プール掃除の物語 後篇
お久しぶりです。
東北結構楽しんできました。
それでは本編をどうぞ。
2人が気絶した直後に水着に着替えて掃除道具を持った女性陣が出てきた。どうやらここまで遅くなったのは掃除道具を取りに行ってたからのようだ。
ここは学校のプールなので学校指定のスクール水着であったが美人が並ぶと爽快な景色である。というか男子2人が早くも使い物にならなくなったんだけど……。
「逢坂君。おまたせ」
「あ、はい。全員よく似合ってますね」
「ありがとう零君」
「当然ですわ」
みんな嬉しそうなので良しということにしよう。しかしこれは由々しき問題だよね。掃除進行度0パーセントで男子2人が脱落。
残った男子は俺1人。女性陣にこの汚いプールを掃除させるのも気が引ける。せめて汚水を全部流してからじゃないと。
そのためにはオタマジャクシとか苔をある程度取り除かないと。この作業を俺1人で?無理じゃね?
「逢坂君。ちょっと待ってて」
会長はそう言うと男子2人の方に歩いていった。ものすごく嫌な予感がする。
その予感を裏切らず会長は残念野郎と小林の生徒会役員を汚水プールに投げ入れた。しかも恵たちも協力してたので割と派手に投げ入れた。
「うわっ!汚い!」
「助けて!溺れる!」
男子2人は目を覚まし溺れている。ちょっ。これはマズくないか。絵面とか道徳的に。
「このプールを2人で掃除してくれるなら助けてあげますけど?」
脅したー!まさか覗かれたことを根に持ってるのか?しかも誰も止めようとしないし。これはそもそも止めれないよね。
「分かった。やるから助けてくれ!」
「潔くて良かったです」
会長は男子2人に向かって浮き輪を投げた。あの救助用のひも付きの浮き輪だ。男子2人はその浮き輪に捕まって何とか助かったが若干怯えてる。
あの無駄に高スペックな副会長はどこ行ったんだろう。初対面でキャラ崩壊がおこってるんだけど。せめて残念野郎からワンランクアップでチワワと呼ぶことにしよう。
どこがワンランクアップかは分からないけど。とにかく俺は完全に蚊帳の外だ。男子2人は汚水プールに入って掃除をしている。
先ほど投げ入れられた時と違って自分から入ってるので溺れるということはない。それにもともと足がつく深さに作られてるわけだからな。
俺は少し肌寒さを感じバスタオルにくるまる。あれって結構あったかくなるんだよな。初夏のプールの授業とか寒くて大変だったからな。
「お手間を取らせてスイマセン」
「俺は何もしてないけど」
会長が話しかけてくる。しかし何を言ってるのかわからない。本当に俺は何もやってないのだ。
「ちゃんとあの2人の犯罪の証拠をカメラに収めてくれたじゃいですか」
「まあそれはそうだけど……」
「説得が楽でしたよ」
そう言って俺の携帯を取り出した。え?携帯は男子更衣室に置いてきたハズなのに。なんでこんなことになってるんだ?
