オープンキャンパスの物語
6月27日(土)
今日は入学して初めてのオープンキャンパスだ。この世界はゲーム世界なのだから当然だが俺達プレイヤーはオープンキャンパスに行ったことがない。
なので初めてのオープンキャンパスということになる。俺は生徒会の一員としてこのオープンキャンパスに参加することになった。
美咲や愛さん等の生徒会とは関係のない人も有志でオープンキャンパスに参加している。なので結局いつものメンバーが参加していることになるのだ。
「面倒くさいことになったな」
俺は愚痴りながら登校する。本来なら生徒会の一員といえど俺は別に参加しなくても良かったのだ。しかし美咲達の再三にわたる説得に加え校長からも懇願されしぶしぶ引き受けることとなってしまった。
今日のスケジュールとしては午前中は全体説明会だ。これは授業内容とか学費、入試方法についての説明が行われる。これは先生の仕事であり俺達生徒は関係ない。
なので今日は12時集合になっている。これは午後からの施設案内の案内役を俺達がやるからだ。ちなみにゲーム内でのオリジナル設定なのでどんな授業もすることが可能である。これが理由でオープンキャンパス参加者はとんでもない数になったのだとか。
2人一組になって施設案内をするのが俺の仕事だ。この仕事を引き受けているのは俺だけでなく他にも何組かいてる。ちなみに俺達は3班だ。この学校無駄に広いし俺も覚え切れてないところがあるから俺も覚えるつもりで参加している。
今回、俺のパートナーとなるのは美咲だ。美咲は去年のオープンキャンパスにも来たらしく大体のことは分かっているらしい。頼もしい限りだ。
「ハジメ君。早く中学生に会いに行こうよ」
「まてまて。施設見学は13時からだろ?あと30分はあるぞ」
「う~。未来の後輩に会いに行けると思ってたのに」
未来の後輩って気が早くないか?そもそも俺達って入学してからまだ2カ月が過ぎたばっかなんだけどな。下級生が入ってくるなど半年以上先のことだ。
しかも今日オープンキャンパスに来たからと言ってここを受験するとは限らないし受けたとしても毎年の倍率からしたら入れる人はごくわずかだろ。
まあ俺達プレイヤーは入試を突破して入学したとこからゲームを始めてるからテストは受けてないんだけどな。これはプレイヤーだけの秘密だ。
「けどさ。ここの入試って難しかったよね?」
「あ、ああ。そうだな。難しかったな」
俺は適当に合槌を打っておく。だって入試のことなんて何一つ知らないからな。まあ現実ではちゃんと入試を突破して高校や大学に入ってるわけだから難しさというのはぼんやりと思い浮かぶ。
「今日はありがとうございます」
「まあ俺も一応生徒会役員だからな」
「御影先輩が困ってるのならすぐに助けに来ますよ」
会長が見回りをしているようだ。用紙を持っていたのでこっそり覗きこんだところ今日オープンキャンパスに参加するであろう生徒の名前が書き記されたリストだった。
俺は会長からその中の1枚を受けとった。つまりこのリストに載ってるのが今日俺達が担当する中学生か。数えてみると実に20人。多いな。
中学生の名前とかは出身中学校ごとにまとめられている。おそらく一緒に来た時に一緒に回れるようにしているのだろう。それにしてもいろいろな中学校があるよな。
まあ現実に実在する中学をゲーム内に読み込んでいるから当たり前なんだけどリストを見ると凄いなと思ってしまう。
「零君。そろそろ受付に行こう」
「それもそうだな」
まず13時になると自分たちの班が全員そろってるのか点呼を行うのだ。休みの生徒については事前に先生から連絡がいく手はずになってるので来ていないのにいないと騒いだりすることはない。
まあ俺たちの班は休みが1人もいなかったけどな。どっちみち全員がそろうのを待たなければいけないのだ。17時くらいになるまで帰れないので休みがいてもいなくてもどっちでも良いとは思ってるけど。
『これより施設見学を開始したいと思います。中学生の皆さんは中庭で点呼を取ってもらい班ごとに行動を開始してください』
現在12時55分。予定より5分早いがオープンキャンパス午後の部がスタートした。
