なぞなぞの物語
一時の休息を手に入れました。
きっとまたすぐに忙しくなるんでしょうけど来週は普通に更新できそうです。
6月23日(火)
俺はいつも通りに学校に行く。日曜はいつも通りに休めたし月曜日もトラブル等は起こらなかった。
「毎日がこうだと良いんだけどな」
思わず呟いてしまう。入学してからまだ2ヶ月とちょっとが過ぎただけだというのに相当数のトラブルに巻き込まれてるイメージがある。
まあ、もう少しで夏休み前の最後の敵、期末テストがやってくるわけだからトラブルが起こらないようになるのも無理はない。
というか気づけば夏休みまで1ヶ月をきっている。早く夏休みになんないかな。
「おはよー零君」
「おはよう美咲」
話しかけて来たのはクラスメイトの桜美咲だ。彼女はクラス内でも人気がある。
「どうしたの?心の中で私の紹介をするなんて……」
「こんなにゆっくり出来るのが久しぶりだからな。人物紹介をやっておこうと思ってな」
「けどさ。そんなことしてるとまたトラブルに巻き込まれるんじゃない?」
「なぜだ?」
「だってさ人物紹介してる時点で何か起こると言ってるようなものじゃない?」
「どういうことだ?」
「だって何もなかった日って時間が飛ばされてる感覚がするんだよね」
「そういえば……」
俺は思いっきり倒れ込んだ。そして四つん這いの格好になる。ということはこの後になにかトラブルが起こることは確定だというのか。
「おはようございます」
この声は森!やばいな。トラブルを起こしそうな奴がいきなり出てきやがった。
「おはよう」
俺は挨拶をし森から離れる。するとなぜか森が俺の後を追ってくる。
「ちょっと待ってくださっても良いんじゃないですの!?」
「なんだよ?」
「実は一昨々日に逢坂さんが出されたなぞなぞが面白くてわたくしはまってしまいましたの」
また余計な趣味に目覚めやがって。なぞなぞは暇な時にやる物であってこんなそろそろ期末テストを意識する時期にやるものじゃないだろう。
それになぞなぞ対決な展開はついこの間にやったばかりだろ!そういうのはもう少し間を開けて3学期くらいにやるものだろう。
「それで?」
「わたくしがなぞなぞを出しますから答えていただければ……」
「さよーなら」
俺は逃げ出した。今回のトラブルはこれか。
「逃げないで下さいまし!?」
後ろから森が叫んでいるが俺は一目散に逃げていった。今日の授業はサボろうか。教室に戻ると森に捕まりそうなイメージしかないしな。
「で、なぜここに来たのですか?」
そう言いながらこちらを半眼で睨んでくるのは会長だ。会長の本名は七草御影。会長は珍しい銀髪の持ち主だ。
「いや、隠れるならここかなって思って……」
「逢坂君は最近、生徒会室を都合の良い隠れ家と思ってませんか?」
「そんなことは思ってませんよ」
まあ、実際は思ってるけど。生徒会室って生徒会役員しか入れないからほとんどの人が入れないんだよね。だから良い隠れ家なんだよ。
「本当ですか~?」
会長が俺を訝しんでる。なぜた。心の声が聞こえるとでもいうのか?
