ニュースの物語とおまけ
7月1日(水)
いよいよ夏休みまで約20日となった。やっぱり夏休みって良い響きだよね。宿題は多いけど。
俺は起きるとテレビをつける。昨日、このゲーム内での設定を変えたので1日でどれくらいの変化があるのかを確かめるためだ。
『昨日、宮城県で震度5の地震が観測されました。幸い津波の被害はありませんが数人が行方不明になった模様です』
設定を変えた直後に地震ってどんだけ急すぎるんだよ。これってなんか超事件が多発しそうなんですけど。なんか怖くなってきた。
『続いてのニュースです。本日未明小学生の女の子が誘拐される事件が発生しました。犯人は身代金として300万円を要求しており警察では捜査が進められているようです』
こんないきなり誘拐とか嫌すぎるんですけど。確かここって大阪をイメージした町なんだし犯罪発生率ナンバー1じゃん。
ちなみここで豆知識だが2位は愛知県で3位が福岡県だ。とりあえず47都道府県すべてを答えてたらしんどいのでトップ10だけ答えておくことにする。
4位は京都府、5位は兵庫県、6位が埼玉県、7位が東京都、8位は千葉県、9位が茨城県、10位が和歌山県だ。
俺は警察官でもないしネットで拾ってきた情報なのでどこまで本当なのかわからないが俺が最後にネット検索かけたときはこうなっていた。
何か関西と関東の首都圏である2か所に事件が集中してるようだがこればかりは仕方がないか。人口も多いしな。
「もうこんな時間か」
俺は慌てて家を出る。今まではゲームの設定上事故とか犯罪に巻き込まれる可能性を除外して来たけど今日からはそういうことにも気を付けなければならないからな。いつもより早く家を出ることにした。
登校の間は何もなかった。けど今までだらけて多分警戒しながらの登校は精神的にしんどいな。現実世界でよくこんなしんどいことを毎日やってたなと現実の自分をほめてやりたい気分だ。
学校ではまだほとんどの生徒は登校してきていなかったため生徒会室に行く。さすがは生徒会長というべきかすでに登校してきていた。
「逢坂君。おはようございます」
「おはようございます。しかし早いですね」
「この朝の時間というのは落ち着いて仕事ができますからね。それにしても今日はずいぶん早いですね」
「まあ、ちょっと早く起きてしまったからかな」
「では仕事を手伝ってください。生徒会長補佐さん」
「分かりましたよ」
俺はしぶしぶではあるが生徒会の仕事を手伝うことにした。しかし仕事自体は簡単なのだが量が多いせいか退屈だな。何かBGMが欲しいな。
ちなみにBGMとはバックグランドミュージックの略で別の主体となるものの背景として流れる音楽のことである。店の雰囲気作りにも使われるのでこの場面で使ってもおかしなことはないだろう。
「なんだか退屈って顔をしてますね」
「そりゃあ同じことの繰り返しを永遠と続けるわけですからね」
「それではテレビでも付けますか?」
「テレビなんてあったんですか?」
「ええ。基本生徒会というのは朝早くに学校に来て下校時刻ギリギリまで仕事をしてるわけですから八戸校長が気を聞かせてくれたんですよ」
へ~あの校長やるじゃないか。好感度がアップしたぞ。良かったな校長。良い生徒会長を持って。
会長がリモコンをいじってテレビをつける。するとちょうどスポーツコーナーの時間だった。現在映っているのは兎軍対鯉軍の試合だ。
現在は6回終わって0対0のようだ。仕事をしながらもテレビから流れる声に耳を傾ける。
『試合が動いたのは8回。角選手のソロホームランで1点を先取されます』
昨日は鯉軍が勝っているようだな。先発の白田は完封ペースで来てるし勝てるんじゃないか?そう思ってた矢先だった。
『しかし兎軍は9回1アウト1,3塁のチャンスを作ると4番安倍選手のタイムリーで同点にします。さらに1,3塁のチャンスで続く打者は亀選手の犠牲フライで兎軍がサヨナラ勝ち。勝ち投手は2番手のマーシー投手で2勝4敗。負け投手は白田投手で6勝3敗となりました』
マジかよ。白田が逆転サヨナラ負けって意外すぎるんだけど。
「逢坂君。手が止まってますよ」
