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ぎゃるめがっ!!!〜ときめきが魔力になる学園で、魔力ゼロなチョロかわギャルとバディになった話〜  作者: 河津田 眞紀@5/2ゼロラブ第1巻発売!
14.ギャルとメガミ

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49/50

メガネと女神




 刹那、眩い光が溢れ……迫っていた槍が消える。


「ひめ、か……?」


 驚いて彼女を離す。

 と、ヒメカは光を放ち……その背から、桃色の翼をばさっと出現させた。


 髪がうねりながら伸び、ピンク髪と金メッシュの色が反転する。

 星の粒を集めたような冠が頭を飾り、その瞳が黄金色(こがねいろ)に輝く。



 まるで、太陽。

 常闇を切り裂く絶対的な光源のように、彼女はそこに君臨した。



「――彼は、『あたし』のファーストキスの相手……虫けらだなんて呼ばれたら悲しいわ」



 ヒメカの顔。

 ヒメカの声。

 けど、ヒメカじゃない。


 まさか……



『――艿那与比咩(ニナヨヒメ)……貴様、死んだはずでは……?』



 アメノの断片の声が降る。

 やはり彼女は…………逝去したはずのニナヨ神?



「――ふふっ。相変わらず面白いひと。私たちは肉体なき思念体……弱ることはあれど、死ぬことはない。あなただってそうでしょう?」



 ……そうか。

 やはり、ツバキさんの予想は当たっていたんだ。


 十五年前の戦いで、ニナヨ神は力を使い果たし、一度現世を去った。

 そして、力を蓄えるため、人間に転生した。


 そうして生まれたのが、ヒメカ――ニナヨ神を祭る神社で拾われた、親のない子供。

 桁外れの与魔力(スルチカ)を持つ、愛に溢れた少女。



「――せっかくひと時の休暇を楽しんでいたのに、野暮な邪魔をしてくれたものね。でも、そんなところも好きよ。天辞代命アメノコトシロノミコト?」

『――黙れ』

「――お願いだから、そのお手々をしまってくれない? あなたとは戦いたくないの。いつも言ってるでしょう?」

『――…………』



 アメノの断片は答えない。

 代わりに、巨大な手でヒメカを――ニナヨ神を強く握り締めた。



「――……そう。残念。それでも私は、あなたが好きよ? けれど――――他のふたりは違うみたい」



 ――直後。

 さらに巨大な光る手が虚空より現れ、ニナヨ神を握るアメノの手を、ブヂッと引きちぎった。


 アメノの枯れ枝のような手が、黒い塵となって消える。

 続けて、断片の泥のような身体を、これまた巨大な物体が踏み潰す。


 あれは……招き猫。

 神々しい光を放つ、黄金の招き猫だ。



『――無事か? 艿那与比咩(ニナヨヒメ)

