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予選の物語

 7月11日(土)


 本来ならテスト勉強に勤しんでいるはずの今日。俺は九尾高校へとやってきていた。いや、俺ではなく俺達野球部は、というべきか。


 今日、甲子園へ続く大阪予選が始まるのだ。ちなみに1年である俺はスタメンこそ勝ち取れなかったがベンチメンバーとしてチームに参加している。


「今日が初戦だ!まずは先制点をキッチリとって俺達のペースに持ち込むぞ!」


 主将が選手を鼓舞する。今日の相手の九尾高校は中堅校である。周りから見た評価だと強くもなければ弱くもないといったところだ。ちなみに去年の成績は大阪大会ベスト8だ。


 その時に負けたのが大阪桐生学園、去年の優勝校だ。その大阪桐生学園は甲子園に出場すると危なっかしい試合も見せながらも見事優勝した。


 俺達は今年こそ大阪桐生学園を打ち破って甲子園に出場する。そう心に決意しまずはこの九尾高校と相対する。


 で、せっかく野球編に入ったので今まで明かしてこなかったレギュラーメンバーを紹介しよう。


 まずは俊足とミート力が持ち味の2年生、1番ショート千代田先輩。右投げ両打ち

 続いて小技に加え粘り強さが得りの2年生、2番レフト名護先輩。右投げ右打ち

 ランナーを返すことに加えチャンスメーカーもこなす3年生、3番サード黒石先輩。右投げ右打ち

 我がチームの本塁打王の3年生、4番ファースト神戸先輩。右投げ左打ち

 チャンスに強い我がチームの打点王である3年生、5番キャッチャー小田原先輩。右投げ右打ち

 満塁の場面にめっぽう強い3年生、6番ライト福岡先輩。右投げ右打ち

 我がチームのエースでバッティングもなかなかの2年生、7番ピッチャー滝川先輩。右投げ右打ち

 チームのムードメーカーである3年生、8番セカンド松山先輩。右投げ左打ち

 鉄壁の守備力をほこる3年生、9番センター日野先輩。右投げ右打ち

 生徒からの信頼も厚い野球部顧問、監督宇治先生。


 これがスタメンだ。まあ、1人監督が混じってるけどこれがスタメンだ!ただ控え選手もかなり層が厚いのがわが校の特徴だ。もうすぐ試合も始まることだしパパッと紹介しよう。


 先発が崩れたときはこの人に頼れとまで言われる中継ぎエースの2年生、大崎先輩。右投げ左打ち

 最後は任せろ!我がチームの守護神である3年生、一宮先輩。右投げ右打ち

 代打の切り札と呼ばれる勝負強いバッティングを見せる3年生、長門先輩。右投げ右打ち

 チーム1の俊足で我がチームの盗塁王。代走の切り札である2年生、安芸先輩。右投げ左打ち

 ロングリリーフは完璧な3年生、大竹先輩。右投げ右打ち

 先発2番手はこの人しかいないとまで言われる貴重な左腕投手の2年生、人吉先輩。左投げ右打ち

 どこでも守れるユーティリティープレイヤーな3年生、奄美先輩。右投げ左打ち

 先発3番手だがバッティング抜群な二刀流の2年生、橋本先輩。右投げ左打ち

 そして1年生ながらベンチメンバーに名を連ねた黄金新人ゴールデンルーキー、俺こと逢坂零だ。俺は右投げ右打ちだ。まあ、やろうと思えば左投げも左打ちもできるがな(小学生レベルだが)。


 以上18名(選手のみ)が今回の大会のメンバーだ。それに加えてマネージャー等を紹介したいと思う。


 まずは監督とは別で入ってくれているもう1人の野球部顧問、戸田先生。

 野球部唯一の女子部員でマネージャーをやってくれている2年生、千葉先輩。


 この計21人が今大会のメンバーとなっている。まぁ、メチャクチャ新キャラが出てきたものだと思うが基本野球編でのみの出演だから大丈夫だろう。


「プレイボール!」


 審判の掛け声で試合が始まる。俺達のチームが先行だ。


「行け!千代田!」

「出ろよー!」


 早速ベンチから千代田先輩への声援が送られる。俺達の応援が届いたのかはわからないけれど2ストライク3ボールからの8球目をレフト前へ運んだ。


「ナイスだ!」

「続けよ!名護ー!」


 名護先輩は初球をバントする。相手のピッチャーがボールを取ると、一瞬2塁を見たけど間に合わないと判断したのか1塁へ投げた。これで1アウト2塁だ。


「チャンスだぞー」

「先制だ!黒石!」


 黒石先輩はきわどい球をキッチリ見極めて1ストライク3ボール。カウント的に甘い球が来やすいカウントだ。


 相手ピッチャーがセットポジションから5球目を投げる。相手の投げた球はど真ん中の絶好球だった。当然、黒石先輩が見逃すはずもなくジャストミート。打球は軽々とレフトの頭上を越えていった。


