下着泥の物語
7月3日(金)
ここ2日間で下着泥の被害が一気に増えた。下着泥の被害にあったという女子生徒まで出てきて学校内はテスト前だという雰囲気ではなくなってきた。
「突然で申し訳ありませんが生徒会室に集まってください」
七草会長に呼び出され生徒会室へと向かう。そこには会長である七草御影、副会長の天野雷斗、小林真司、一色恵の4名がいた。つまりは現生徒会メンバー勢ぞろいというわけである。
というか俺も生徒会メンバーに入ってたんだな。とりあえず生徒会の肩書はもらってるけどこういう緊急時の集会みたいなのに呼び出されるとは思ってなかった。
「会長。やはり俺達が集められたのは例の件か?」
「はい。さすがに学校内が混乱してきてますので事態の収拾に動きたいと思います」
まあ呼び出された理由というのは今ので大体わかったけどどうやって収拾するつもりなんだろうか?どう考えても混乱の原因は下着泥によるものだろう。だとしたら下着泥を捕まえるしか方法がないように思えるのだが。
「しかし会長。どうやって事態の収拾に動くつもりですか?」
恵も俺と同じ考えだったようだ。その言葉に場が沈黙に包まれる。
「みなさんの言いたいこともわかります。下着泥を捕まえないと収まらないというのでしょう?」
「そりゃあな。今回の混乱は混乱の原因を取り除かないと収まらないぞ」
「コイツに同意するのは腹が立つが一理あると思うぞ」
天野雷斗は一言多いんだよな。普通に同意できねえのかよ。だからこういうイケメンは嫌いなんだよ。頼むから翔あたりと副会長交代してくれ。翔も天野雷斗と遜色ないイケメンであるが性格が全然違うからな。
俺に対して嫌味を言ったりすることはないし相談もできる間柄ではあるからな。あと小林の代わりに美咲あたりが入ってこないかな。
「おい。何かあるならはっきり言ってみろよ?」
「いや別に。なんか余計な一言が引っ付いてるなと思っただけですよ」
「何を言うか。本当のことだろう」
俺と天野雷斗がにらみ合う。そこを恵と会長が止めに入る。
「何で仲間割れが始まるんですか?」
「零も落ち着いて」
数分後ようやく落ち着き話が再開される。その結果、やはり下着泥を捕まえるしかないという結論に思い至った。
すると話は自然にどうやって捕まえるかに移っていく。
「やっぱり囮が一番無難じゃないんですか?」
「しかし失敗した場合はどうするつもりなんだ?」
「それか目撃情報を集めていってアジトを割り出すのがいいんじゃないか?」
「それが出来るのならとっくに警察がやってるだろう」
恵が出した案を天野雷斗が否定し、小林が出した案を俺が即否定しまたもや一色触発の空気になっている。まあ俺は大人だしここは突っかかるのはやめておこう。
「なら他に手はあるのか?」
「案なら恵が提案した囮を使えばいいんじゃないのか?」
「だから失敗した時のリスクを考えろよ!大体、おとり用の下着なんてどっから持ってくるんだよ」
「え、その辺の店で買ってくれば良くないか?」
俺の言葉に静まり返る。え、何か変なこと言った?だいたい実際に女子が履いている下着を使うわけないだろう。常識的に考えろよ。
「それじゃあ犯人が釣れるかわからないだろ」
「いや、そんな遠目じゃ履いたものか新品かなんて見分けつかねえだろう。それにたとえばれても引き返せないように罠を張ればいいじゃないか」
例えば全校生徒で犯人を取り囲むとかネットのを仕掛けておくとか落とし穴とかをほっておくとかやりようはいくらでもあるだろう。
それに学校というのは結構いろいろなものが揃ってるから罠とかを仕掛けやすいだろう。
「どんな罠を張る気だ?」
「どんなって言われても難しいけど例えばアンモニアによる異臭攻撃とか野球ボールで一斉攻撃とかかな……」
「だがそんなので警察も捕まえることが出来てない下着泥を捕まえることが出来ると思ってるのか?」
「難しいとは思う。だからこそ情報を集めるべきではないのか。小林の案は確かに却下したが情報を集めるのに不利益はない」
