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ぎゃるめがっ!!!〜ときめきが魔力になる学園で、魔力ゼロなチョロかわギャルとバディになった話〜  作者: 河津田 眞紀@5/2ゼロラブ第1巻発売!
9.ギャルと競技大会

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32/50

仮想空間




 それから一週間後――

 三科合同・賜魔術(アコード)競技大会の日が、ついにやってきた。




「わぁ……ここがメタバース教室? まじアガる!!」


 ヒメカは、大会の会場となる教室を見回す。


 正面に巨大なモニターがある、映画館のような空間だ。

 しかし、ずらりと並ぶ座席は客席というより操縦席の様相を呈しており、複雑な機器がいくつも取り付けられていた。


「わたくしたちのチームの座席はここですわ。みなさん、まとまって座るように」


 ミコの仕切りに従い、ヒメカたちは指定された席に着く。

 すると、隣に座ったリィトが、


「ヒメカちゃん。打ち合わせ通り、僕に任せてね」


 と、密かに耳打ちした。

 結局、貰魔力(サレチカ)0のまま大会当日を迎えたため、リィトにサポートしてもらうことになったのだ。


 悔しさと情けなさに歯軋りをしながら、ヒメカはそれに答える。


「うう、ありがとっ。足引っ張らないようにがんばるから。って……ホトヤンまだ来てなくない?」


 他のチームは着席完了したというのに、ホトギだけが現れていない。

 というより、贈り物を渡したあの日から、ヒメカは彼の姿を見かけていなかった。一体、どうしたのだろうか。


 するとその時、正面の巨大モニターに愛神(ニナヨ)科の担任であるミカモ・ナナカマドが映った。今日も今日とて、年齢不詳な幼さと愛らしさを放っている。


『では時間だ。各自、インターフェースギアを装着し、競技を始めてくれ』

「げっ。ホトヤン来てないのに始まっちゃった。どーすんの?」

「仕方ありませんわ……とりあえず、このメンバーでいきましょう」


 ミコが言うのを聞き、ソウマとヒグレが頭にヘッドギア――ヘルメットとゴーグルを合わせたような機器を被り始める。

 ホトギのことは心配だが、始めるしかない。


 ヒメカとリィトもギアを被る。

 そして、手に嵌めたグローブ型の機械のボタンを押すと、視界が切り替わり――




 ――気付けば、高い岩山の上にいた。

 

「わぁっ、ビビッたぁ!」


 ヒメカは咄嗟に足をひっこめ、身体を縮こませる。

 底の見えない崖下へ、赤い土がパラパラと落ちていった。

 その後ろで、ソウマが感心したように周囲を見回す。


「これが仮想空間か……思ったよりリアルだな」

「ふっ、当然ですわ。ミコシバの叡智を集結させた最新鋭のVR技術ですもの。プレイヤーの脳に直接作用することで、よりリアルな五感体験を可能にしているんですの」

「脳に直接……そう言われると、ちょっと怖い」


 ヒグレの呟きには、ヒメカも同意だった。

 ゴツゴツした岩山が視界いっぱいに広がり、風や土のにおいまでリアルに感じられる。

 これが作られた世界だと思うと恐怖さえ覚える。さすがは世界のミコシバだ。


「悪ぃ、遅れた」


 と、そこで、何もない空間からホトギが現れた。

 どうやら無事にエントリーできたらしい。


「ホトヤン! よかった、間に合ったんだ!」

「これで全員揃いましたわね。では、作戦の通りに……参りますわよ」


 ミコがザッと足を踏み出す。

 草木も生えない岩肌から、砂埃が舞い上がる。

 そして……


「――万象載典(ブロウシュア)、オープン!」


 ミコが手を振るう。

 と、半透明に輝く本が、その手に現れた。

 ミコの目の前に浮き、ページがパラパラと捲られていく。


購入(パーチェス):『木製の橋』!」


 ミコの声に呼応し、本のページがぴたりと止まり……

 強い光を放ったかと思うと、行く手を阻む深い谷に、一本の橋が架かった。

 ヒメカは目を見開き、興奮する。


「すごっ! これが財神(ミスミ)科の賜魔術(アコード)?! まじでモノが出てきた!」

「想像で現象を起こす愛神(ニナヨ)科と違い、財神(ミスミ)科の賜魔術(アコード)は世界中に実在する商品を財魔力(ザイチカ)で購入するシステムですの。無限に近い品々から金額と質の見極め、選定する……そこが神律師(ハーモナイザ)としてのセンスの見せどころでしてよ」


 得意げに言って、肩にかかる髪を払うミコ。

 尊敬の眼差しを向けるヒメカの横で、リィトが一歩前に出る。


「ありがとう、ミコシバさん。それじゃあ、先へ進もう」


 ソウマとヒグレも頷き、橋の上を歩き出した。

 一番後ろを歩くホトギに、ヒメカは「彼女とどうだった?」と尋ねようとするが……

 その表情は明らかに暗く、目の下にはクマがあり、何なら少しやつれていた。


「……………………」


 諸々を察したヒメカは、唇をぎゅっと閉ざし、ホトギから離れる。


(……オッケ。ホトヤンの傷心を癒すためにも、この大会で絶対に上位に入って、良い成績取ろうっ!)


