第25話 守ってあげるからね
川越街道沿いは、車が賑やかに行き交っている。
涙は止まり、まさるの呼吸は明らかに荒くなる。
──コンビニの日──
若く、付き合いの長そうなカップル。
女性の幸せそうに輝く顔と、甘えたような目線。
カップルが、あいとはるみに重なる。
(俺じゃなくてはるみだったら、きっとあの時に助けられた。)
──コンビニからの帰り道──
ふふっと笑い、幸せそうに夫を見る妻。
夫婦もあいとはるみに重なる。
(はるみだったら、俺より幸せにできる。守れる……!)
非常に荒い呼吸をして、まさるが苦しそうに顔を歪めている。
まさるの走る速度が、みるみる遅くなっていく。
《はるみ》「また来るから。絶対来るから!」
子供のような口調のはるみの声が、まさるの頭を殴るように響く。
街灯が少なくなり、足音と風の音だけが響く。
まさるの荒い呼吸が耳の中で鳴り、胸が痛くてたまらない。
(はるみ……。ごめん、はるみ。)
足は重く、前に蹴り出すのもやっとに感じる。
(ごめんなさい。俺が悪かった。俺が子供だった。)
まさるは歯を食いしばる。
ペースを取り戻そうと、足で力強く地面を蹴り続ける。
──風の音が響く。
《母親》「まさる──。」
愛しげにまさるを呼ぶ母親。
まさると視線を合わせた途端、目をキラリとさせて微笑むまさるの母親。
まさるの呼吸が落ち着き始める。
足が勝手に軽く動き、苦しさや疲れを感じにくくなる。
整った呼吸音だけが静かに響く。
まさるは、体が空を飛ぶように走る不思議を感じている。
《あい》「……まさる。」
啜り泣く声。
《少年まさる》「お母さん、見て!」
《あい》「まさる。まさる。まさるまさる。まさるッ!」
嗚咽。
《少年まさる》「強いよ! 僕はもっともーっと強くなって」
《あい》「まさる。大丈夫だから。」
瞬きで潤んだ目をごまかし、まさるに首を振って見せるあい。
《少年まさる》「守ってあげるからね。」
《あい》「まさる……怖いよぅ。助けて。」
──風の音が響く。
《母親》「素敵……! まさるはヒーローになるのね。」
まさるの整った呼吸音が響く。
《あい》「助けて。──お願い。」
(あいが俺に、助けてって言った!)
まさるが、目に力を込める。
全力で駆けて行くまさる。
──風の音が響く。
この物語は、「不可侵領域」(はるみ視点)と対になる作品です。
『不可侵領域』はこちら
https://ncode.syosetu.com/n4829me/