1度却下した案が復活して微妙な空気になるが俺はその空気一切を無視する。とりあえずその後の話し合いの結果、作戦決行は明日で今日1日はひたすら情報を集めることに集中するということで決まった。
ちなみに作戦は俺の言った案が採用されてしまった。罠の種類としてはアンモニアと野球ボールのほかにサッカーボール、バスケットボールも加えられた。
さらに校内で呼びかけを行い出来る限りの人を集めることにも成功する。特に被害にあった女子は全員が参加してくれた。
結局、学校は授業にならないということで午前授業のみとなり俺は街へ下着泥の情報を集めに来ていた。ネットや新聞の情報を集める限り犯人はこのあたり出没し隣の市には一切現れていない。
さらに日に日に被害範囲は広がっており学校の校区内に及んでいるようである。さらに狙われているのは10代から20代の女性のみで近隣住民の誰かが犯人だと睨んでいる。
1件だけならまだしも立て続けに若い女性の家ばかりが狙われているのが気になるからだ。数日に1度のペースならどこの誰かを特定するのは難しいがこうも連続して起こるとなるとどこに誰が住んでいるのかを大体知っている人ということになる。
俺は無駄だとは思いながら犯人らしき人物を探しているのだ。一応被害が1番集中しているところを探している。1番集中してるからと言って必ずしも犯人がいるわけではないしそもそも俺が犯人を見分けれるのかも怪しいとこだが情報を集めるのは女性陣の方がやりやすそうだからな。
「しかしそう簡単に見つかるとも思えないしたとえ見つかったところで証拠がなければ意味がないな……」
かなりどんよりとした気持ちでも探し回るが結局見つけることはできなかった。ラノベだとこういう時にばったり美少女犯罪者に出会って捕まえて捕虜あたりにして最終的に仲間になる的な展開を期待できるんだけどゲームの中とはいえリアルすぎるのでそう言う線も期待できそうにない。
俺は家に帰って今日調べたとことを会長に連絡しておく。一応今回の作戦の総指揮をとるのは生徒会長だからな。ちなみに校長である八戸先生は見た目から10代と間違われ下着泥の被害にあったらしい。
10代に間違われたのはあくまで本人の弁だが八戸先生は普通に下着泥のターゲットになっていることを忘れてるのではないだろうか。とにかく被害にあったショックからしばらく学校を休んでいる。
作戦決行は明日の午後5時より行われるのでそれまではしっかり英気を養うとしよう。ということでゲーム、漫画、ラノベを堪能し夜更かししてから眠った。
7月4日(土)
作戦決行当日。天気は晴れていて視界も良好だ。7月ということもあり暗くなるのも午後8時を過ぎてからなのでコンディションはこちら側が有利だな。
俺は作戦開始より2時間も前に学校へ行く。そこには生徒会役員に加え、翔、三上、愛さん、奏ちゃん、森、美咲、社長とオールスターって感じの人達が揃っていた。
「零君。今日は絶対に犯人を捕まえようね」
「ああ。奴はどこにでも現れる神出鬼没な奴だから警戒は怠らないようにしないとな」
「分かってるよ。けど人がまだ全員来てないからしばらくは大丈夫だよ」
良くわからないが多分、全員がそろうまでは囮を使わないといいたいのだろう。つまり今は作戦の最終調整を行っているといったところか。
「まさか設定を変えた直後にこんなことになるとはな」
翔が俺に小声でそう言ってくる。
「確かにここまで大事になることは想像してなかった」
俺と翔が話していると次第に人数が増えてきた。というか全校生徒の8割がた集まった。まあ普段の学園生活では体験することが出来ないからな。
まあ来なかった人は本気で興味のない奴らなのだろう。俺も正直言うと家でゴロゴロしてたかったけど一応生徒会役員だし天野雷斗に文句を言われるのも嫌だしな。
作戦決行10分前になってようやく囮となる下着が用意される。罠だとばれない様に職員室や保健室においてある予備の体操服や制服も用意して置き、補習を装った生徒が数人その近くにいてる。
要するに表だって警戒はするものの隙だらけを装うわけだ。こんなにも下着泥が騒がれているのに全く警戒しないのも逆に怪しまれそうだしな。
「いよいよだな」