「本当です」
言葉では何とでも言える。これで諦めてくれよ会長。
「分かりました。信じましょう」
さすがは会長だぜ。なんだかんだ言って会長は甘いからな。まあそのおかげで生徒会室を隠れ家として使えるわけだけどな。
「会長、こっちの書類ですが……お前は……」
「げっ。天野雷斗」
「先輩を呼び捨てにするとかいい度胸じゃねえか」
天野雷斗が俺につかみかかってきた。く、苦しい。こうなったら仕方がない。俺は天野雷斗の足を思いっきり蹴った。
「いってぇ!」
天野雷斗は俺を離して足を押えている。どうだ。これが俺に楯突いた罰だ。
「逢坂……お前……」
なんか天野雷斗の怒りのパロメーターが急上昇している。まあ後輩にここまで馬鹿にされたのだから仕方がないか。俺でもブチ切れそうだし。
「じゃあ俺はこれで……」
生徒会室から出ていく。時間はチャイムが鳴る5分前だ。俺は森に見つからないように教室へ入った。チャイムが鳴り教師が入ってくる。
森の席を見ると森はこちらを見て歯噛みしていた。ああ、これは完璧にロックオンされたな。こうなったら2カ月くらい前、生徒会室に行こうとしてた時以来の森と俺の戦いになりそうだな。
あの時は休み時間中は完璧に防がれててその日は会長に会うことが出来なかったんだよな。あれは俺の完敗だった。
だからこそ今日リベンジマッチだ。今日1日森から逃げおおせて見せる。なんか俺って逃げてばっかだよな。まあ暴力は振るえないし対抗策もまったくと言っていいほどないからな。
まずは1時間目が終わった後の休憩時間だな。俺はSHRの間ずっとどうやって逃げるかを考えていた。SHRが終わるとそのまま1時間目の授業となる。
そしてあっという間に1時間目が終わり俺のリベンジマッチ第1Rが開始される。
俺はチャイムが鳴ると同時に教室から出ていく。俺に続くように森が教室から飛び出してきた。森め。あくまで俺をターゲットにしようってか。
だが今日の俺は本気モードだぜ。1段ギアを上げ森を突き放す。そして空き教室に隠れてやり過ごしたりして第1Rを勝利で飾った。
だが以前の森は俺を1日完封しきってるからな。たった1勝で喜んでいるわけにはいかない。次は2時間目が終わった後の休憩だ。
2時間目が終わると俺はさっきと同様に教室を飛び出す。今度は森は追ってこなかった。諦めたのか?しかしそう思わせといて戻った瞬間確保されるかもしれない。教室に戻るのは無しだ。
ならどこに行こうか。生徒会室は読まれてそうだしなにより天野雷斗がいるので却下だ。だとしたら俺がめったに行かないところとかかな。
まずは音楽室かな。図書室というのもあるが図書室は昼休みと放課後しか開館してくれてないからな。俺は開けっ放しになっている音楽室に入る。
音楽室は授業で使うので高い可能性で開けっ放しになってるのだ。しかも大きな楽器を置いてあるのも音楽室で人1人くらいなら楽に隠れることが出来るのだ。
「ここなら森もわからないだろう」
俺は楽器の陰に隠れズボンのポケットに入れていた小説を読んで時間をつぶす。休み時間が残り3分となった時に森がやってきた。
馬鹿な。なぜわかったんだ!?俺はチャイムが鳴るのを息をひそめて待った。森は順に楽器の裏まで捜している。
これは森が俺を見つけるかチャイムが鳴るのが先かの勝負だな。森が2つとなりの楽器の裏を探す。残りは1分を切っている。
頼む。早くチャイムよなってくれ。祈る思いで体を縮こまらせると祈りが通じたのか森が俺の隠れている楽器の裏を見ようとしたところでチャイムが鳴った。まるでアニメみたいな展開だな。
とりあえずこれで第2Rも勝ったわけだが早くもピンチになっている。これは第3Rあたりが正念場だな。ここで森の予測を読み切れれば最後まで逃げれそうだ。
2時間目はずっと逃走場所を考えていたが無情にも3時間が終わった。俺は教室を飛び出した後、森が教室から出ていくのを見届けてから教室に戻った。
これが俺の秘儀最初にいた場所に戻るだ。まさか俺が自分の教室にいるとは思わないだろう。
「零君は何をやってるの?」
「森から逃げてるんだよ」
「なんで?」
「リベンジマッチだ」
「リベンジマッチ?」
「美咲は覚えてるか?ゴールデンウィーク直後の森との激闘を」
「ああ。そう言えば零君が生徒会室に行こうとして森さんがそれを阻止したんだっけ」
「そうだ」
美咲はまあ頑張ってといい残し自分の席に戻っていった。くそ、美咲は俺達の激闘に興味がないのか?これは歴史的名勝負だろう。
2009年のWBCの決勝と同レベルの名勝負だろう。なんで誰も注目しないんだろうな。
◇
ついにやったぞ。現在は放課後。後は森に見つからず帰れば俺の勝ちだ。あの時の借りを返すことが出来る。
結局昼休みと5,6間の休憩時間は図書室と2度目の音楽室に隠れることによってやり過ごした。森は図書室は読んでいたようだが高校の図書室というのは意外に大きい。俺が森の様子を見ながら隠れる場所を変えれば見つかることはない。
