【番外編】突撃!隣の国の晩ごはん☆
最近よく隣国の話が出てくるので、突撃してみました☆
「親父!」
乱暴に扉を開けようとする皇子を、扉を守る近衛兵たちが困惑しつつ押さえつけようとする。
「皇子、待ってください。まだ許可が下りておりません!」
そんな男たちを皇子と呼ばれた男は、意にも介した風もなく突き進む。
「うるさいな。親子で許可なんているか。下がっていろ。」
槍で通さまいとした兵士も、じろりと睨まれてその穂先をさっとあげる。
入った王の謁見の間は広々としていたが、ひとりの見知った顔を見つけて声をかける。
「おっ、お前戻ってたのか?」
「ご挨拶ですねぇ。一度戻るとの一報は入れましたよ?」
「知らん。そんなことより、親父。」
聞いたのは自分なのにそんなことはどうでもいいというように、謁見の間の奥、最上段で頬杖を突く、蛇のような目をした男に声をかける。
「なんだ、あの我が国が戦争の準備をしているという噂は。」
「耳が早いな。」
聞くだけで、ぞわりと鳥肌が立つような重たく冷たい声。
「当たり前だ。それくらいできなくて親父の寝首はかけん。」
傍で聞いていると謀反と取れる言葉だが、弱肉強食のこの皇家では普通の光景と化している。
「さてなぁ」
「なんだその他人事のような適当な返事は。」
「……さて。戦争を今して得るものがあるか。」
玉座の男が誰ともなく呟いた言葉に皇子は眉を顰めるが、傍の男が
「強欲王と呼ばれる貴方様がずいぶんと情けないことを仰る。」
と皮肉のようにのたまう。
口の利き方一つで、簡単に胴体と首が離れるこの国で。飄々と、その男は嗤う。
その言葉を聞いた二人の男が、口の端を上げる。
「ワシはお前のその胆力が気に入っている。」
くっ、と蛇のような目を眇めて男が一笑する。
「これも俺のだぞ、親父。」
挑発的に皇子が言うと、玉座の男がひどく醜く嗤う。
「お前、ワシの跡を狙っているようだがうまくいくか?足手まといを連れて、狙える座ではないぞ?」
くくく、と喉を鳴らす。
「はっ。いつまでその高みから、見ていられるかね。」
「ふん。ワシにとっては貴様も余興の一つだ。せいぜい足掻け。……戦争の件なら、そいつに聞け。ワシは忙しい。いけ。」
皇子は挨拶もなしに踵を返し、傍の男は恭しく一礼して謁見の間を後にする。
**********
はっ。
皇子が足早に歩きながら、鼻で嗤う。
「女の尻を追いかけて何をやってんのかと思えば。」
「相変わらずお口の悪い。それで、貴方様はどうなんですか?その後にお変わりは?」
「ない。ないから、苛立つのだ。」
ちっ、と舌打ちする。
「左様ですか。」
肩を竦める男を、皇子が睨みつける。
「おい。」
男の胸ぐらを掴み、そのまま壁にたたきつけ持ち上げる。
「一年間、俺のそばを離れるというお前の我儘を聞いてやったんだ。しっかり働けよ?」
男は喉を圧迫され呼吸ができずに、短くうめき声を上げる。が、その薄い目を開けて嗤う。
「と、言われましても。私はただ、自分の欲しいもののために動くだけですから。貴方様の望みに適うかなんて知りませんよ。」
そう言われて、皇子が口の端を上げる。
「それでいい。お前自身は信用ならんが、お前の目は信用している。お前のほしいものは、きっと俺のほしいものに通じる。」
男を乱暴に突き放す。
ごほっ、ごほっ。
よろめき、咳き込んだ男を気にも留めずに、皇子はさっさと歩き出す。
「精々、励めよ?」
「貴方様の仰せのままに。」
整わない呼吸のままに、そう答えると満足げに皇子が嗤う。
そのまま去っていくかと思われたが、なにを思ったか急に
「ああそうだ。お前飯食っていくか?」
と尋ねる。
「食事、ですか?」
「そうだ。皇后が兄弟姉妹仲良くするためにって月一度開いている食事会だ。」
「……ああ、それはそれは。」
「お前も来い。」
「いえ、皇家のご家族の語らいに私のような下賤なものが入るわけには……」
「誰もかれもが疑心暗鬼になり、毒入りの皿まで食らう楽しい宴だぞ?」
「いえ、本当に。遠慮させていただきますよ。」
「なぁに。お前だったらああいう場すら楽しめるだろ?」
「いえ。皇家の毒はさすがにシャレになりませんので。志半ばであの世行はちょっと。」
「あはははは。鍛え方が足らんな。まぁだが、俺を試しているのか単なる嫌がらせなのか、あの程度の毒で俺を害せると本気で思っているのか。なんにしろああいうのはつまらんな。」
「水面下の駆け引きはつまらないですか?」
「俺は派手好きだからな。一気に噛み砕く方が良い。」
「左様で。」
「ま、お前が行かないならしょうがない。せいぜい、兄弟姉妹をからかって遊んでくるさ。」
「程ほどがよろしいですよ。」
「ああ。じゃあな。」
振り向きもせずに掌をひらりと振って皇子が回廊を去っていく。
その背を見送り、男はそれと真逆の方向に足を進める。
さて。そろそろ私も動き出しましょうか。
怖ー!皇国怖いっ!(((;゜д゜))))アワワワワ
隣の国の晩ごはん、毒入りらしいです。怖い!
訳がわからない会話も多いかと思いますが、番外編なので。気にしてはだめです!細かいことは無視して、隣国の雰囲気を楽しんでいただけると(楽しめるか?)嬉しいです。




