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ぎゃるめがっ!!!〜ときめきが魔力になる学園で、魔力ゼロなチョロかわギャルとバディになった話〜  作者: 河津田 眞紀@5/2ゼロラブ第1巻発売!
8.メガネと遊園地

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27/50

大好きの魔法




 ――ライブ開演まで、あと五分。

 スーツ男とヒゲ(づら)男が何かを話しながら、観客席を離れていく。


 と、その後ろから、


「ちょっと待ったぁッ!」


 ヒメカが声を上げ、二人を止めた。


「おっさん、こないだの変態撮影会男でしょ! まだメルりんの周りをウロついてるなんて、どーゆーつもり?!」

「あァ? なんだ、メルリちゃんのお友達か。あの時はよくもやってくれたなぁ? あの高さから降りるのは骨が折れたぜ」

「ふんっ、骨折れた割には元気じゃん。ホントは折れてなんかいないんじゃないの?!」


 ヒメカちゃん。それ、ただの慣用句。


「とにかくっ、あんたのことは許さないから! 賜魔術(アコード)使って、とっ捕まえてやる!!」


 ビシッと指を差し、宣言するヒメカ。

 スーツ男は余裕の表情だが、横にいるヒゲ面男は焦ったように言う。


「旦那。今騒がれたら厄介です。ここは一つ穏便に……」

「うぉりゃー!!!!」


 と、相手の都合を無視してヒメカがスケーターで駆け出す。

 男たちは舌打ちをし、その場から逃げ出した。


 ヒメカに追われる形で、二人は人通りのないステージの裏手側へと逃げ込む。

 うん、作戦通りだ。


「へっ。こんなところで賜魔術(アコード)を使ったらステージにも影響が出る! ライブを中止にしたくないならやめとくんだな!」


 スーツ男が勝ち誇ったように言うが――


「……その通り」


 ――ギュルルッ!


 男たちの身体に、僕が顕現した蔓が巻き付き、身動きを封じる。

 倒れ込む二人の前に、僕は立ち、


「ここでは火責めも水責めもできないけれど……こうして縛って連れて行けば、何でもできるからね」

「てめ……あの時のクソガキ……!」


 ヒメカが上手く誘導してくれたお陰で、人目につくことなく捕らえることができた。

 これならライブにも支障はないだろう。


「大人しくして。今、ツバキ理事長がこちらへ向かっている。あの人の取り調べを受けたくなければ、今の内に悪事を自白しておいた方が身のためだよ」

「悪事? ハッ。俺たちは何もしちゃいねぇ! 何故なら……」


 ……と、ヒゲ面男がニヤリと笑ったかと思うと、


「……まさにこれから、するところだからな」


 言いながら、その姿が……溶けた。

 真っ黒な(かすみ)になって、消えたのだ。

 奴を縛っていた蔓だけが、パサッと地面に落ちる。


「はぁ?! 消えた?!」


 ヒメカが叫ぶ。

 これは幻影……邪神徒(フェイスフル)の術の中でもかなり高度な賜魔術(アコード)

 人や物、景色を本物そっくりに生み出すことができる。


 いつから幻影と入れ替わっていた?

