第12話 支配のあとに残るもの
──はるみの少年時代。
少年はるみが、父親と共に校門をくぐり、校舎に向かっていく。
小学校の教室。はるみが父親と教室に入り、登校していた子供たちがシン──と静まり返る。
はるみの父親は冷静に、慎重に子供達の様子を観察する。
はるみは静かに席につき、荒れた引き出しを淡々と整え、荷物をしまう。
担任教師が、教室に入ってくる。
「──!」
担任教師は、はるみのそばに立つ父親を見て、ギョっと目を剥き、血の気を引かせる。
はるみの父親は、教師の表情に確信を得る。
怒りを抑え、威厳を凄みに堂々と、担任教師を見据える。
後ろめたさに、震えだす教師。
ビリリと教室に緊張が走り、子供たちが固唾を飲んで大人たちを見つめる。
はるみの父親は、敢えて低く穏やかな声で挨拶し、担任教師を誘って教室を出ていく。
子供達は声も立てずに二人の大人の様子を伺い、はるみは静かに席で本を読み出す。
はるみの実家の子供部屋。
床に散らばった文房具とノート。
はるみの激しい息遣いと、小さな物音が聞こえる。
はるみが──父親の腕の中で暴れている。
無表情に硬くしたはるみの顔は、憎悪に燃え、目は狂気に揺れている。
はるみは、父親にしがみつき、手足を振り回し、声を殺してもがき続ける。
はるみの父親は大きな背中を丸め、暴れる息子を力づくで抱きすくめる。
はるみの頭を、父親が大きな手でそっと包むように支えている。
小学校の教室。
担任教師は、目を伏せ無言のまま、はるみにテストを返却する。
はるみの周囲から、そっと覗き込む子供たち。
はるみのテストは満点だった。
子供達は、黙って静かに散っていく。
この物語は、「不可侵領域」(はるみ視点)と対になる作品です。
『不可侵領域』はこちら
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