「いよいよだね。どんな子たちがくるのかなぁ」
「さあ。けどきっといい子達だと思うぞ」
「だよね!」
中庭の割り当てられたスペースで談笑する。すると俺たちの班の人が何人か寄ってきた。俺が名前と出身中学を確認して美咲にチェックしてもらう。
俺達のコンビネーションは抜群であっという間に捌ききった。だが午後の部は始まったばかりでまだまだ俺たちの班員がくるのだ。しっかり集中しないとな。
「3班の人はこちらに集合してください!」
俺は大声で中学生たちに呼びかける。これが功を奏したのか1番に全員が集まることとなった。他の班はまだ5,6人来ていないところが多々ある。
「零君。チェック終わったよ」
「分かった」
美咲の報告にうなずくと中学生に向かって声を張り上げた。
「それでは出発したいと思います!僕にしっかりついて来てください!後ろにはこっちの女の先輩がついてくれてますので何かありましたら僕か彼女に言ってください!それでは出発します!」
俺を先頭に3班が歩きだす。まずは教室から案内する。別にいらないとは思うんだけど見学コースに記入されているので仕方がなく教室へ案内する。
「ここが私達がいつも勉強している教室になります」
「へ~こういうところで勉強するんですね」
「中学の時と比べても広いですね」
中学生達は口々に感想を言ってる。ただの教室なのだが“高校の”と付くだけで物珍しさを感じているようだ。まあ中学生からしたら高校って大人っぽく見えたよな。
次に向かうのは物理実験室だ。その隣が化学実験室にもなっている。ともかく理科関係の部屋だ。ここには理科に関係してるものはたいてい揃ってある。例えば薬品とかビーカーとかな。
「凄い。クロロフォルムまであるよ」
「こっちには塩酸ナトリウムとかもあるぜ」
いや君たちそこに注目すんの!?真っ先に目が行くのが設備ではなく薬品とか将来どんなマッドサイエンティストになる気だよ!?
次にやってきたのは保健室だ。ここはある程度の救命器具は揃っている。まあ大けがとかしなければガーゼとか絆創膏とか揃っているので保健室で治療することが出来る。先生も医学の知識を採用してるので本当に病院まで行かなければならない事例というのはほかの高校に比べて極めて低い。
次は食堂+隣にある購買だ。中学生からしたらすでに昼食を食べるために来たことがある人も多いだろうが紹介しておく。
食堂ではデザートやサイドメニュー合わせて50種類近くの料理を食べることが出来る。値段も外食よりかはお手ごろだ。まあ1番安く済まそうと思えばコンビニでおにぎりとかを買うことなんだけどな。
「ここのカレー美味かったよな」
「ラーメンも以外に行けるぜ」
やはり来た人が多いらしくすでにどの料理がおいしかったとかあの料理をもう1度食べたいとか聞こえてくる。オープンキャンパスには関係ないが俺はここの食堂を1度も利用したことがない。
混むのはもちろんのこと昼は自作の弁当を持ってきてるので食堂には寄り付かないのだ。代わりと言っては何だけど隣の購買には良くいく。
購買にはお菓子、筆記用具、画用紙やノート、ハサミなど日常品が売られている。そしてここの高校だけの特徴が部活動で使うもの、授業で使いそうなものも売ってくれているのだ。
だからなぜかテニスボールが買えたり楽譜ファイルが買えたりする。ここはその辺の百均より品ぞろえが豊富なので俺もよく利用している。
「それでは次に行きます!」
次に来たのは図書室だ。ここには3万種類の本が収められており今なお増え続けている。漫画やライトノベルといったオタクっぽいものから地図、料理本とか実用性のある本まで何でもそろってる感がある。
しかも数台ではあるがパソコンがあってネットワークに接続することが出来る。まあパソコンならコンピュータールームに大量にあるけど図書室の方が教室から近いのでこっちに来る生徒も多い。
「あ、この本知ってる」
「これ読みたかった本だ」
中学生達は早くも図書室の仕組みを理解しやがった。ここって本を並べてる順を覚えなければお目当ての本を見つけることは難しいのだ。俺も1ヵ月かけて何とかすべて覚えた。
