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仁王立ちヒーロー  作者: 時宮のシロ


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6/8

第6話 距離

 ──現在。


 はるみの家の客間は、朝の日の光がカーテン越しに溢れている。

 ホテルのような、モノトーンで揃えた室内。


 セミダブルベッドの上に、あいが背中を丸めて寝ている。


 あいは、布団の中で静かに目を開けている。

 怯えた目で、張り付いたように動かず、じっとしている。



 はるみの私室にも、薄いカーテン越しに朝の光が溢れている。

 目を覚ましたはるみは、まさるの布団を覗き、空になっていることを知る。


 はるみがLDKに入ると、まさるがコーヒーを淹れていた。


「おはよう。」


 はるみは、キッチンの棚からカップを取り出してまさるに差し出す。


「おはよう。俺も飲みたい。」


 まさるは自分のコーヒーを半分、はるみのカップに移す。


 はるみとまさるはキッチンで立ったまま、コーヒーを飲む。



 三十分後。

 明るいキッチンに、トーストの香ばしい匂いが広がる。

 朝食をテーブルに並べ終えたまさるとはるみが、それぞれ椅子に座った時、ドアが開き、あいがパジャマ姿のまま現れる。


 あいは顔色悪く、気が抜けたような笑顔を浮かべている。


「……おはよ。寝坊しちゃった。急いで支度するね。朝ごはん、先に食べてて。」


 あいは、まさるとはるみの返事を待たずに、ドアを閉めて立ち去る。


 まさるは凍りついたように閉まったドアを見つめ続ける。

 はるみは一度だけ視線を向け、言うかどうか迷ったあとで声をかける。


「まさる。とりあえず食べよう。」



 朝食を食べ終えたまさるは、片付けも後回しにあいがいる客室に向かう。

 ドアを控えめにノックして、一歩下がった場所に立つ。


 少し間を置いて聞こえる、あいの小さな返事。

 ゆっくりと、──ドアノブを握りしめたまま、細くドアを開けたあいが、既に身支度を済ませた姿を覗かせる。


 まさるは、あいと目が合った瞬間、あいの目に泣いていた跡を見て口元を歪める。


 あいはまさるの表情に慌てて瞬きで潤んだ目をごまかし、懸念を払うようにまさるに首を振って見せる。


「まさる。大丈夫だから。」


 ぎゅうっと、親指で人差し指の爪を押すまさる。

 あいが向ける笑顔を受けて、ますます顔を険しくする。


 あいはまさるから顔をそむけて一度室内に戻り、カバンを手に出てくる。


 まさるの前を通り過ぎて小走りに廊下を駆け出し、リビングに顔を覗かせてはるみに告げるあい。


 「はるみ。今日はもう出るね。ごめんね!いってきまーす。」


 再びまさるの前を足早に通り抜け、あいは玄関に向かう。


「待ってて!家まで送るから!」


 靴を履き始めたあいに、まさるは慌てて声をかけて、はるみの私室に忙しなく向かう。

 はるみの私室に飛び込み、まさるは手早く着替えて支度を済ませ、カバンを掴む。


 はるみが一度だけ、まさるを見る。

 言いかけた言葉を飲み込むようにしてから、朝食を片付け始める。

 その手が少しだけ遅れてから、ひらひらと振られる。


「いってらっしゃい。」


「片付けごめん!いってきます。」


 まさるが玄関に駆けつけると、あいは靴を履いた状態でおとなしく待っていた。


 まさるはほっと胸を撫で下ろし、あいと共にマンションを出発する。

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