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ぎゃるめがっ!!!〜ときめきが魔力になる学園で、魔力ゼロなチョロかわギャルとバディになった話〜  作者: 河津田 眞紀@5/2ゼロラブ第1巻発売!
9.ギャルと競技大会

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35/50

赤い瞳の侵入者




 ホトギの全身から黒い豪風が吹き出し、ヒメカとミコは、防壁もろとも吹き飛ばされる。


「……! ヒメカちゃん!!」


 リィトが駆け付け、飛んで来たヒメカを抱き留めた。

 ミコは地面を転がり、そのまま姿を消した。過度の衝撃により、リタイア判定となったようだ。


「リィト、どうしよ! ホトヤンが……!!」


 ヒメカは身体を起こし、ホトギの状況を伝えようとするが……言葉半ばで絶句する。

 ホトギの身体から溢れた黒い靄を、ドラゴンが吸収し始めていたから。


「まさか……」


 リィトが呟いた直後、仮想空間の空が暗くなった。

 そして……漆黒のオーロラが、天穹を覆う幕のように現れる。


 同時に、ドラゴンの眼が赤く光った。

 先ほどまでもがいていたのが嘘のように、穴の中からすうっと浮いて、こちらを見下ろす。



『――ふむ、これが電脳空間……確かにヒトの意識に似ている』



 地の底から響くような、低く重い声が、ドラゴンから発せられる。



『――なるほど、すべて繋がっているわけか……ならば、到達するのも時間の問題』



 どうしてドラゴンが喋り始めたのか、その言葉が何を意味するのか、ヒメカにはわからなかった。

 そもそもこのドラゴンは、競技大会のために学院が用意した仮想世界のボスのはず。

 それなのに何故、ホトギが邪神アメノに蝕まれ、溢れた黒い(もや)をこのドラゴンが吸収したのか……


 その時、ホトギがばたりと倒れた。

 身体から発せられる黒い(もや)を全て吸い取られたようだ。

 