「男子更衣室から持ち出させていただきました」
「ちょっ!何やってんの!」
というかいつの間に。全く気付かなかったぞ。道理であの2人があっさり従ったわけだよ。というかこれって俺が恨まれたりするパターンじゃないのか。
ただでさえ敵意むき出しでこられたのにこれ以上悪化させてどうすんだよ!あ~やばい。何されるか皆目見当もつかねえ。何されるかわかんねえってのが本当に怖いんだよな。
「本当にスイマセン。こうでもしないとあの2人手伝わないですから」
「もしかして覗かせるのも計算の内だったとか?」
「はい。それも含めてお待たせしてすいませんでした」
すべて仕組まれていたというのか。確かにあの2人のことをよく知ってたら絶対成功する作戦ではあるが。いったいいつから仕組まれてたんだろうか。
というか話を聞けば聞くほどチワワのダメなところが露見していってるぞ。ああ見えて欠点だらけじゃねえか。性格的に。
今も掃除を見ている限りは能力は高いんだけど性格に難ありって感じなんだよな。というか俺達は何もやってないけど大丈夫なんだろうか。
恵と愛さんでチワワと小林の見張りをしている。美咲は隅っこでバスタオルにくるまって読書をしている。奏ちゃんと森はお菓子を食べている。
「あれ?あのお菓子って……」
「男子更衣室にお菓子も置いてあったから持って来たんですよ」
てことは今日俺が買ってきたお菓子ってことじゃないのか。遠目から見る限りはまだまだお菓子は残っているがいつなくなるかわかんねえぞ。
「あれ。俺が買ってきたお菓子だったんですけど……」
「す、すいません」
「初めからみんなで食べようと買ってきたものだから良かったもののちゃんと確認してくれよ」
「これから気をつけます」
しかしまああの2人は良く食べるな。まだ2時くらいなんだけど。おやつの3時まであと1時間もあるんだけど。
「おい。終わったぞ」
「これでいいんだろ?」
チワワと小林が汚臭を放ちながら目の前に立っていた。その手にはオタマジャクシを捕まえたのであろうビニール袋を持っている。
「ご苦労様。これから水を抜きますので少し休憩しててください」
「当然だ!」
そう言ってシャワー室へ歩いていった。当然のごとく臭いを落とすためだろう。俺はバスタオルを羽織ったままプールをのぞき込む。
水がだいぶ少なくなり底が見えてきた。苔は壁だけのようで底まで及んでいない。それでもところどころに汚れは見える。
「まあこれなら掃除できなくはないか」
水がなくなりここからはブラシを使っての掃除となる。汚れがたまってることもありプールに入るには細心の注意を払わなければならない。
「みんな気をつけろよ」
…………。
あれ?返事がない。ただの屍のようだ。じゃなくて誰も返事してくれないとかひどくないか。俺が文句を言ってやろうと思って振り向くと誰もいなかった。
全員逃げたってことはないよな。掃除道具はそのままほったらかしにされてるけど。でも先ほどまであったお菓子もきれいに片づけられている。
え、マジで帰りやがったのか?いやいやあいつらに限って俺をほったらかしにして帰るわけないよな。きっと全員が急にトイレに行きたくなったとかそんなんだよな。
決して忘れられたわけじゃないよな。俺1人に掃除を押し付けたってこともないよな。
本当に大丈夫かな。なんか不安になってきた。
とりあえず不安を呼び起こさないためにも何かに熱中しておいたほうがいいかもしれない。ここで熱中できることといえば掃除しかない。
そ~っとプールの中に入って水道につないだホースで水撒きだ。それだけではない。右手にはホースだが左手にはブラシだ。
これぞプール掃除の二刀流。右手のホースで水をまき、左手のブラシで磨いていく。完璧なコンビネーション。
「けどこれしんどいな」
そう片手で磨いてるので通常の2倍磨かなくてはいけないのだ。ただでさえしんどいプール掃除だ。それを1人でやろうとしたらどうなるかは一目瞭然だというのにな。
まあ体を動かしてる分だけ暖かくなってバスタオルを羽織らなくてもよくなったのは良いことだと思うけど1人は寂しいよ。
「あれ零。もう掃除始めてたの?」
話しかけてきた恵は水着姿ではなかった。体操服を着ていたのだ。
「他のみんなは?」
「まだ着替えてるよ」
どうやらみんなは着替えに行ってたのか。そうだよな。俺を置いて帰るなんてことないよな。それに今日って水着姿だとちょっと寒いしな。着替えるのは当然だよな。
「貸して」
「どっちをだ?」
「う~ん。じゃあホース」
恵にホースを手渡す。恵はホースを受け取ると水撒きを始めた。俺は恵が水を撒いたところを重点的に磨いていく。
そうして少しだけ掃除が効率よくできるようになってきたときにほかのみんなも体操服に着替え終わり援軍としてやってきてくれた。
