校外学習に行こう その二
「それでは、班を決めたいと思います。六人の班が二つ、五人の班が三つです。それでは班を作ってください」
草部先生が悪魔の発言をした。
ボッチに辛いのは当然だが、その余った仲の良くない名前すら危ういクラスメイトを無理矢理に仲良しグループに紛れ込ませて空気を壊す。
そうならないために、俺達も急いで班を作ることにした。
とりあえずは俺と千歳は早々に同じ班になることを決め、他のメンバーを誘おうと動き出すと、均が近づいてきた。
「二人とも僕達と一緒の班に入らないか?」
「ちょうどこっちも人を探してたんだ」
「ありがとう。助かるよ」
均は辟易した様子で、俺の手を握った。
均は優秀だし引く手あまたで、押しにも柔いから早くメンバーを決めてしまいたいんだろうな。
すでに押されたらしく、一緒の班には神楽坂と鹿山がいるし。
これで五人だし、一先ずはいいかな。
ちなみに猿弥は、他のクラスメイトに引っ張られて別の班に混ざった。
今でも俺をにらみつけている。
こっちにお前達三人は入らないから、他の人達と組んでくれ。
「木花さんまた独りぼっちだ」
千歳がそう言った先には席から一歩も動かない女子が居た。
確か木花柳って言ったっけか?
高身長でスタイルもいいのに引っ込み思案。
友達も作らず口数も少ない、それでいつも一人で人形なんかを作っている暗い女子だ。
スポーツテストの時にもいたけど、話している所を見たのは数えるくらいしかない程だ。
「ねえ、木花さんをウチの班に入れてもいいかな?」
「俺は別に構わないぞ?」
木花は暗いけど嫌な奴じゃないのは何となくわかるし、千歳がそう言うなら俺に異論はない。
「僕も構わないよ。こういう時じゃないと話してくれないだろうしね」
「うーん……、うん大丈夫あの子なら別に一緒でも平気だね」
快諾した均とは別に神楽坂がしばらく木花を観察した後に了承した。
「神楽坂って相性とか見えたりするのか?」
「気にしないで、自分のライバルになるかを見てただけ。そんな能力はないから」
俺は鹿山に聞いてその行動に納得した。
神楽坂は均に気があるらしい。
それで、木花が均を好きかを確認してたってことか。
「それだと千歳は良いのか? 均と仲が良くなると困るんじゃないのか?」
「それは私から見ても絶対にないわ。朴念仁」
俺が聞くと、はっきりと否定されたのは嬉しいが、最後になぜかののしられてしまった。
俺が鹿山と話している間に、千歳が木花を引っ張ってきた。
「連れてきたよ」
やって来た木花は相変わらずデカい。
このクラスには大鉄がいるから、感覚がマヒしてしまってるけどそれでもかなりデカい。
「木花さんはもう班とか決まってる? 決まってないなら僕達と同じ班はだめかな? 僕達は君ともっと仲良くなりたいんだけど。どうだろう? 決まってるなら無理にとは言わないけど」
「均、一気に言い過ぎ。俺達と一緒に校外学習しないか? くらいの方がいいんだよ」
この手のタイプはそんなに聞かれても答えられない場合が多い。
伊達に小中とあぶれたクラスメイトと組まされていたわけじゃない。
そのせいであぶれた連中以外があんまり組んでくれなかったけど……。
「そういうのを一般の学校は教えてくれるのか?」
「過去の経験からだ。だから間違ってるかもしれないけどな」
「あの……、お願い、します」
俺たちの会話から数テンポ遅れて木花は頷いた。
これで俺達は六人組の班になった。
そのまま班が決まると、班ごとにまとめられる。
「班も無事に決まったようですし、今度は校外学習の行先を決めたいと思います」
「校外学習って、行先決まってるもんじゃないの?」
「決まってないよ。鏡の世界を歩き回ることが目的だから」
俺の質問に千歳が答えてくれたけど、やっぱり意味がわからない。
鏡の世界って無人じゃないのか?
魔法の実習の時に動き回ってるけど、他の人間に出会った記憶がない。
「静かにしなさい」
草部先生に怒られたため、とりあえず話を最後まで聞くことにした。
「皆さんも知っている通り、この大照町近辺は学校の関係者によって無人です。ですが、他の町に行けばそれなりに魔法使いが住んでいます。一年生の校外学習の目的は鏡の世界で生活をしている人々に触れる事です。ですが、どこでもいいわけではありません。生活している人の中にも犯罪者は紛れています。皆さんは一年生ですので、あらかじめ学園が選定した中から選んでください」
あの世界に人が住んでるんだな。
そう言えばあそこってライフライン使えるんだったな。
普段は意識してなかったから忘れてたな。
草部先生の説明が終わると、周囲が相談を始める。
生まれてから旅行以外で町を出ない俺なので、鏡の世界とは言え町外に出るのは嬉しい。
「じゃあ、どこに向かおうか。学校のサイトに載っていた通り各地方の中から選ぶみたいだね」
北海道から沖縄、関東に関西、流石に各都道府県とはいかないらしいが、それでも全国を選べるんだな。
「私沖縄に行ってみたい。海綺麗なんでしょ?」
「私も賛成」
「私は北海道がいいな。広い土地で魔法使ってみたい」
「僕は純粋に京都とか見たいな。一度行ったことあるけど、誰もいない神社とか見てみたいな」
「俺はシンプルに都会が良いから関東かな」
綺麗にみんな行きたい場所がバラバラだな。
神楽坂と鹿山が沖縄で、千歳が北海道、均が京都、俺のは都会だったらどこでもいいけど。
「最後は木花だよ。一緒に沖縄にしようよ」
「北海道で美味しい物食べましょう」
「日本の歴史を感じよう」
「都会のコンクリートジャングルを見に行こう」
俺達が一斉に木花に話しかける。
「私は……」
そう言ったまま大きな体を小さくしてしまう。
やっぱりこういうのはダメか。
どこにするはダメな気がしていたから、候補を更に狭めてみたけど一気に聞いたのは良くなかったか。
「木花はどこか行きたい場所はあるのか? 少し考えてくれ」
中々話そうとしない木花にそう言って、こちらはこちらでもう少し話し合うことにした。
行先決めから十分ほど経ち、五人の言い合いが平行線をたどり始め、ようやく木花は自分の意見を述べる。
「私も、東京がいい……」
「だよな。田舎から出るとしたら都会に行くしかないよな」
「そうだね。話を聞いた限りだと、僕以外みんな地方みたいだし僕が道案内してあげるよ」
木花と均が賛成したことで、形勢は逆転し俺達の行先は東京になった。




