第23話 あいの一歩
──大学生時代。
大学構内。並木道の下を、まさるとはるみ、あいが並んで歩いている。
「家を出なよ。」
唐突にあいに言い出すまさる。
「ええー?」
笑って流すあい。
「……。」
まさるは歩き出すあいを目で追う。
黙って二人を見ているはるみ。
後日。
並木道の下、まさるとはるみ、あいが立ち話をしている。
「家を出なよ。」
再び唐突に言うまさるに、あいは笑顔を浮かべて戸惑う。
「……。」
真剣な顔のまさるに、あいは目をふせる。
はるみは、黙って二人を見ている。
更に後日。
「まさる!」
あいが、大学構内の食堂に立つまさるとはるみを見つけて駆け寄ってくる。
「大学近くに住んでる親戚のおばさまがね、一緒に住もうって! 使ってない二階に下宿させてくれるって! 家事を手伝えばお金はいらないって!」
あいが弾んだ声で、まさるに一気にニュースをまくしたてる。
引越しの日。
親戚の家に移り住むあいを、まさるとはるみが手伝っている。
まさるとはるみは、大きな段ボールを一つずつ持って、引越し先に向かって歩いている。
到着して、はるみはあいの親戚の家──古い昭和風の戸建てを見上げる。
「いい家じゃん。荷物本当にこれだけ?」
「そうだよ。二階に住むだけだもん。」
大きなバッグを肩にかけ、あいは晴れやかな笑顔で二人に振り返る。
──現在。
「……はあ! ……はあ! ……はあ!」
川越街道沿いを、まさるは走り続けている。
『美味しそうなカレー! まさるのカレー、大好き。』
あいの言葉と、はるみとあいの楽しげなお喋りの声が、まさるの脳裏に響く。
続いて、カーテンがはためく音。──風の音。
この物語は、「不可侵領域」(はるみ視点)と対になる作品です。
『不可侵領域』はこちら
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