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ぎゃるめがっ!!!〜ときめきが魔力になる学園で、魔力ゼロなチョロかわギャルとバディになった話〜  作者: 河津田 眞紀@5/2ゼロラブ第1巻発売!
10.ギャルと秘密

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聖域




 ――ツバキの部屋から続くエレベーターは、秘められた地下に直通なのか、途中で止まることなく一気に下降した。


「……さぁ、着いたぞ。学院内でも限られた者しか入るのことできない、『聖域』だ」


 ツバキが言うのと同時に、エレベーターのドアが開く。


 辿り着いたのは……真っ白で広大な空間だった。

 天井も床も白すぎて、果てがどこにあるのかすらわからない。

 そんな場所に、ビルのように巨大な機械が一つだけ、どんと聳え立っていた。


 ヒメカは近付き、その機械を見上げる。

 スイッチやコードが至る所にあり、ランプや液晶パネルがチカチカと光っていた。


(ここが『聖域』……? この馬鹿デカマシーン保管所が?)


 首を傾げるヒメカの隣に、ツバキがヒールを鳴らしながら歩み寄る。


「……十五年前、この学院を巻き込む神々の戦いがあった」


 そうして、語る。

 ヒメカが生まれる前の、あの出来事を。


「当時、私は愛神(ニナヨ)科の二年生だった。恋と学業に精を出し、順風満帆な学院生活を送っていた。だが……その陰で、アメノの断片が暗躍していた」

「それって、今みたいな状況が十五年前にも起きてた、ってコト?」

「そうだ。人々の負の感情を餌にし、アメノの断片は強大な力をもって学院に攻めて来た」

「マ?!」

「断片は生徒たちの精神を侵し、ゾウオウラを集め、さらに凶悪化した。元々、神律師(ハーモナイザ)になり得る者は感受性が豊かなんだ。その感情がマイナスに転じた場合も得られるパワーは大きい。この学院はアメノに対抗する切り札であるのと同時に、最高の餌場でもあるというわけだ」

「そんな……でも、こうして学院が存続してるってことは、アメノの断片に勝ったんでしょ?!」

「ああ、結果だけ見れば勝利したと言えるな。私は、同じく精神汚染を(まぬか)れた生徒たちと力を合わせて戦った。だが、人間である邪神徒(フェイスフル)を倒すことはできても、膨れ上がったアメノの断片には太刀打ちできなかった。賜魔術(アコード)は他者を拒絶し、攻撃する力――憎しみや絶望を糧とするアメノには元々効果が薄い。もうダメだと、誰もが諦めかけたその時…………神が、降臨した」


 その時の光景を思い出すように、ツバキが天を仰ぐ。


「財の神・ミスミ。健の神・シラヤ。そして、愛の神・ニナヨ……三柱が実体をもって現れ、アメノの断片と戦ってくれた」

「すご……ってかそれ、もはや神話じゃん! 五百年前の大戦は有名だケド、まさか十五年前にもそんなことが起きてたなんて……!」

「中でも、愛の神・ニナヨはアメノにとって天敵……負の感情を司るアメノとは対極にある存在だ。ミスミとシラヤで断片を弱体化し、ニナヨがトドメを刺す。三柱の完全勝利……かと思われた」

「……違うの?」


 ツバキが目を伏せる。

 横顔に、悔しさと無力感が滲んでいる。


「アメノの断片は、それまでにない力を発揮し……ニナヨ神を攻撃した。恐らく最初からニナヨ神が標的だったのだ。自らの復活の妨げとなる存在を葬ること……そのために奴は、本当の力を温存していた」

「そんな……」

「ニナヨ神はもてる力を尽くし、それに抗った。途方もない質量の絶望をすべて受け止め、浄化し……そして、何とか断片を殲滅した。しかし……ニナヨ神は助からなかった」

「え…………」


 ツバキが、ヒメカを見る。

 そして、悲しげに笑い…………こう言った。



「……ニナヨ神は、死んだ。私たち人類を護るため……犠牲になったのだ」



 ……ヒメカの頭が、真っ白になる。

 まるで、この空間を投影するかのように。


「うそ……でも、あたしもリィトも、愛神(ニナヨ)科のみんなも、ニナヨ神に認められて神律師(ハーモナイザ)になったんだよね?! だからこそ、貰魔力(サレチカ)を使って賜魔術(アコード)を顕現できるワケだし……!」

「そう。それを可能にしているのが、目の前にあるこの機械(マシン)――スーパーコンピューター・デイドリームだ」


 ヒメカは、耳を疑う。

 つまりは、この巨大な機械が、ニナヨ神の代わりを果たしているということか?