「あ、すいません」
予想外の出来事に思わず手を止めていたようだ。
『続いての試合は虎軍と燕軍の11回戦です。試合が動いたのは4回。ランナー1,2塁から鳥山選手が2点タイムリーツーベースを放ち虎軍が2点を先制。しかしその裏燕軍の4番畠谷選手にソロホームランが出て1点を返します』
これは嫌な流れだな。先制直後の失点とかいやな予感しかしない。今度はちゃんと仕事もこなしながらテレビの音声を集中して聞く。
『1対2で迎えた6回裏、大押選手の2点タイムリーで逆転します』
ホラぁ。逆転されたし。
『8回にアンドルセ投手のエラーで同点を許しますがその裏に大押選手が再びタイムリーを放ち4対3で燕軍が勝利しました。虎軍はこれで連勝が6でストップ。勝ち投手はアンドルセ投手で4勝1敗。負け投手は福草投手で4勝3敗1Sとなりました。Sはハーゲット投手で1勝0敗18Sとなりました』
最悪だな。普通ならエラーで得点が入った時点で虎軍に流れが来ても良いのにその裏に失点でそのまま負けとか。大体虎軍の監督は福草投手を酷使しすぎだろ。
『セ・リーグ最後の試合は狸軍と竜軍の12回戦です。試合は3回に梶山のタイムリーが出て狸軍が1点を先制。狸軍がこの1点を守り抜き狸軍が勝利しました。勝ち投手は完封しました窪投手で5勝4敗。負け投手は年松投手で1勝1敗となりました』
窪すげえな。完封か。しかし今年の竜軍は投手は強いけど野手があんまりなんだよな。今日だって年松投手が1失点だったのに点が取れずに負けてるし。
『それでは順位を見てみましょう。順位に変動はありません。しかし敗れた首位虎軍と2位兎軍のゲーム差が1に縮まっています』
「終わった……」
ニュースが次のパ・リーグに行くと同時に仕事を終わらせた。時間的にも8時20分で結構良い時間帯でそろそろ教室に戻らなければならない。
「それではそろそろ戻ります」
「ありがとうございました」
俺は生徒会室をあとにして教室に向かう。教室にはすでにほとんどの生徒が来ており俺が登校してきたことに気づいた美咲と森が近づいてくる。
「珍しいね」
「いつもはもっと早くに来てたのですけど何かあったのですか?」
「いや。今日は逆に早く来すぎたから生徒会の仕事手伝ってきたんだよ」
「そう言えば零君って生徒会長補佐だったもんね」
「そんなの覚えてる人いるんですの?」
ひどいな。そんなに俺が仕事をしてないとでもいいたいのか?まあ実際してないからそんなことを言われたら一切の反論が出来ないんだけどな。
「じゃああのニュースは見てないんだね」
「ニュース?」
「そうですわ。最近このあたりで下着泥棒が出没するらしいですの」
「下着泥ねぇ」
あんまり実感がわかないな。事件とか聞くと誘拐とか殺人とかのほうがイメージ強すぎて想像できないな。まあ男子の下着を盗む奴が現れないってのもイメージできない理由なのかもしれない。
キーンコーンカーンコーン
俺が登校時間ぎりぎりにやってきたため大した話もできずにチャイムが鳴ってしまった。自分の席でしばし待つといつも通りに先生が入ってくる。
「起立。気をつけ。礼」
山田くんが号令をかける。それに合わせて起立して礼をする。そして再び着席する。普段なら出席を取ったら生徒から何か連絡があるのか聞いたら休憩時間になるのだが今日は違った。
「えーすでに知ってる人がいるかもしれないが最近このあたりで下着泥が現れている。自分で注意するのはもちろんのこと親御さんにも伝えておくように」
それだけ言い残すと先生は教室から出ていった。先生が扉を閉めると同時に教室内が騒がしくなる。どこもかしこも下着泥についての話をしていた。
「やっぱり結構広まってるみたいだね」
「というかそんなに前から出没とかしてたのか?」
「分かりませんわ。けど今朝のニュースでは数十件の被害が出てるそうですわ」
その下着泥、かなりの実力者だな。今まで表沙汰にならなかったのはゲームの設定によるところが大きいのだろうが数十件を盗みを働いて捕まらないとか何者なんだ。