「ああ」
翔の言葉にうなずき俺も警戒を始める。正直作戦10分前とか言ってたけど囮を用意した時点で開始されているのだ。俺は携帯のニュース画面一覧で下着泥が出てないか調べる。
「なあ零。ニュース画面よりツイッターとかの方が早く情報が集まるんじゃないか?」
「確かに。試してみるか」
俺はネットワークを駆使して下着泥の情報を集める。どうやら今夜も現れたらしく場所は俺達が今いる場所から結構近かった。
恐らく数時間もしないうちにこっちに来るだろう。俺はそのことをみんなに伝えた。すると一気に警戒してるような顔につきになる。
もしかしたら余計なことを言ってしまったかもしれない。だけど下着泥が現れてから緊張して動けなくなるよりかはマシか。
「しかし本当に捕まえれるのか?」
「それは俺達の出来次第だろな」
「まあそうなるよな」
俺は野球ボールを、翔はサッカーボールをいじりながら話している。美咲たちは既に隠れて下着泥がやってくるのを待ち構えている。
ちなみに俺と翔は部活を頑張る真面目少年を演じている。これなら武器となる野球ボール、サッカーボールをいじっていても不審がられることはない。まあ演じるにあたってユニフォームに着替えさせられたけどな。
「キャー!」
悲鳴が聞こえた。これは事前に下着泥が現れたらするように決めていた合図のようなものだ。というか下着泥はいったいどこから現れたんだ?正門周辺は俺達が完璧に見張ってたというのに。
俺は何級かをポケットに忍ばせ悲鳴のした方へとダッシュする。翔はこんな時だというのにドリブルをしながら走っていった。
俺が囮の用意したところへたどり着くと既に大半の生徒が犯人らしき変態を取り囲んでいた。しかし下着泥は余裕そうな態度を崩さずおとり用に用意した下着を盗んでいっている。
というか新品のやつでも良いなら盗む前に自分で買えよ。それなら気持ち悪がられても犯罪者になることはなかったのに。俺はそう思いながら思わず憐みの視線を向けてしまった。
「俺を捕まえられると思うなよ」
そう言うや否や何かを地面に叩きつけた。その瞬間、視界が光に覆われる。閃光弾か。俺は咄嗟に後ろを向いて光を極力見ないようにする。
すると下着泥が走っている姿見えた。俺は手に持っていた野球ボールを投げつける。俺の投げたボールは見事に犯人の背中にぶち当たった。しかしバランスを崩しながらも逃げる姿勢をやめない。
さすがは警察から逃げ続けている連続犯だな。そう簡単には捕まえさせてくれない。俺が追っていると頭上を何かが通り過ぎていった。
そして下着泥に当たってこちらに転がってくる。サッカーボールだった。つまりは今のは翔がやったってことか。俺は犯人に近づき取り押さえる。しかし高校生の体と大人の体では体格が違いすぎ抑え込みきれない。
「くそっ!」
犯人は大きく叫ぶと懐から何かを取り出した。俺は本能的に危険と判断し飛び退く。男が起き上がり手に持っていたのはナイフだった。
「あ、危なかった……」
もし逃げるのが遅れていたら大けがではすまなかったかもしれない。けど野球ボール、サッカーボールと連続してぶつけられて犯人の方も満身創痍だ。
俺はポケットに入っているボールを取り出して大きく振りかぶる。そして渾身のスライダーを投げた。犯人は俺の予想通りに避け曲がってきたボールにぶつかってナイフを落とした。
もしかしたらまだ武器を隠し持ってるのかもしれないので慎重に距離を詰め一瞬の隙にナイフを蹴りとばした。それを見て男が逃げたのを見てもう武器はないと判断しボールを思いっきり頭部へぶつけた。
犯人は勢いよく地面に叩きつけられ気絶した。
◇
その後、犯人は警察につかまって連行されていった。それに伴いアジトの場所が判明し盗まれた下着も帰ってきたが気持ち悪いとほとんどの人が捨てたという。
ちなみに俺達は犯人逮捕に協力したということで賞金100万円をもらった。まあここにいる全員で山分けしたということで取り分は1500円くらいになってしまったけどな。
けど臨時のお小遣いということでパーッと使わせてもらうことにした。
金が1500増えました。