「ニナヨ神の逝去がアメノ側に知られれば、学院は今度こそ攻め落とされ、世界が絶望で染まってしまう。私たちはこの事実を徹底的に隠さなければならなかった。だから私は、ニナヨ神が残した僅かな力を増幅させるこの機械(マシン)を、ミスミ神・シラヤ神と共に作った。ニナヨ神はまだ生きているのだと、アメノ側に思わせるために」


 それこそが、『神の秘密』。

 あまりに壮大な話に、ヒメカは震える。


 同時に、思い当たる。

 この『秘密』を踏まえて、先ほどのドラゴンの一件を考えると……


「まさか、アメノが学院のネットに侵入しようとしたのって……この機械を探すため?! ってことは、既にバレてんじゃん!!」

「我々が危惧しているのはまさにソレだ。恐らくツバメは、このデイドリームに関する情報を何らかの形で入手した。そして、その真偽を確かめるためにクラガノを利用し、アメノの断片をシステム内へ送り込んだのだろう」

「やば……そんなん絶対また攻めてくるに決まってんじゃん! どどど、どーしよ?!」

「しかし、これで確定した。この学院には、邪神徒(フェイスフル)に情報を流している内通者がいる。そして、その人物にもおおよその見当がついている――リィトの『勘』のお陰でな」


 ヒメカは「えっ?」と聞き返す。

 ツバキは、ニッと不敵に笑い、


「さらに言えば、こちらには強力な切り札がある。と言うより……今手に入った、と言うべきか」

「へっ……?」


 そして、ツバキはヒメカの肩に手を置き……言う。


「ヒメカ。君が、その切り札だ」

「えっ?! あ、あたし?!」

「そう。君は貰魔力(サレチカ)0だが、代わりに計測不能な程の『与魔力(スルチカ)』を保有している」

「する、ちか……?」

「『他者を愛する力』のことだ。誰もが持つ力ではあるが、能力として発揮できる者はほぼいない。しかし君は、ただ念じるだけでその規格外の力を顕現できる。そして、この愛の力こそが、アメノに対抗し得る唯一の手段となる」

「じゃ、じゃあ……あの仮想空間で発揮した力は、賜魔術(アコード)じゃなくて……」

与魔力(スルチカ)による魔法――(アンチ)賜魔術(アコード)だ」


 ヒメカは、息を飲む。

 そして、自らの手のひらを見つめる。


(……そうだったんだ。あたしの力は、愛するチカラ。アメノに対抗するための、特別な力だったんだ)


 そのまま……見つめていた手のひらを、ぐっと握って、


「それって…………最っ高じゃん!!!!」


 突然上がった歓喜の声に、リィトがビクッとする。


「あたしにみんなを救える力があるだなんて、超超超うれしい!! あたし、一緒に戦うっ!! アメノの復活を止めて、みんなをぜっったい護ってみせるよ!!!!」

「ふふ、君ならそう言ってくれると思っていた。あらためてよろしくな、ヒメカ」

「うんっ! ツバキ様の仲間になれるとか光栄すぎ! んで、どうやって倒す?! あたしが今から殴り込みに行こっか?!」

「まぁ待て。今回はあちらにしてやられたからな。次はこちらから罠を仕掛け、出し抜いてやろう」


 ニヤリ、と悪い笑みを浮かべるツバキ。

 その瞬間、ヒメカは目にハートを浮かべ、「はうっ」と胸を押さえた。ツバキのバイタリストが『キュン』と鳴る。


「そのためには、材料を揃える必要があるな……そうだろう? リィト」


 ツバキが振り返る。アッシュブロンドのポニーテールが、くるんっと翻る。

 どこかワクワクした様子のツバキとは対照的に、リィトは呆れ気味に息を吐き、


「……こんなこともあろうかと、競技大会の開始と同時に、クラガノ君を含むチームメイトのバイタリストのボイスレコードをオンにしておきました。決定的な証拠なら、そこに残っているかと」

「えっ?! いつの間に?!」

「さすがはリィトだな。よし。では見舞いも兼ねて……クラガノのいる医務室へ行こう」


 そう言ってツバキは、ヒールを鳴らし、歩き出した。



 

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