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仁王立ちヒーロー  作者: 時宮のシロ


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7/11

第7話 閉じられたドア

 夕方の街並みに、少し賑わうコンビニ店。

 仕事帰りに、くたびれたスーツ姿のまさるが買い物をしている。


 ふいに、近くで女性の笑い声が弾け、思わずまさるは顔を向ける。


「ねーぇ。早く帰ろうよ。」


 まさるたちよりも若く、付き合いの長そうなカップル。

 特別目立つ風でもないカップルだが、女性の幸せそうに輝く顔と甘えたような目線に、まさるは目を奪われる。


(──!)

 まさるは、不意にカップルの女性を『あい』に、男性を『はるみ』に重ねてしまう。 


 まさるの目が、カップルに釘付けになる。

 ポカンとした顔で見続けてしまう。


 視線を受けて、カップルが居心地悪そうにその場を離れていく。

 まさるは目を逸らし、気まずさと混乱を胸にレジに向かう。



 まさるが、コンビニの自動ドアを抜けて歩き出す。

 帰宅途中の道の先に、赤ん坊を抱いた女性と、幼児を抱いた男性が、仲睦まじそうに歩いている。


 まさるは自然と歩調を合わせ、若い夫婦の少し後ろを続いていく。


「やっと引越しできる。もう、この子の足音がうるさいとか、気を遣わなくていいのね。」


 女性はふふっと笑い、幸せそうに夫を見上げる。


(──。)

 まさるはその夫婦に、再び『あい』と『はるみ』の姿を重ねてしまう。


 まさるは顔を真っ赤に歪めて立ち止まり、俯いて立ち尽くす。


 ──まさるの脳裏に、あいの『実家の』玄関ドアが浮かぶ。


 まさるは、両手の親指で人差し指の爪を押し、ぎりっと震えるほど拳にして握りしめる。

 人々は道端で仁王立ちするまさるを、気に留めることなく追い越していく。



 まさるは視線の先にある、自分のくたびれた革靴に気付き、ざわつく胸を抑えてゆっくり歩き出す。

 怯えた表情を浮かべて、まさるは足取り重く帰っていく。

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