次は音楽室だ。ここには様々な楽器が置かれている。例にもれず防音の部屋なので秘密の話をする時にうってつけだ。
ここでは特に特色とかないのでさっさと次に行こうか。
次は家庭科室だ。ここには調理器具が揃っている。俺も何度か使ったことがあるがかなり便利なのだ。コンロとか最新型だしな。
特色といわれてもかなり難しいのだが強いてあげるとするなら家電をすべて太陽光発電でまかなってるところだと思う。それだけではなく風力発電に水力発電もある。
しかも冷蔵庫には常に何かしらの食材が入ってるらしい。これは家庭科部の人が言っていた話だ。さすがに常には言いすぎであろうがかなりの高確率で食材が入ってるのだろう。
次に向かったのはVTR室だ。ここは水曜日にやっている映像の授業のためだけに用意された部屋だ。それなのにかなり機材が揃っている。
こんな光景を見ているとこの学校って金持ってるよなと思ってしまう。ともかく照明器具とかがここでは簡単に手に入るので校内合宿とかする部活動に大人気だ。
けどさ。なんか用途違くね?この照明って多分ライティングに使う用なのに普通に照明として使われてんじゃん。これなら普通に懐中電灯買えよとか思ってしまう。
「カッコいいな」
「ああ。ここで映画とか撮ったりするんだろうな」
感動している中学生には悪いが結構時間が押してきてるのでさっさと次に行きましょう。
次は生徒会室だ。正直、ここに1番金をかけてるんじゃないかと思う。完全に私室みたいになってるし。シャワーとかもついている。トイレも備え付けられていて少量だが食料も水もある。なんだかここに閉じ込められても生きていけるようにといった感じになっている。
次はコンピューター室だ。ここは40台ぐらいのパソコンがある。情報系の授業の時に使うことが多い。だが教室からかなり遠いので授業以外で使う生徒は少ないので意外に穴場かもしれない。
「中学にもあったな」
「ああ。ここは普通っぽいな」
なんと冷めた中学生だ。まさかこれだけのパソコンを目にしてテンションが上がらないとか何考えてるんだ。
それじゃあさっさと次に行こう。あまり興味を示してなかったみたいだしあそこにとどまり続けるのはもったいない。
次は体育館だ。ここには体育館系のものが大量にある。主に室内系のものだけだが。例えばバスケットボールとかマットとか卓球台とかだな。
ここは避難所にもなっており毛布とか寝袋まで置いてある。想定的には1000人くらいは収容できそうな大きさである。
体育の授業では2クラスか3クラスが一緒に使うことが多い(雨限定)。晴れた日には学校から出たところにあるグランドで体育を行う。外でやるスポーツ用品はすべてこっちにある。
これで大体回ったかな。取り合えず先生には7か所ぐらいは回れといわれてたからすでにノルマはクリアしてるけどな。時間的にも結構良い時間帯だな。
「それでは最初に集合していた中庭に戻りたいと思います!しっかりついて来てください!」
俺は中庭に戻ってきた。ここで俺達の仕事は終了だ。ここからは中学生と話すなり用事を済ませたり帰ったりと行動がさまざまである。
俺は一応生徒会役員なので最後まで残ろうとは思っている。かなりめんどくさいけど副会長より先に帰るのは何か負けた気がして嫌だしな。
俺は残りの時間を迷子になっている人がいないか捜して過ごした。この学校はかなり入り組んでおり注意していても迷子者が続出する。
例えばトイレに行ったすきに次の場所へ行かれたりちょっとゆっくり見て回ってたらいつの間にかはぐれていたりとかな。定期的にそういう生徒がいないか見回ってはいるはずだけど人手が多いことに越したことはない。
『これで今日のオープンキャンパスを終了いたします。お気お付けてお帰り下さい』
いつの間にか終わったようだ。俺は荷物をとりに行く。スッタフを示すバッチみたいなのは既に返しているのであとは帰るだけだ。
「零君。お疲れさま」
校門には美咲が待っていた。
「そっちもお疲れ」
「それにしても驚たよ」
「何が?」
「零君って妹いたんだね」
「は?」
俺は素っ頓狂な声を出した。




