第20話 助けて
夜。まさるの私室。
まさるはカバンからスマートフォンを取り出し、操作する。
久しぶりに開いたグループトーク画面は、まさるがドタキャンした日から、はるみのメッセージで溢れている。
まさるはスクロールしながら、トーク画面を目で追う。
読み終えた部分を、何度も繰り返し見返す。
「はるみ……。」
まさるが呟いたその時。
着信音が鳴り始める。
まさるが目を見張り、画面に釘付けになる。
【着信表示】
<あい>
まさるは慌てて私室を出て、着信を取る。
「あい?」
「……まさる。」
まさるは頭がぐらりとして、思わず小さく頷く。
「うん。俺だよ。」
「……。」
「あい?」
スピーカーから、あいの息を殺したような啜り泣きが聞こえる。
まさるは、親指で人差し指の爪を押す。
あいが啜り泣き続ける。
まさるは室内を歩き回る。
「まさる──。……ふ! うぅ……ふ!」
あいの啜り泣きが、嗚咽に変わる。
まさるは固まって、目を見開く。
あいの嗚咽が途切れず響く。
「あい。」
「はい……。」
「今、どこにいる?」
「──家。」
「家?」
まさるは、爪を押していた拳を振り開いて、カバンを掴んで玄関へ駆け出す。
耳にスマートフォンを当てながら、じれったそうにスニーカーを履く。
「今、実家にいるの。──まさる。まさる。まさるまさる。まさるッ!」
まさるの目が、怒りに燃える。
「まさる……怖いよぅ。助けて。──お願い。」
「すぐ行く! 今すぐ行くから!」
まさるは玄関を飛び出し、走り出す。
この物語は、「不可侵領域」(はるみ視点)と対になる作品です。
『不可侵領域』はこちら
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