 同時に、ドラゴンの身体がぐにゃりと歪む。

 泥のように溶け、ボコボコと泡を噴き出しながら浮き……

 その不気味なヘドロの塊に、赤い目玉がギョロリと現れ、ヒメカたちを見つめた。



『――貴様らが隠しているモノを見せてもらう……余計な意識は邪魔だ。さぁ、ここを明け渡せ』



 そう、ドラゴンが言った後、


「伏せて!」


 リィトが、ヒメカを地面に押し倒した。


 直後、赤い目玉から黒い(もや)がぶわっと溢れ出し、ヒメカたちの頭上を通過した。

 理解を超える出来事の連続に、ヒメカはいよいよ混乱する。


「もうっ、まじなんなの?! もしかして、これも競技の一部?!」

「残念ながら、本物の邪神(アメノ)だよ。クラガノ君の絶望を媒体に、この仮想空間に侵入したんだ……恐らく、学院のシステムを破壊するために」

「は?! ガチでヤバいじゃん!!」

「ゴホッ……この(もや)には精神を侵す力がある……ヤツは僕たちの意識を狂わせて、ここからログアウトさせる気だ」

「そんな……どうしたらいいの……?!」


 リィトが半身を起こす。

 そして手を掲げて、


「一か八か……っ」


 賜魔術(アコード)で、黒い(もや)を払うような炎を生み出した。

 しかし、赤い目玉を持つヘドロ――アメノに届く前に消えてしまう。


「駄目だ……賜魔術(アコード)の上限設定が有効なままだから、これ以上使えない」

「そんな……!」


 リィトは歯を軋ませると、ヒメカの両肩をぐっと掴む。


「ヒメカちゃん。僕が時間を稼ぐから、ログアウトしてこのことをツバキさんに伝えて」

「時間を稼ぐって、賜魔術(アコード)も使えないのにどうやって?!」

「なんとかする。誰か一人でも残っていなきゃ、アメノに学院のシステムを侵されてしまう……大丈夫。身体は外にあるから死にはしない」

「でも、意識はここにあるじゃん! アメノにやられたら、リィトのメンタルはどうなっちゃうの?!」

「それは……ちょっとはおかしくなるかもしれないけれど」

「絶対ちょっとじゃないじゃん!!」


 などと言っている間に、ヒメカたちの周りを黒い靄が囲み始めた。

 リィトが辛そうに咳き込む。


「リィト!」

「ゴホッ……早く、僕の意識がある内に……」


 ヒメカの心臓が、壊れそうなくらいに脈を打つ。



 倒れたままのホトギ。

 漆黒のヘドロから覗く赤い眼。

 空を覆う闇色のオーロラ。

 漂う(もや)

 苦しそうなリィト。



(どうしよ……どうしよどうしよ。なんであたしには貰魔力(サレチカ)がないの? こういう時、大切な人たちを護れるように神律師(ハーモナイザ)を目指したのに……っ)


 ヒメカの葛藤を嘲笑うように、アメノの声が降る。



『――やはり、剥き出しの意識は侵しやすい……貴様らも絶望しろ。そして、我が糧と成れ』



 黒い(もや)が、人の手の形を成し、ヒメカたちに這い寄る。

 何十、何百の手が、手招きするように近付いてくる。


「…………イヤ」


 ……できない。

 こんなところにリィトを一人で置いて行くなんて、できっこない。



「そのキモい手で…………リィトに、触んなぁあっ!!」



 ――瞬間。

 ヒメカの身体から、桃色の光が溢れた。


 すぐそこまで迫っていた黒い手が、蒸発するように消えていく。



 ヒメカは自らの身体を見下ろし、目を見開く。


(は?! なにコレ?! もしかして賜魔術(アコード)?! 実は使えた的な?! 超ラッキーじゃん!! なら、やるコトはひとつ!)



「あたしの力で…………ぶっ倒す!!!!」



 ザッ、と足を踏み出すヒメカを、赤い瞳が見つめる。



『――この力……貴様、一体……?!』

賜魔術(アコード)は想像力っ……よしっ。決めた!」



 ヒメカは、バッと手をかざす。

 そして、すぅっと息を吸い込み――




「すーぱーみらくる・ヒメヒメ・ハートアターーーーック!!!!」




 即興で考えた必殺技を、高らかに叫んだ。



 ――キュルルルルルルルルンッ!!



 ヒメカの手から放たれた特大のハートが、アメノにぶち当たる。

 弾けたハートが小さく分裂し、アメノのヘドロを分解していく。



『――ぐ…………うぅ…………!』



 ヒメカのハートに浄化されるようにして、アメノはみるみる小さくなり……

 最後には、ぶわっと霧散し……消失した。



 黒いオーロラが消え、空の色が元に戻る。

 取り囲んでいた黒い(もや)も晴れた。


「やった……アメノ倒した?! わぁあっ! リィト、あたしやったよ!!」


 ヒメカは興奮のあまり、リィトの肩をガンガン揺さぶる。

 が、リィトは脱力し、無抵抗なまま頭を揺らした。


「って、リィト大丈夫?! メンタル生きてる?!」

「う……」

 

 ヒメカが心配して覗き込むと……

 リィトはふらっとヒメカに身を預け、そのまま、彼女のことをぎゅっと抱き締めた。


「り、リィトっ……?」

「……ありがとう、ヒメカちゃん……また、助けられちゃったね」

「また? いつも助けてくれてるのはリィトの方じゃん?」

「それより、クラガノ君を……早くゴールして、ここから出よう」


 リィトに言われ、ヒメカははっとなる。

 疑問は山ほど残っているが、今は競技を終わらせ、ホトギの容体を確認しなくては。


 ヒメカはリィトの身体を支えながら、共に森を抜け……ゴールポイントを、しっかりと踏みしめた。



 

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