というか俺が今日見たニュースの話題が全くでないな。野球関連は興味のない人も結構いると思うし仕方ないと思うけど地震とか誘拐の話題は出ててもおかしくはないんだけどな。
やっぱり地域で起こった事件というのがみんなの注意を惹いてるのかもしれないな。というかテスト前なのにここまで盛り上がれるとかみなさん余裕ですね。
「零君の考えてることはわかるよ」
「ええ。大方その下着泥カッコいいとか思ってるんでしょう?」
「思ってねえよ!ただテスト前でよくそんなに盛り上がれるなとは思うけど」
「零君!なんでその話を今したの!?」
「そうですわ!今回のテスト範囲は恐ろしく範囲が広い。ですからみんなこうして現実逃避してるのではないですか!?」
森が教室を見渡せといわんばかりの勢いで手を広げた。俺が周りを見ると沈んだ表情が多く見受けられる。そしてため息の渦に巻き込まれる。
どんだけテストの子と思いだしたくねえんだよ!?というかこのまま逃避し続けたらこの場にいるほとんどの人間が赤点取るぞ。
「落ち込むのは結構だがこのまま逃げ続けてるとガチで赤点取ることになんぞ」
俺がそう言った瞬間、慌ただしく自分の机に戻るものが続出し始めから自分の机のところにいた生徒は急にノートと教科書を取り出して勉強しだした。
どうやら赤点という脅しが効いたようだ。赤点が嫌なら逃げる前にさっさと勉強しろよ。俺はそんなことを思いながら勉強を開始する。
◇
俺は数学教師の谷村という。今日はいったいどうしたんだ。周りを見ると真剣に授業を受けてる生徒の面々。一瞬何かのいやがらせかと思ったりもしたが俺の担当する全クラスで同じ現象が起こっているのだ。
「ついに数学の面白さに気づいてくれたか」
俺は教壇の前に立ちながらそんなことを呟く。今日中にはテスト範囲全てを終えたいと思っていたところなのでもの凄くありがたい。
しかも今朝は下着泥が出たとか言うニュースがあったのでさらに勉強が進まなくなることを覚悟してたのだけど杞憂だったようだ。
「えーここは余事象で簡単に求めることが出来る。分かったか?」
返事も一切せずに必死にノートに書き写していく生徒たち。なんだか鬼気迫るものがあって少し怖いな。本当に一体どうしてしまったんだ?
「おい逢坂。ちょっと来い」
俺はこのクラスで1番成績の良い逢坂を呼ぶ。逢坂の方は不思議にしながらもおとなしく来てくれた。
「何ですか?」
「今日のクラスはおかしくないか?」
「おかしいとは?」
「いつも授業中騒がしいのに今日に限ってものすごく勉強してるだろ?」
「それはいいことではないんですか?」
「そうなんだがいきなりこうだと怪しむのが普通じゃないか?」
「それもそうですね」
「で、何か原因に心当たりはないか?」
「そうですね。やっぱりあの脅しが聞いたんでしょうかね」
「脅し?」
基本優等生の逢坂から物騒な言葉飛び出たので身構える。まさか逢坂がそんなことをする生徒だったとは……。俺はこれから逢坂とどう接していけばいいんだ。
「はい。現実逃避してたら本気で赤点取るぞといったらこうなりました」
「な、なんだ。そんな脅しがそこまで通用してるのか」
これは良いことを聞いたぞ。やっぱり生徒の誰もが赤点は取りたくないと考えてるんだろう。だったらここは平均点が高くなること覚悟しても点を取ってもらって勉強への意欲を高めるのがいいかもしれないな。
勉強すればできると考えさせることができればきっとみんなも真面目に授業を受けてくれるようになるはず……。
「先生。何考えてるか大体予想できるので言わせてもらいますがそんなことしたら俺は出来るとか勘違いをして勉強をしなくなり次のテストで赤点取る生徒が出る可能性がありますよ。はっきり言いますと今くらいがちょうどいい難易度なんですよ」
なんで教師である俺が生徒である逢坂にアドバイスをもらってるのかわからんが確かに一理あるな。だったらこのままのテストで行こうか。
キーンコーンカーンコーン
おっと、チャイムが鳴ったか。授業としては意欲的になってくれたおかげでテスト範囲まで終わらせることが出来たし逢坂からアドバアイスも聞けた。今日は久しぶりに有意義な授業だった。