 これが先制のタイムリーツーベースとなって1点を先制。さらになおも1アウト2塁とチャンスだ。


「よっしゃぁぁぁ!!」

「ナイス!」


 ベンチが湧く。欲しかった先制点が初回から手に入ったのだ。この喜びようも仕方がないのかもしれない。しかしここで油断してるとあっさり逆転されるのが野球の怖さだ。しっかりもう1点欲しいところだ。


 カキーン!


 俺がベンチを見ながら呆れている間に神戸先輩が1,2塁間を強い当たりで抜いて1,3塁のチャンスを作り出した。ここで我がチームの打点王、小田原先輩の登場だぜ!


「2点目をもぎ取ってくる」


 なんか渋い。とにかく小田原先輩が打席に入る。


 相手ピッチャーは黒石先輩の時のようなことを恐れたのか今度は丁寧にコーナーをついてくる。カウント2ストライク1ボール。カウント的にはピッチャーが有利だが小田原先輩ならやってくれるはずだ。


 相手ピッチャーがセットポジションから4球目を投げる。ボールは打者の手元で鋭く落ちる。あれはフォークか!?


 小田原先輩は相手が投げたフォークをすくい上げるように打った。打球は伸びていき相手センターのグラブに収まる。これを見て3塁ランナーの黒石先輩がホームへ帰ってくる。


 犠牲フライで2点目。これで一気に優位に立った。しかし続く福岡先輩はショートフライで3アウトチェンジとなった。


 1回の裏。マウンドにエースの滝川先輩が立つ。


 滝川先輩は大きく振りかぶるワインドアップで投げる。初球はど真ん中の甘いコースであったが148キロを計測し相手は手が出ない。まあ、球筋を見極めるためにあえて見送ったという可能性も無きにしも非ずだが。


 2球目はキッチリコーナーをついた投球でストライク。あっという間に追い込んでしまった。


「良いぞ滝川!」

「三連続三振取っちまおうぜ!」


 3球目は低めの変化球だ。相手は空振り三振で1アウト。どうやら相手はこっちのピッチャーを打ち込めなさそうだな。


 相手の2番に対しては初球、2球目と大きく外れてカウントを悪くしたものの3球目、4球目でストライクを取って平行カウントに戻した。


 そして5球目。高めのストレートで空振り三振。2者連続で完璧な立ち上がりだ。あとは3番に手痛い一発を食らわないように油断なくやって欲しい。


 3番に対しては変化球をうまく使って2ストライク1ボールと追い込んだ。そして決め球にカーブを選択する。相手は大きく曲がる変化についてこれず空振り三振。


 見事に三者連続三振を達成する。これで初回が終わって2対0。


「よし!良い調子だ。このまま攻め続けろ!」

「「「はい!」」」


 監督の宇治先生の言葉に元気よく返事をする。


 そして2回の表。ここから打線が爆発する。


 先頭打者の7番の滝川先輩が7球目を見送ってフォアボールを選ぶと8番の松山先輩が初球をライトへポテンヒット。1,2塁となると日野先輩が3球目をバントして2,3塁のチャンスを作り出す。


 そして1番に帰ってきて千代田先輩。4球目を上手く流し打つと2者を向かい入れる2点タイムリーとなった。これで4対0。


 続く名護先輩がデッドボールで再び1,2塁。ここで黒石先輩が2打席連続となるツーベースを打ってさらに1点追加し5対0。さらに2,3塁のチャンスで神戸先輩に回ってきた。


 しかし相手バッテリーは神戸先輩を歩かして小田原先輩との勝負を選んだ。


「もう1点!もう1点!」

「頼むぞ。小田原!」


 小田原先輩は2球目をセンターへはじき返す。これがタイムリーヒットになって6対0。さらに満塁に強い福岡先輩に回ってくる。


「福岡!今度は打てよ!」

「頼むぞ!」


 なんかさんざんやじられてるな。福岡先輩ドンマイ。


 俺が心の中で慰めていると汚名返上とばかりに右中間を真っ二つに割る走者一掃のタイムリーツーベースとなった。これで9対0。


「なあ逢坂。コールドゲームって何点差だっけ?」

「確か5回で10点差、7回で7点差です」

「じゃあ、あと1点取れば今日の滝川の状態からして5回コールドに出来るな」


 しかし欲が出てくると案外うまくいかないものである。滝川先輩は良い当たりをするもサードライナーで2アウト。松山先輩も打ち損じてライトフライで3アウトチェンジとなった。しかしこの回、一挙7得点のビッグイニングで相手を突き放した。