 蔓で縛った時の手応えすらも虚構だったのだろうか。


 いや、それより今は、


「まずい……ヒメカちゃん、ステージへ戻ろう!」


 スーツ男を床に転がしたまま、僕たちは駆け出す。

 直後、ライブの開演を告げる音楽が鳴り始めた。


「みなさーん、こんにちはー! ハートを射抜くメルティエンジェル、メルリ・エンジュでーす! 早速一曲目、聴いてください!」


 メルリのマイクパフォーマンスと観客の歓声が響く。

 そして、曲が流れ始めた。


 スポットライトが踊る中、僕とヒメカは観客席を見渡す。

 直後……それは起こった。


「……なに? あれ……」


 観客たちの視線の先――ステージで歌うメルリの頭上に、闇の塊が出現した。

 ブラックホールのように黒い渦を巻きながら、音もなく浮いている。


 あれは……精神を汚染する、大規模賜魔術(アコード)の前兆だ。

 あの闇が弾けたら、ここにいる全員が幻覚や幻聴に侵される。

 最悪の場合、廃人になったまま戻らない者もいるだろう。


 このライブで大惨事を起こし、責任の帰属や社会からの批判をメルリに集めることで彼女を絶望させる……それが奴らの狙いか。


 僕は熱狂する観客席を見回す。

 この中に、あのヒゲ面男の本体がいるはず……いや、この賜魔術(アコード)は複数人の力がなければ顕現できない。他にも邪神徒(フェイスフル)が紛れているのだ。


 その全員を闇が弾ける前に見つけ出し、捕縛することなど不可能。

 なら、「逃げろ!」と叫んでライブを中断するか?

 それとも観客全員を蔓で捕らえ、動きを封じる?

 いや、どちらもライブを台無しにすることに変わりはない。

 メルリが絶望すれば、奴らはアメノを復活させるための力を得ることになる。


 どうすれば……もう、ライブを中断する以外に方法はないのか?


 笑顔で踊るメルリの上で、絶望の種が今にも芽吹こうとしている。

 それを見つめ、奥歯を噛み締めた……その時。


「やばっ。イマドキのライブってあんな演出あんの? めっちゃアガるじゃん!!」


 隣で、ヒメカが言う。

 その底抜けに明るい声に、僕は……この状況を打開する唯一の方法をひらめいた。


「ヒメカちゃん!」

「えっ?」

「あの闇が弾けて、何が出て来たらアガる?! 想像して……その想像を、あの闇にぶつけてみて!」

「想像を、ぶつける……?」


 ヒメカには、貰魔力(サレチカ)がない。

 代わりに、『与魔力(スルチカ)』――アメノの力を無効化する(アンチ)賜魔術(アコード)を有している。

 その規格外の力であの術を打ち破れば、邪神徒(フェイスフル)の目論見を阻止できるはずだ。


「これはヒメカちゃんにしかできないことなんだ。お願い……みんなを救ってくれ!」


 肩を掴み、言う。


 彼女にとっては、わけのわからない話だろう。

 けれど、ヒメカはキリッと眉を引き締め……闇の塊を見据えて、


「任して……あたしがみんなを救ったげる!!」


 手をかざす。

 そして、瞼を閉じ……つけまつ毛を揺らしながら、カッと開眼すると、



「――弾けろ!! あたしの『大好き』たち!!!!」



 叫んだ。


 ……その時。

 メルリの歌がちょうどサビに差し掛かり、最も盛り上がるタイミングで――


 ――闇が、弾けた。


 ぶわっ! と溢れる桜の花びら。

 そして、飛び出す色とりどりのぬいぐるみたち。

 それらが客席の上を漂い、曲と調和しながら踊り出す。


 観客から歓声と感嘆が漏れる。

 精神汚染はない。

 それどころか、この夢のような光景に、誰もが幸せな気持ちになっていた。


 これが、与魔力(スルチカ)……『愛する力』が齎す、(アンチ)賜魔術(アコード)の力。

 

「わぁーやばーー!! これ、あたしの賜魔術(アコード)?! いや、ライブの演出?! どっちにしろ神すぎ! 見て見てリィト! あのぬいぐるみ、あたしのらぶたんにそっくり!!」


 自分が生み出した奇跡を指差し、無邪気にはしゃぐヒメカ。

 その笑顔に、僕は……

 安堵と愛しさと、眩しいまでの神聖さを見出し、


「…………っ」


 気付けば……

 ヒメカの身体を、強く抱き締めていた。


「り、リィト?! どしたの急に……っ!」

「……ごめん。なんか……気分がアガっちゃって」


 腕の中で恥ずかしそうに身じろぎするヒメカ。

 みるみる上がるその体温を、胸にしっかりと感じながら、


「……ありがとう、ヒメカちゃん。君は…………僕のヒーローだ」


 ヒロインって言うべきだったかな。

 なんて反省しながら、僕たちはメルリの一曲目が終わるのを、そのまま見届けた。



 

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