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ぎゃるめがっ!!!〜ときめきが魔力になる学園で、魔力ゼロなチョロかわギャルとバディになった話〜  作者: 河津田 眞紀@5/2ゼロラブ第1巻発売!
8.メガネと遊園地

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28/50

恋人たちの楽園




 ――その後、メルリのライブは無事に終了した。


 途中、ツバキさんが到着し、会場周辺の捜索をしてくれた。

 さらに、アンケートの配布という名目で観客全員を一つの出口から退場させ、怪しい者がいないか確認したが……

 あのヒゲ(づら)の男も、仲間らしき人物も見つけられなかった。

 どうやら邪神徒(フェイスフル)たちは、遠隔であの術を発動させていたらしい。


 スーツ姿の男だけは幻影ではなく実体で、僕の蔓にしっかり縛られたままステージ裏に転がっていた。

 邪神徒(フェイスフル)でもなければ神律師(ハーモナイザ)でもない、普通の人間だった。

 いかがわしい撮影会の余罪や邪神徒(フェイスフル)との繋がりについて厳しく尋問されることを期待し、僕はその身柄をツバキさんに託した。


「……ツバキさん。最後に一つだけ、いいですか」


 別れ際。

 僕は声を潜め、ツバキさんにスマホの画面を見せる。

 そこには、とある人物の写真が映されている。


「……この生徒について、探りを入れていただけませんか?」

「ん? 何か気になることでもあるのか?」

「ただの杞憂かもしれませんが……なんとなく、最近変わった気がして」

「ふむ……わかった。君の女を見る目は確かだからな、調べてみよう」

「……嫌味ですよね? それ」


 ジトッと睨む僕に、ツバキさんは悪戯な笑みを返し、部下と共に去って行った。


 ……さて、これで一旦仕事は終わりだ。

 ヒメカとのデートに戻るとしよう。




 * * * *




 ツバキさんを見送った後、ステージ裏の控え室に向かうと、ライブを終えたメルリをヒメカとホトギが囲んでいた。


「あっ、リィトくん!」


 僕を見るなり、メルリがぱぁっと笑顔になる。


「ライブ、どうだった? 私的には最高のパフォーマンスができたと思うんだけど……」

「うん、最高だったよ。歌もダンスも上手くて、目が離せなかった」

「ほんと? よかったぁ……お客さんたちがすごく盛り上がってくれたから、私も楽しんで歌うことができたの」

「そりゃあ盛り上がるだろ! あんな演出見せられたらさぁ!」


 と、ホトギが興奮気味に割り込んでくる。


「黒い塊がステージ上に現れたかと思ったら、いきなりぶわって弾けて! 桜の花びらとぬいぐるみが飛び出して、会場中が包まれて……サビとも相まって、すげーテンション上がったわ! もちろん、動画にばっちり収めたからな!」

「ホトヤン、ありがとう! でも、正直あの演出については何も聞かされていなかったんだぁ。何かトラブルが起こったのかなって、歌いながらドキドキしちゃった」

「えっ、そうなのか? てっきりメルりんが賜魔術(アコード)使ってんのかと思ってたぜ」

「ううん。だって私の貰魔力(サレチカ)減っていないし……それどころか、ライブ前より増えてる」


 と、不思議そうにバイタリストを見つめるメルリ。


 僕は、少しだけ焦る。

 何せ僕の隣には、あの事象を引き起こした張本人のヒメカがいるから。


 下手なことを言えば、メルリが邪神徒(フェイスフル)に狙われていた事実を知られることになる。

 無用な心配をかけないためにも、ここは上手く誤魔化さなくては。


 が、僕が口を開くより早く、ヒメカがこう言った。


「ライブに夢中で無意識に賜魔術(アコード)使っちゃったんじゃない? 貰魔力(サレチカ)が増えたのは、メルりんがお客さんを『キュン』させたからっしょ」


 ……まさかヒメカの口から、そんな上手い言葉が出るなんて。

 それとも、賜魔術(アコード)を発動させたのがメルリだと本気で思っているのか?


「なるほど。確かにあの熱狂なら貰魔力(サレチカ)も集まるだろうなぁ」

「そっか……私、みんなをときめかせることができていたんだね。もちろん貰魔力(サレチカ)集めが目的ではなかったけど、こうして目に見えるとすごく嬉しいなぁ」

「その中には間違いなくあたしの『キュン』も入ってるからね! ホトヤンの動画が上がったらさらに増えちゃうんじゃない?」

「えへへ。こうしてライブを成功させられたのは、あの時撮影会に行くのを止めてくれたヒメカと、助けてくれたリィトくんのお陰だよ。本当に……本当にありがとう」

  

 目にうっすらと涙を溜め、メルリが言う。

 その言葉に、ヒメカは「どーいたしまして!」と、嬉しそうに笑った。




 ――そうして僕たちは、メルリの控え室を後にした。


 夕日が沈み、遊園地はイルミネーションの光に彩られている。

 ホトギは「動画の編集作業があるから」と、先に帰って行った。

 僕とヒメカは、また二人きりになった。


「いろいろあって疲れたでしょ。寮の門限もあるし、僕たちも帰ろうか」


 そう声をかけると、ヒメカはすぐに首を横に振り、


「だめっ。まだ観覧車乗ってないもん。最後に……一緒に乗ろ?」


 そう言って、僕の手を引き、歩き出した。




 * * * *




 夜の遊園地は、恋人たちの楽園だ。

 あっちにもこっちにもカップルがいる。

 きっと僕たちも、その内の一組だと思われているのだろう。


 虹色の電飾に輝く観覧車に近付き、見上げる。

 まるで、巨大なアナログ時計だ。


 僕たちは揺れるゴンドラに乗り込む。

 十五分間の空中散歩が始まった。


「わぁ……めっちゃキレイ……!」


 宝石を散りばめたような園内と、その向こうに広がる海。

 レモン型の月が高く昇り、海面に反射している。


 平和で静かな夜の景色に、邪神徒(フェイスフル)によるテロを阻止できたことを再認識し、僕は「そうだね」と返した。


「……ねぇ、リィト。さっきのライブの、あの演出……」


 ……きた。

 やはり、ここで聞いてくるか。


「メルりんにはああ言ったケド……あれやったの、メルりんじゃないよね?」


 確信めいた表情で尋ねるヒメカ。


 ……そうだよ、あの闇を打ち消したのは君だ。

 けれど、その力の正体を知らないから、こうして僕に尋ねる場を設けたんだね。


 ……いよいよ、真実を伝える時が来た。

 ヒメカの有する規格外の与魔力(スルチカ)と、その有用性について。


「……うん。あの闇の塊は、邪神徒(フェイスフル)が仕掛けた賜魔術(アコード)で……発動していたら、観客は全員精神を侵されていた。けれど、発動直前に介入し、素敵なものが飛び出す術に改変された。それを可能にしたのは、エンジュさんの賜魔術(アコード)ではないよ」

「やっぱりね。ぶっちゃけ、それをやってのけたのって――」


 ごくっ……と、ヒメカは喉を鳴らし、



「――駆け付けてくれた、ツバキ様っしょ?!」



 目を輝かせながら、そう言った。



 

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