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第18話 幸せの女王様
──まさるの少年時代。
母親が亡くなる数日前。
玄関には、泥に汚れたスニーカーと、ひしゃげたスニーカー、上品なパンプスが並んでいる。
明るい陽の光が、小さな居間に差し込んでいる。
開けたベランダの窓からは、爽やかな風が吹き込み、カーテンをパタパタとはためかせている。
「まさる──。」
愛しそうにまさるを呼ぶ母親に、まさるが振り向く。
まさると視線を合わせた途端、目をキラリとさせて微笑むまさるの母親。
まさるの父親が賑やかな足取りで、居間に入ってくる。
「はいはいはい。お風呂が出来ましたよ。」
まさるの父親は、得意そうに妻の手を握る。
「今日は女王様のお好きな、薔薇の入浴剤です〜。」
おどけて笑う、まさるの父親。
まさるの母親もわざと厳かに夫を見つめ、瞳を輝かせて微笑む。
「──嬉しいわ。」
父親に手を引かれ、母親がゆっくり居間を歩き去っていく。
まさるは母親の背中を、真っ直ぐに見つめている。
この物語は、「不可侵領域」(はるみ視点)と対になる作品です。
『不可侵領域』はこちら
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