 ヒメカが決意を新たにする中、一行は橋の先にある岩山に辿り着いた。


 山は三つに連なっているが、どれも見上げるほど高く、比例するように谷底は深い。

 意識だけの仮想空間だとわかっていても、落ちた時のことを考えるとゾッとした。


「うっし。んじゃ、俺たちから行くぜ。筋力増幅(パンプアップ)!」


 ソウマが気合満点に叫ぶ。

 と、その身体が虹色に光り始めた。

 隣にいるヒグレも同じだ。


 二人は高く跳躍したかと思うと、岩肌にしがみつき、ボルダリングのごとく登り始めた。


「……三つ目の山の上で待ってる」


 ヒグレは控えめな声で言い残し、あっという間に一つ目の山を越えて行ってしまった。

 それを見届け、ヒメカは「すごーっ!」と目を輝かせる。

 これが、健神(シラヤ)科の生徒が発揮する賜魔術(アコード)――筋力や瞬発力といった身体能力の爆発的な向上である。


「わたくしたちも行きましょう。クラガノさん?」

「あ、ああ。今出す」


 ミコに言われ、ホトギが半透明の本――万物を購入できるカタログ・万象載典(ブロウシュア)を召喚する。

 そして、作戦通り、ジェットパックを二つ顕現させた。


 ホトギとミコはすぐにそれを背負い、ジェットを噴射。

 そのまま宙に浮き、岩山を飛び越えて行った。


「はぇ……みんなかっこよ」

「僕たちも行こう。ヒメカちゃん、捕まって」


 そう言って、手を広げるリィト。

 事前の打ち合わせで、ここはリィトが顕現した蔓を使って山を越えることになっていた。

 そのため……ヒメカはリィトに抱き付く必要があるのだ。


 ヒメカは恥ずかしさから、おずおずと彼に近付く。


「う……うん。ヨロシク」


 そうして遠慮がちに腰へ腕を回すと……突然、リィトにぎゅっと抱き締められた。

 ヒメカはたまらず「ひゃあっ!」と声を上げる。


「もっとちゃんと捕まらないと危ないよ」

「こ……こう?」

「そう。そのまま……僕から離れないでね」


 囁くようなその声に、ヒメカは沸々と顔を紅潮させる。


(耳元で言うなしっ! つーか、絶対わざとでしょ?!)


 と、危うく『キュン』しかけた直後。

 ヒメカの身体が、ギュインッと宙に持ち上がった。

 リィトが顕現した蔓が収縮し、岩山の上まで一気に引っ張り上げられたのだ。


 さながら、逆バンジー。

 落ちないよう夢中でしがみついていると……いつの間にか、三つ目の岩山の頂上に降り立っていた。

 先日の遊園地で乗ったジェットコースターの感覚を思い出し、ヒメカはたたらを踏む。


「おぇ……ガチでヤバかった……」

「全員揃いましたわね。では、チェックポイントを踏みますわ」


 岩山の頂上に、青く光るマンホールのようなものが設置されている。これが、得点が加算されるチェックポイントだ。

 ミコが踏むと、『OK!』という光が浮かび上がった。


 ソウマが「よし」と頷き、確認するように言う。


「ここからは、二手に別れるんだよな?」

「ええ。左が雪の斜面、右が川下り。作戦通り、いいですわね?」

「おうっ」


 再び、ミコが万象載典(ブロウシュア)を開き、スノーボードを二枚顕現した。

 それをソウマとヒグレがすぐに装着するが、ミコの分のボードはない。


「あれ? お嬢様はどーすんの?」

「わたくしは滑れないので……こちらに乗りますわ」


 そう言って、顕現したのは……そりと、二頭のシベリアンハスキー。

 まさかの、犬ぞりである。


「ここは仮想空間(メタバース)ですから、これも非実在の犬でしてよ。競技終了後に飼育する必要もありませんのでご安心を」

「な、なるほど……たしかに、スノーモービル買うよりは安く済みそうだもんね」

「そういうことです。では参りましょう。はいやーっ!」


 ビシィッ! と鞭を鳴らし、雪の斜面を滑り下りるミコ。その見事な鞭捌きに、ヒメカはゴクリと喉を鳴らす。


「やっぱ、お嬢様じゃなくて女王様だわ……」

「僕たちも行こう。と、言いたいところだけど……ちょっと想定外だね」


 と、リィトがもう一方の下山ルートを見下ろし、言う。


 ……実のところヒメカも、先ほどから「ゴゴゴゴゴッ」と背景音が鳴っているのを無視していたのだが……


「これ…………川下りっつーか、滝じゃん!!!!」


 ……そう。

 ヒメカ・リィト・ホトギの三人は川を下り、岩山の麓にある次のフィールドへ進む予定なのだが……


 目の前にあるのは、どう見ても滝だった。



 

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