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ぎゃるめがっ!!!〜ときめきが魔力になる学園で、魔力ゼロなチョロかわギャルとバディになった話〜  作者: 河津田 眞紀@5/2ゼロラブ第1巻発売!
12.メガネと水族館

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39/50

大事な存在




 ――賜魔術(アコード)競技大会におけるアメノ襲撃の事実は、生徒たちには秘匿された。


 あの日以来欠席しているホトギを案ずる声はあるものの、人気ユーウォッチャーとして心労が祟ったのだろうと、それほど疑問視されなかった。



 それから二週間。

 アメノや邪神徒(フェイスフル)による動きは見られない。

 まるでこちらの出方を待っているかのような静けさの中、季節は梅雨へと移り変わり……



「――ということで。突然だが、来週遠足を決行することになった。場所はエノシマ。水族館のチケットは配布するが、基本的には自由行動だ。班も特に指定しない。各自、集合時間までにバスへ戻るように」


 担任のミカモ・ナナカマドが告げる。

 驚きと喜びに色めき立つ愛神(ニナヨ)科の生徒たち。


 当然、僕の隣にいるギャルも……


「っしゃ! 水族館だって!! あ、そーだ。リィトのために甘いお菓子持ってくから、バスで一緒に食べよーね!!」


 ……ご覧の通りの浮かれ様だ。

 どう見ても素ではしゃいでいる彼女に、僕はこそっと耳打ちする。


「これ、例の作戦だよ。まさかツバキさんに言われたこと、忘れたわけじゃないよね?」

「あ。……あったり前じゃん! 演技だよ、エンギ!」


 なんて苦笑いしてるけれど、絶対に忘れてたよね?


 遊園地の一件で捕えたスーツ男を尋問して得た情報によれば、近頃邪神徒(フェイスフル)はエノシマ近辺に拠点を構えているらしい。

 奴らの縄張りに学院の生徒総出で乗り込んで刺激してやろう、というのがツバキさんの作戦だ。


 当然、この作戦を知っているのは僕とヒメカと教師陣、そしてツバキさんが選抜した一部の生徒のみだ。

 多くの生徒はただの遠足として現地に向かうことになる。


 ミカモ先生が遠足のしおりをデータで配布し、そのまま当日の行動を各自で話し合う時間となった。

 僕とヒメカが話していると、一人の生徒が近付いて来た。

 艶やかな黒髪を持つ、日本人形のような少女――ミコシバ財閥のご令嬢、ミコ・ミコシバだ。

 

「あの……ちょっとよろしくて?」

「ん? お嬢様じゃん。どったの?」

「競技大会の日から、クラガノさん……ずっとお休みされていますわよね」

「あー……うん、そうだね」

「……あのドラゴンとの戦いで、何があったのです?」


 生徒たちの賑わいに紛れる様に、ミコが尋ねる。


「わたくし、途中で脱落してしまったので、あの後何が起きたのか知らなくて……クラガノさんの様子がおかしかったのも、ずっと気になっていて。クラガノさんは今、どうされているのでしょう? ご存知なら……教えていただけないかしら」


 その疑問はもっとも……というより、予想通りだった。


「えぇっと、それは……」

「いいよ」

「リィト?」


 ヒメカが驚く。

 けど、僕は構わずミコを見つめ、


「彼が今、どんな状況なのか……遠足の当日、教えてあげる。水族館を回った後、浜辺で会おう」


 そう答えた。

 ミコはきゅっと唇を結ぶと、頭を下げて、


「……ええ。よろしくお願いしますわ」


 小さく言って、離れて行った。

 その後ろ姿を、ヒメカは何も言わずに見つめている。


「……ヒメカちゃん」

「うん? なに?」


 やっぱり、少しテンションが下がっている。

 僕はヒメカの気分を変えるために、こう言うことにする。


「……遠足のおやつ、お互いが喜びそうなものを用意して……当日、交換こしようよ」


 僕の提案にヒメカは、わかりやすく瞳を輝かせた。




 * * * *




 そうして、翌週。

 エノシマ遠足の日は、梅雨を忘れたような快晴に恵まれた。


 学院から大型バスに乗り、エノシマへ向かう。

 僕とヒメカは横並びに座り、早速おやつ交換会をした。


「はい、ヒメカちゃんの分のおやつ」

「わーい! なになに?」

「唐辛子せんべいにカレーナチョス、あと明太子クッキー」

「くぅーっ、辛くておいしそうなのばっか! さっすがリィト、あたしの好みわかってるぅ!」


 花が飛びそうなほどの笑顔を浮かべるヒメカ。

 今日は遠足だからか、メイクに一層力が入っているように見えた。


 いや……大事な作戦の決行日だからか。

 こう見えて、ヒメカも緊張しているのかもしれない。


「じゃあ次! あたしが持ってきたおやつを発表するね! リィトのために用意したのは……じゃじゃーんっ!」


 言って、鞄の中から取り出したのは……

 丸いお弁当箱に詰められたパンケーキと、スプレー缶?


「えっと……説明をお願いしてもいい?」

「こっちはあたしが今朝焼いたパンケーキ! んで、こっちは生クリームのスプレー! 見てて?」


 と、ヒメカはスプレー缶を振って、パンケーキに向けると……生クリームでハートを描いてみせた。


「仕上げに桜の形のクッキーを乗せて……はい、完成! ど? カワイイっしょ?」


 ……なるほど、そういう。

 まさかこんな場所で、生クリームもりもりパンケーキを手作りされるとは思わなかった。


「……あり。あんまだった? リィト生クリーム好きだし、絶対『キュン』てすると思ったのに。あ、もしかして……」


 ぐっと、ヒメカは僕の顔を覗き込み、


「……パンケーキにハート描かれるのも経験済み? 元カノにされたコト、あった?」


 なんて尋ねられ、思わずドキッとする。


 一体、どういう感情で聞いているのだろう。

 嫉妬? 焦燥?

 返答によっては傷付けてしまうだろうか。


 ……と、少し心配になったが、ヒメカの目を見て杞憂であると悟る。


 これは、単なる好奇心だ。

 どうすれば僕の恋愛不感症を治せるか、過去の傾向を把握しようとしているだけ。

 元カノに負けたくないとか、そういう感情は一切見えてこない。


 ……まぁ、それはそうか。ヒメカだし。


「ごめん。美味しそうでびっくりして、固まってた。こんな風に描いてもらうのは初めてだよ。僕が描くことはあったけれど」

「まじ?! リィトが?!」

「うん。オムライスを作って、ケチャップでハートを描いたんだ」

「えーいいなーっ。今度あたしにも作ってよ!」

「いいよ。ハートも描いてあげる」

「いやっ、せっかくなら別のを描いて。らぶたんとか!」

「むずっ」


 重要な作戦の前とは思えない、呑気な会話。

 でも、ヒメカのこういうところに何度も救われてきた。


 ヒメカは、この作戦の切り札だ。

 僕の復讐が成功するかどうかもヒメカにかかっている。


 だから、彼女のことは絶対に護る。

 けれど、そんな損得勘定を抜きにしても、僕はヒメカを危険な目に遭わせたくなかった。


 何故なら――


「……わかった。らぶたんの絵、練習してみるよ」


 ……なんて返してしまうくらいには、ヒメカのことが大事になっているみたいだから。


「ホント?! やったー! 楽しみにしてるね!!」


 そう言って笑うヒメカに、僕もつられるように笑みを返した。



 

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