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ぎゃるめがっ!!!〜ときめきが魔力になる学園で、魔力ゼロなチョロかわギャルとバディになった話〜  作者: 河津田 眞紀@5/2ゼロラブ第1巻発売!
14.ギャルとメガミ

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ギャルと『兄弟』




 ――ツバキが財神(ミスミ)の力で顕現したミコシバ製最新型ジェットパックを背負い、ヒメカとリィトはエレベーターに乗り込んだ。


 ドアが閉まり、ツバキの姿が見えなくなった後……リィトが言う。


「……ヒメカちゃん」

「ん? なに?」

「……手、繋いでもいい?」


 ヒメカは驚いて、リィトを見る。


 今からツバメと……元カノと対峙する。

 リィトは今、どのような気持ちでいるのだろう。

 本当に、復讐を果たすつもりなのか。

 前髪の隙間に覗く目からは、感情が読めなかった。


「……いいよ」


 ヒメカはきゅっと、リィトの手を握る。

 すると、リィトはすぐに指を絡ませて、


「……教えたでしょう? 繋ぎ方は……こう」


 そう言って、恋人繋ぎされる。


 高鳴る心臓。

 しかし、バイタリストは『キュン』と鳴らない。

 デイドリームが、まだ復旧していないからだ。


「……これも、ツバメさんに教わったの?」

「そうだよ」

「…………好きだった?」

「…………うん」

「…………だから、復讐するの?」

「……………………うん」

「…………ねぇ」


 ヒメカは、リィトを見つめる。

 前髪で隠した両目を、真っ直ぐに見つめる。


「今、あたしがキスしたら…………リィト、『キュン』ってしてくれる? ツバメさんを好きだった頃の、純粋なときめきを…………思い出してくれたりする?」


 リィトは、水族館で言っていた。

 ヒメカから「ちゅー」をしたら、ときめくかもしれないと。


 憎しみに染まる前の気持ちを思い出せば、ツバメへの復讐も、やめてくれるのではないか。


 そう思ったのだが……リィトは、自嘲するように笑って、


「……この先、誰に何をされても、僕はもうときめかないし…………ツバメへの復讐をやめるつもりもないよ」


 そう言って、手を離した。

 その横顔が、ヒメカにはひどく寂しく見えた。


 だからヒメカは、離された手をもう一度握り締めて、


「あたしが、ときめかせる」

「え……?」

「言ったでしょ? リィトがときめくまで、あたし離れない! だから……だから…………!!」


 言いかけたその時、エレベーターが最上階の理事長室に着いた。


 誰もいない。

 しかし、戦闘があったのか、先ほどより荒れていた。

 ゆっくり話をしている暇は、なさそうだった。


「……僕の気持ちがどうであれ、やることは変わらない。行こう。ツバメを……止めるんだ」


 散らばったガラスを踏み締め、窓際に立つ。

 もっと話したかったけれど……仕方がない。

 ヒメカはリィトに続き、空へと飛び立った。




「――うわわっ!」


 ヒメカの背中で、ゴゴゴゴッと唸るジェット。

 競技大会の折、ホトギが飛んでるのは見ていたが、実際使うとなるとものすごいGである。


 学院の屋根を飛び越え、ヒメカとリィトは一気に上昇する。

 戦闘をしてるのか、街のあちこちで煙が上がっているのが見えた。

 ヒメカは生徒たちの無事を静かに祈った。


「……ヒメカちゃん。あれ」


 リィトの視線を追い、見上げると……

 いた。ツバメだ。

 はるか上空に、ぽつんと浮遊している。


 彼女の姿を目視すると同時に、空が暗く染まった。

 青空が暗転する。

 巨大な何かに遮られるように、ヨコハマの街に影が落ちる。


 あれは……オーロラ。

 闇で織られた黒い天幕が、陽の光を遮っていた。


「……まずい。間に合わないかも」

「えっ、何が?!」

「街全体に術を放つつもりだ。あれが降って来たら……ヨコハマ中の人が精神を侵される」

「マ?! 激ヤバじゃん! そんなん絶対止めなきゃ!」


 しかし、背中のジェットはこれ以上速くならない。

 デイドリームが復旧していないため、リィトの賜魔術(アコード)もまだ使えない。


 こうなったら……


「あたしが……(アンチ)賜魔術(アコード)で防いでみる!!」


 直後、黒いオーロラから、雨が降ってきた。


 墨汁のように暗く、重い雨粒――ヒメカは手を掲げ、全ての雨を払うイメージを浮かべる。

 が、蒸発させられたのはヒメカとリィトの周りだけで、全ての雨を止めることはできなかった。


「どうしよ……この雨が降り注いだら、みんなが……ヨコハマの街が……!!」

「――大丈夫」


 ヒメカの焦りを遮り、リィトが言う。


「切り札なら、もう一つある――『兄弟』」


 瞬間、ヒメカたちが飛行する下……ヨコハマの上空に、全域を覆い尽くすような透明な膜が現れた。

 さながら、超巨大な傘だ。

 それが、黒い雨から街を護っている。


「これって、誰かの賜魔術(アコード)……?」


 ヒメカが呟いた、その時。



『――視聴者のみんな、サンキュな! お前らの投げ銭とオレの全財産ツッコんだおかげで、ミコシバ製・対空爆用特殊シールドが顕現できたぜ!』



 インカムに響く、陽気な声。

 それを聞き、ヒメカは顔を綻ばせる。


「ホトヤン……! ここで登場とか、まじアツすぎ!!」


 ……そう。

 ホトギは、生きている。


 ミコの影武者という立場を利用し、邪神徒(フェイスフル)のスパイとなっていたナキリに灸を据えるため、死んだと(うそぶ)いていたが……

 ツバキの迅速な処置により、精神崩壊を免れていたのだ。


 とは言え、精神に甚大なダメージを受けたことは事実。

 ツバキはホトギを休学させ、心身を休ませると同時に、今日のための切り札として隠していた。


 ホトギの生存は知っていたが、彼がこのような形で復活したことに、ヒメカは喜びを隠せなかった。


「って……いま視聴者って言った? まさか、生配信してる?!」


 スマホを取り出し、ホトギの動画配信チャンネルを視る。

 学院の屋上でシールドを展開したホトギの様子が、今まさに『LIVE中』だった。

 しかも、同時接続者数は10万人を超えている。


『ということで、生配信でお届けしている世紀の大決戦! なんと、オレの彼女は邪神徒の幹部だった!? 完全に詐欺られてたー! ツレー!! ってことで、哀れに思ったヤツは見舞い投げ銭! 自業自得だろってヤツはチャンネル登録よろしくな!』


 失恋の痛みから完全復活どころか、しっかり金稼ぎのネタにしている。

 吹っ切れたその笑みに、ヒメカもつられて笑みを零した。


『よう、「兄弟」! オレたちのハニーには会えたか?』


 インカムで、ホトギがリィトに呼びかける。

 互いの立場を皮肉ったその呼び名に、リィトは苦笑しながら応える。


「うん、目視できる距離にまで来てる。もうすぐ再会するよ」

『へへっ、そうか……それじゃあ、ギャフンと言わせてやってくれ。オレの分までな!』


 リィトは少し笑って、「わかった」と答えた。


 ホトギのおかげで、ヨコハマの街は精神汚染の雨から護られた。

 あとは……ツバメを止めるだけ。


 黒い雨を弾きながら、ヒメカはリィトと共に上昇する。

 そして……音のない冷たい空の上で、ついに彼女と対峙した。



 

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