第13話 とても許せなくて
はるみの実家の子供部屋。
父親に促され、母親が急ぎ足で部屋を出ていく。
はるみは父親に向かって立ち、目をギラギラさせた笑顔を向ける。
誇り高いはるみの、理不尽への怒りは、激しく内に向かっている。
父親は、静かな厳しい表情で見返す。
はるみは急に白けた表情を浮かべ、挑戦的にニヤニヤニタニタと笑いだす。
父親は引かずに、はるみを受け止め続ける。
はるみの実家の母親の部屋。
はるみの父親が椅子に腰掛け、頭を抱えてじっとしている。
はるみの母親がそっと夫に寄り添い、背中に手を当てて悲し気に目をふせる。
5年後。はるみの実家の子供部屋。
背の高い中学生になったはるみが、父親と向き合っている。
はるみはポカンと開いた目で父親を見つめ、──憑き物が落ちた様子で立ち続けている。
はるみの様子に気づいたように、父親は疲れた目を細め、安堵と愛おしさを込めて微笑む。
はるみの実家の母親の部屋。
穏やかに微笑んで目を伏せ、涙を流す妻を、はるみの父親が力強く抱き寄せる。
はるみの実家の子供部屋。
ベッドに腰掛けて、窓の外を見ているはるみ。
静かな凪いだ瞳で、木漏れ日が揺れる木を見つめている。
静まり返った深夜。
はるみはベッドの中で、虚ろな目を静かに開けている。
脳裏に、これまでの自分と父親の姿が次々と浮かぶ。
(あんなことまでして──。)
(どうして止められなかった?)
(あんな俺を、父さんは──。)
『はるみ。』
父親が呼ぶ声が思い出される。
疲れた目を細めて、優しく微笑む父親の顔。
はるみの胸が緩みかけ、同時に強烈な自責の念がはるみに襲いかかる。
はるみが叩きつけた、たくさんの酷い言葉が、頭に湧き起こる。
脳裏に浮かぶ父親の力強い眼差しは、揺れて暗くなっていく。
はるみは両手で顔を覆う。
「いやだ、ごめんなさい……。」
顔に当てた手で、拳を握るはるみ。
「いやだ。ごめんなさい。いやだ。ごめんなさい──。」
はるみは啜り泣きながら、小さな声で呟き続ける。
翌朝。
はるみの実家のダイニング。
朝の光が、レースのカーテンを白く光らせている。
大きなダイニングテーブルに、はるみと父親が向かい合って座っている。
「はるみ?」
父親の呼びかけと視線から逃げるように、視線を逸らして黙るはるみ。
「はるみ。」
はるみはおどおどと首をすくませる。
父親は、じっとはるみを見据える。
はるみは黙って俯き、体を硬直させる。
父親は、はるみを見据え続ける。
この物語は、「不可侵領域」(はるみ視点)と対になる作品です。
『不可侵領域』はこちら
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