第21話 一番早く
まさるは、狭い廊下を軽やかな足取りで通り抜ける。
(電車? いや、タクシー?)
慎重な急ぎ足で階段を駆け降りる。
(いや、一番早いのは……。)
決断し、都営住宅前の道を駆け出していく。
まさるは、通話を繋いだまま、スマートフォンをバトンのように握っている。
──団地外。住宅街の路地。
足取りが走りに変わる。
狭い道の舗装を踏み締める足音が、リズムを刻む。
(あいが実家に? なんで!いつから?)
まさるの脳裏に、あいの『実家の』玄関ドアが浮かぶ。
ぎりっとスマートフォンを握りしめる。
まさるは、怒りの形相で駆けていく。
──川越街道までの道。
街灯の灯りが道を照らしている。
静かな住宅街の風景が流れる。
荒くなる息を抑えつつ、まさるは黙々と走り続ける。
(俺がいつもみたいに会っていたら……。絶対帰さなかったのに!)
──川越街道合流後。住宅街の小道。
まさるは顔を汗ばませて走り続ける。
呼吸は乱れている。
久しぶりに通る道。
視界の隅に、大学生時代の自分の姿がふと重なる。
この物語は、「不可侵領域」(はるみ視点)と対になる作品です。
『不可侵領域』はこちら
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