずの自然に静かな湖、ここはいいリゾート地になる可能性は充分に秘めていると思う。ただ、普通のキャンプ場としても」

「キャンプ場、ですか?」

「そう。普通リゾート地を作ろうと思うのならば、それだけ事業を展開できている実業家が新たなる莫大な利益とそれをもたらす富裕層を呼び込むための策と資金と人員を用意するものよ。一国一城の主となったのだからここで大きな夢を叶えようと思って失敗するのは、新人領主の陥りやすいトラップ。まずは『高級キャンプ場』として始めてみるのはどうかしら。もちろん、呉さんの船上ホテルはありだと思うわ。運べれば、だけど」

 全否定までされなかったが、やはり自分たちの夢は大きすぎたかと空たちはうなだれた。

「それについて、パワード元社長。今は何とお呼びすれば?」

「では、『代表』で」

「パワード代表は、呉さんたちの意見を聞いてどのように開拓すべきとお思いでしょうか」

「可能な限り夢を叶えて差し上げたいと思います。そもそもリゾートとは休暇を満喫するための場所を意味し、富裕層を相手にした豪華な行楽施設であるだけがリゾートではありません。高級リゾートにはならないとしても、それとキャンプ場の中間をねらった、『この自然豊かな大地を最大限に生かした癒しの場』とできればよいのではないでしょうか。長官もこちらにお泊りになればお分かりになりましょう。ここ、フォーマメントの夜景は絶景でございますゆえ」

「そうね。では夜を楽しみにしつつ、もう少し議論を進めましょうか。せっかく金持ち相手のリゾートをと狙って私を呼んだのでしょうけれど、期待外れな結果になったかしら?」

 それには、アレットが首を振ってこたえた。

「いいえ。夢見がちな自分らを正しく導いてくださったことに感謝するッス。それでもやっぱり、いつかは長官たち王国議会の人々にもくつろいでもらえるような場所にはしたいッスね」

「では、せいぜい水回りは充実させてほしいわね。上下水道、入浴設備、トイレ、そして洗濯。できればクリーニングサービスを用意してもらえれば、数日間の宿泊になっても多くの着替えを持ち運ばなくても済むでしょう?」

「確かに。でもそうなると別料金が欲しいッスね」

「そうねえ。だいたい、ドレスって洗わないから」

 まさかの言葉に、空たちは驚愕した。

「洗わないんですか!?」

「それはそうよ。だって下手に洗うとドレスがしわになるし、アイロンがけも素人がやったら布地が痛むじゃない。だから多くの場合、誰でも汗はかきたくないし、防腐ミストをかけて保存し、体臭をごまかすために香水をかけているのよ。その調合も面倒くさくてねえ」

「拙者は旅の間、川の水にさらす程度で済ませていたでござるが……。さすが上流階級、ドレス一着でそのこだわりよう」

「その道の職人さんをキャンプ場に呼ぶことって、できるのです……?」

 そしてアレットの意見としては。

「代表、任せたッス」

「投げられましたか!?」

 人脈だよりであった。

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