2度目の音楽室はそもそも読まれなかった。そのため余裕で逃げ切った。
「おっと……」
廊下の角に隠れる。森を見つけてしまった。森は俺から離れるように廊下を歩いている。これなら問題なく帰れそうだな。
「逢坂さんはわたくしのことが嫌いなのでしょうか……」
森がそんなことを呟いてる。それを聞いて俺は自分で勝利を手放してしまった。
「森、そんなところで何してるんだ?」
「逢坂さん……」
「今日のことはさ……悪かったからさ……ぞなぞの問題出してみろよ」
森ははじけるよな笑顔を浮かべた。
「はい!」
俺達は教室に戻って向かい合っていた。他のクラスメイトは部活やら帰宅やらで教室内には残っていない。完全に2人きりだ。
「あの……1つ聞いてもよろしいですか?」
「なんだ?」
「どうしてわたくしから逃げたのですか?」
「森はゴールデンウィーク直後のことを覚えてるか?」
「一応は……」
「それで俺はお前に完敗してるんだよ」
「わたくしが逢坂さんに勝ったんですの?」
「そうだ。森からしたら勝負ですらなかったのかもしれないけど俺からしたら屈辱の完敗だったよ」
「ちなみにどういった勝負で……?」
「俺が生徒会室に行こうとしたのを森に全部邪魔された」
「それは……あの時は会長に迷惑をかけようとする人だとばかり思っていたのですわ。けれどあの時は申し訳ありませんでしたわ」
「別に怒っちゃいないさ。ただ森に負けたのが悔しくてリベンジしようと思っただけだ」
「そうでしたの。でしたら私が出すなぞなぞを解いたら逢坂さんの勝ちになりますわよね?」
「そう言えば……」
初めは面倒事に巻き込まれたくなくて森から逃げ回ってそれがいつしか森にリベンジだってことになっちゃってたのか。
というかリベンジしたいんなら最初からなぞなぞを解けばいい話だったんじゃないか。
「逢坂さんてたまにドジなときありますわよね」
「まあそれは俺も人間だしそういうときもあるさ」
「ですわね」
「それでなぞなぞ出すんだろ?」
「そうでしたわね。では第1問ですわ。パンはパンでも食べられないパンは?」
「フライパン」
「せ、正解ですわ」
なんかメッチャ簡単じゃね。これってなぞなぞの初歩の初歩だよな。
「というか簡単じゃないのか?」
「そうなんですの?メイドの花蓮に問題を出した時は解けなかった問題なんですけど……」
花蓮っていうと森を屋敷まで送り届けたときにいたメイドさんのことだっけか。あの人ドジそうだったしまともに解ける問題がないのではないだろうか。
「ちなみにメイドさんはなんて答えたんだ?」
「腐ったパンですわ」
これまたありがちなミスだよ。いるよね~。腐ったパンって答えるやつ。そういうやつは大体クラスでも成績で最下位争いをしてる奴なんだよな。
「ほかに問題はないのか?」
「ではカキはカキでも火事の時に役立つカキはなんですの?」
「消火器だろう?」
「せ、正解ですわ。おかしいですわね。花蓮が答えれなかった問題ですのに……」
「答えれた問題もあるのか?」
「当然ですわ」
あのドジっ子っぽいメイドさんですら答えられるなぞなぞってどんだけ簡単なんだろうな。
「どんな問題出したんだ?」
「ある国の独裁的な王は新しいもの好きで、何でも国で1番先に手に入れ使用したがるのですわ。まだ誰も使っていない時に自分だけが使っている状態を作り出すために国民に『私が新しいものを買ってから1ヵ月間は、絶対にその品物は買ってはいけない』というお触れを出したのですわ。自転車も洗濯機も冷蔵庫そうしたのですが、ある物だけは自分で買った後すぐに、ほかの人にも買え買えと勧めたらしいんですの。そのある物とは何ですの?」
「は?」
問題文が長い上に難しくね?全くわかんなかった。この問題を森家のメイドさんが解けただと。なぜだ。
「花蓮が解けた問題ですのに逢坂さんはわかりませんの?」
「うぐぐ……まいった。降参だ」
俺は両手を上げて降参の意を示す。するとこれでもかとドヤ顔をサムズアップしてくる。なんか腹立つな。
「それで答えはなんなんだ?」
「電話ですわ。電話は1人じゃ使えませんので」
「なるほどな」
家電関係だったからメイドさんが解けたのかな。だが俺が解けなかった問題をメイドさんが解けたのは事実。今日のところはメイドさんに勝ちを譲ってやろう。
「逢坂さん。今日はありがとうございました」
「別に……俺も意外と楽しめたし」
「またお相手してくださいね」
「俺でも解けない問題を探し出せたらな」
そう言って別れる。俺はそのまま寮へ帰ってきた。
なんかシリアスっぽく言ってるけど結局は明日また教室で会うんだろうな。
そんなことを考えながら眠りについた。
運動能力が3下がりました。学力が1上がりました。