 しかしそれでも滝川先輩の球は打たれる気配がしない。2回の裏も4番5番を三振に打ち取って5者連続すると6番にはバットに当てられるも平凡なセカンドゴロで3アウトチェンジ。完璧なピッチングで1人のランナーも出さない。


 3回表の攻撃は相手も開き直ったのか良い球を投げるようになっていた。日野先輩がサードゴロ、千代田先輩がレフトフライ、名護先輩はフォアボールで出塁するが黒石先輩がセンターライナーで3アウト。


 まさかの無得点に抑えられてしまった。そのせいかベンチ内の空気が少し悪い。


「うおりゃあ!」


 それでもその悪い空気を吹き飛ばせるのがエースだと思う。相手の7,8,9をまた三者連続三振に打ち取ってこれで3回8奪三振のまさしく手も足も出させないというピッチングである。


 3回終わって9対0。あと2回で1点取れれば最高だけどこのままでも7回まで行けばコールド勝ちである。それでも先輩たちはどうしても5回コールドで終わらせたいのか円陣まで組み始めた。


「絶対あと1点取るぞ!」

「「「おう!」」」


 そして円陣まで組んだ4回の表。先頭打者の神戸先輩がライトオーバーのツーベースで出塁した。これでノーアウト2塁。得点が入る可能性の方が高い。


 しかし小田原先輩の打球がセカンドライナーとなり、飛び出していた神戸先輩も戻れずダブルプレーとなる。うわぁ……最悪じゃねえか。


「まじかよぉ……」

「これはないわー」


 先輩たちも俺と同じ気持ちのようだ。というかどう考えてもおかしいだろう。せめてゴロを打ってランナー3塁に進めろよ。なぜそこでライナー?運悪すぎ。


 キーン!


 気落ちしていると福岡先輩がレフトへヒットを放ってくれる。これで2アウト1塁。ここらで追撃だ!と思っていたのだが滝川先輩がピッチャーゴロに倒れ結局無得点に終わった。


「おりゃぁ!」


 しかし守備の方は相変わらず点を取られる心配はない。一応相手も2巡目なんだけどな。まず、先頭打者をサードゴロに打ち取った。というかここかでヒットどころかフォアボールも与えてないし、そもそも外野にボールが飛んでいない。


「とりゃあ!」


 相手の2番も三振に打ち取る。これで2アウト。


「そりゃあ!」


 相手の3番はキャッチャーフライとなった。完全に滝川先輩の球に差し込まれている。これは9回までやれば確実に完全試合が出来るな。


 そして運命の5回の表。ここで点が取れなきゃ6回以降も行うこととなる。打順としては8番からの下位打線だがマジで大丈夫なのか?なんか不安になってくる。


「マジで点を取らなきゃなんねぇ!」


 松山先輩がショートへの内野安打で出塁した。これで先ほどに続いて先頭打者が出塁したことになる。


「逢坂。行ってみるか?」


 唐突に監督が聞いてきた。っていうかマジで?俺、出られるの?


「いいんですか?」

「いってこい」


 よっしゃぁぁぁ!!ついに公式戦デビューだぜ!


 俺は喜々として打席に向かう。そして構える。


 相手ピッチャーはセットポジションから1球目を投げてくる。インコースへのまっすぐだ。これを打てば内野ゴロ併殺打になる可能性が高いな。


 俺は悠然と見送る。判定はストライクだ。


 第2球目。これはアウトローへのギリギリの球だ。さすがにここも手を出すのはマズいんだろうけど追い込まれる方が嫌だったので強引に打ちに行った。


 俺の打った打球は一直線にライトスタンドへ消えていった。チーム内初ホームランはまさかの俺でしかも11点差にする最高のホームランとなった。


「よくやった!」

「偉いぞ!」


 俺は先輩たちから褒められた。そしてその後、点はとれなかったが滝川先輩が5回の裏をキッチリ三者凡退に仕留めてコールド勝ちが決まった。


 ちなみにスコアボードはこんな感じだ。


         1 2 3 4 5 計

 俺達のチーム 2 7 0 0 2 11

 相手のチーム 0 0 0 0 0 0

 (5回コールド)


 さあ、2回戦も頑張るか。


 運動能力が2上がりました。

来週は忙しいのでお休みです。すいません。

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