第24話 僕はもっと強くなって……
──まさるの幼年時代。
明るく、片付いた居間。
「お母さん、見て! ハッ!」
洗濯物を畳む母親の横で、幼いまさるが仁王立ちしている。
「まさる! すごーい! かっこいい!」
まさるの母親は大きく拍手し、きゃーっと声をあげて笑う。
まさるは拍手を浴びながら、どうだとばかりにポーズを決め続ける。
顔は得意げに輝いている。
「強そうね。」
「強いよ! 僕はもっともーっと強くなって、お母さんもお父さんも守ってあげるからね。」
まさるの母親の目が誇らしそうに光る。
「素敵……! まさるはヒーローになるのね。」
母親は微笑みを浮かべて、まさるを真っ直ぐに見つめる。
風が窓から吹き込み、居間のカーテンがそよぐ。
──現在。
まさるの荒い息遣いが、夜道に響く。
走り続けるまさるの両目から、大粒の涙が溢れ、こめかみに流れていく。
涙が溢れて止まらない。
頬を濡らしながら、まさるは走り続ける。
街灯の光が、駆けるまさるを静かに照らしている。
涙で滲む視界を、必死で進むまさる。
──過去の断片──
母親の服を口元にあて、背中を丸めて床に沈んでいる父親。
(お父さんに俺は何も出来なかった。)
──陽の光が差し込む部屋の中──
《父親》「うう! うう! ……俺は! あぁ……!」
父親の声を聞きながら、ベランダで立っていただけの自分。
疾走しながら、まさるは泣き続ける。
──風の音が響く。
この物語は、「不可侵領域」(はるみ視点)と対になる作品です。
『不可侵領域』はこちら
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