「――まぁ。白夜礼淵神(シラヤレフチノカミ)に、深水主命(ミスミヌシノミコト)。久しぶり。元気にしてた?」

『――そりゃこっちのセリフだ。少し見ねぇウチに小さくなりやがって。景気の悪い』



 僕は唖然とし、目を疑う。

 どうやら、あの筋肉質で巨大な手が健の神・シラヤで、金色の招き猫が財の神・ミスミらしい。


 古来よりニッポンを守護してきた三柱が今、一堂に会している……まるで神話だ。



「――違うのよ。まだお休みしているつもりだったの。でも……この子の甘い接吻のせいで目が覚めちゃった。ふふ。欧の国の御伽話みたいでしょう?」



 ……もしかして、僕がキスしたせいで、ヒメカの中のニナヨ神が覚醒したのか? なんて畏れ多い。



『――なんでぇ、艿那与(ニナヨ)はまだ休暇中か。なら、あと百年はこいつを黙らせねぇとな』

『――うむ。義を弁えぬ奸賊(かんぞく)は、我が許さぬ』



 招き猫に潰され、光る剛拳に握られ、アメノの断片が小さくなってゆく。

 僕ではまるで歯が立たなかったのに、圧倒的過ぎる力だ。


 黒い泥団子のようになったアメノの断片に、ニナヨ神が静かに近付く。

 そして、その小さな団子をそっと両手で掬い、



「――いつも邪魔してごめんなさいね? でも、人の子たちを護るには仕方がないの。だって、あなたは死なないけれど、人の子は容易く死んでしまうでしょう?」

『――……っ……』

「――大丈夫よ。あなたのおこないは見過ごせないけれど……私は、あなたも愛している。だから――またいつか会いましょう?」



 そう言って、ニナヨ神は――アメノの断片に口付けをした。

 まるで、微睡(まどろ)む子供の額に、夢を落とすように。


 泥団子のような断片の表面が、白く乾きひび割れてゆく。

 そして、



『――嫌だ……誰か、我を……我だけを…………愛…………』



 そう、何かを言いかけて。

 アメノの断片は真っ二つに割れ……砂になって、消えた。


 同時に、空が晴れた。

 暗雲もオーロラも今度こそ消え、アメノが齎していた重い空気から解放される。

 と、


「――リィト! 無事か?!」


 下方から、ツバキさんが飛んで来た。

 アメノに遮断され、介入できなかったのだろう。ひどく焦った顔をしている。


「僕は大丈夫です。けど……状況は、ガチでヤバイです」


 なんて、ヒメカみたいな語彙力を発揮してしまう。


 だって、ヒメカがニナヨ神で、他の二柱も降臨して、アメノの断片を殲滅しただなんて。大事(おおごと)すぎて、一口には説明できない。


 しかし、僕の恐縮をよそに、ニナヨ神はけろっとした顔で手を上げる。


「――あら、椿妃(ツバキ)じゃない。久しぶりね、元気だった?」


 ……え、親戚のおばさんか何か?

 と、思わず不敬なツッコミをしそうになる。


「あはは。やっぱりヒメカの中にいたのですね、ニナヨ様。お久しぶりです。ミスミ様にシラヤ様も」

「――んもう、私の介入ありきで作戦を立てたわね? 言ったでしょう? 来世は精神動力を蓄えるために人の子になって恋愛を楽しむって。向こう百年は休ませてってお願いしたじゃない」

「すみません。妹を奪還できる絶好の機会だったので、私も背に腹はかえられず、貴女を頼ってしまいました。でも、これからは大丈夫です」

「――本当? その言葉、信じるわよ? 緋愛花(ヒメカ)の恋がちょうど盛り上がってきたところなんだから。邪魔しないでちょうだいね?」


 頬を膨らませ、ぷんぷん言うニナヨ神。

 そして、彼女は僕に目を向け、


「――神無月(カミナヅキ)黎人(リィト)。驚かせてしまってごめんなさいね。私はまた緋愛花(ヒメカ)の中で眠り、力を蓄えるけれど、私と緋愛花(ヒメカ)の人格は完全に別のものだから……変に(かしこ)まらず、これまでと同じように接してあげてね」


 そう言って微笑む。


 いや、さすがに無理だよ。

 そう言いそうになるけれど……思い留まる。


 ヒメカの顔。ヒメカの声。

 でも、違う。

 僕の知っている笑顔じゃない。

 僕が会いたい笑顔は……これじゃない。


 ……そうか。ヒメカはヒメカなんだ。

 ニナヨ神から独立した、ごく普通の人間。

 女神に身体を間借りされただけの、ただのメッカワなギャル。


 そのことを理解し……僕は頷く。


「……わかりました。これまで通り、全力で貰魔力(サレチカ)稼ぎに使わせてもらいます」

「――んん。あなたもなかなかにややこしい子ね?」


 なんて、困ったような笑みを残して。



「――それじゃあね、愛しい子たち。須臾(しゅゆ)を生きるあなたたちの(うた)が、愛に満ちたものになりますように」



 その言葉を最後に、ニナヨ神の光は消え……ミスミ神、シラヤ神も姿を消した。


 ふっと脱力するヒメカの身体を、僕は抱き留める。

 髪色も元通り。完全にヒメカに戻ったようだ。



 未だ目覚めぬ眠り姫を、僕は優しく抱き締めて、



「……おかえり、ヒメカ」



 そして、さようなら――


 そう胸の内で、呟いた。



 

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