「零さん頑張りますね」
「恵ちゃんも頑張ってるね」
「お待たせして申し訳ありませんわ」
「零君。すまないね」
「逢坂君。ありがとうございます」
「話すのはあとでいいから先に掃除を終わらせようぜ」
そこからは早かった。みんなで協力して磨いて途中少し休憩も挟んだりしてわずか2時間で掃除を終わらせることが出来た。
時刻は16時。綺麗になったプールを見ながら俺は頷くのであった。いろいろあったけど何とか掃除を終わらせることが出来たしな。
「そう言えばあいつらは?」
思わず呟きあたりを見渡すがあいつらの姿はない。そうあの副会長ことチワワと小林だ。あの2人がシャワー室に行ったのを見たきりだ。
あいつら逃げやがったな。まあいいか。あとであの覗き写真をネット上にでもアップするか。それとも俺が1度やられたように新聞部に持ち込むのもアリだな。
なんて黒いことを考えてるとみんなが水着姿になって戻ってきた。なんで16時からと思うかもしれないがそれは10分前くらいにさかのぼる。
◇
「さて掃除も終わったし帰ろうか」
「「「え?」」」
俺が帰ろうかと提案するとみんなの動きが止まった。なんでそこで“え?”とか言うんだよ。もう16時だぞ。プールに入るには遅い時間帯だろう。
帰ろうとすることのなにが悪い。大体、掃除が終わった後に遊びたかったのなら朝から掃除を始めるべきだったんだよ。
「零君。帰るんなんて嘘だよね?」
「そうですわ。せっかく貸し切り状態ですのよ」
「マジだよ。明日も休みとはいえ疲れたし」
なんかみんなが驚愕している。俺、別に俺、変なこと言ってないよね。
「零。遊びましょうよ」
「そうだよ。こんな機会もうないかもしれないんだよ」
「ここで帰られたら逢坂君を呼んだ意味がなくなるので遊びましょう」
「分かったよ。けど時間も時間だからちょっとだけだぞ」
◇
という出来事があり遊んでから帰るということになったのだ。それにここで遊んでおけばチワワと小林が掃除だけして帰ったことになるからね。
そういう当てつけみたいな打算も含めて遊ぶことに決めたのだ。さっそく軽く準備運動をしてからプールに入る。
「寒い……」
まだ6月。夏に入ったといってもプールに入るには少し早い時期だということはわかっている。時間的にも気温が昼より下がることも分かっている。
それを承知でプールに入ったのだけど実際に入ってみると後悔するくらいに水が冷たかった。とりあえず少しでも体温を上げるために軽く泳ごう。
10メートル泳いだところで飽きた。そうだった。俺、泳げなかったんだった。ゲーム内だし行けるかなと思ったけど泳げなかった。
けど10メートルとはいえ泳げたのは成長の証ではないだろうか。俺はそう思うことにした。
「零君が泳げないなんて意外だね」
「泳げなかったんですのね」
「私からしたら見慣れた光景だけどね」
「道理で私が海に誘っても来なかったわけだ」
「そう言う理由があったんですね」
うるさいな。完璧な人間なんていないんだよ。誰かしら欠点があるんだよ。
俺達はその後、暗くなるんで遊び続けた。俺としては1時間ぐらいで帰るつもりだったのに19時まで遊んでしまった。
しかも校長先生が時間を教えてくれなかったらもっと長いこと遊んでいただろう。
まあ遊びというよりは泳ぎの特訓になってたけど。そのおかげか50メートル泳げるようになったけど。遊びって雰囲気じゃなかったよな。
まあこれで水泳の時間が憂鬱にならずに済む。運動神経が良いゲーム内では50メートルでも相当なものだし現実世界で水泳のテストをする時のMAXラインである200メートル泳げるようになるのも時間の問題だろう。
全員が着替え終わり校門に集合していた。時間は19時半過ぎ。もうすぐ20時になろうかという時間帯だ。
「あー今日は楽しかった」
「そうだな」
「ねえ。今日はこのまま全員で何か食べに行かない?」
恵が外食を提案する。確かに今から帰って晩飯の用意をするのは嫌だし理に適ってると思うな。
「良いですわね。わたくし外食というものに憧れてましたの」
「そうですね。けど生徒会長としては生徒だけってのはやめてほしいです」
「なら私がいれば問題ないだろう」
「「「校長先生!」」」
全員の声が被った。というか校長もついてくる気かよ。まあ大人がいたほうが助かるのは事実だけどさ。というか何気にこのゲーム始めてから外食って初めてだわ。
「それでどこ行くんだ?」
「この辺だとラーメンが上手いぞ」
と校長。
「中華とかも良いよね」
と美咲。
「わたくしはなんでもかまいませんわ」
と森。
なんでもいいなら喋るな。そして中華vsラーメンという対決となった。ラーメン派は校長、奏ちゃん、愛さん。中華派は美咲、恵、会長。中立が森と俺。
「まったくの互角だな」
俺はそう呟いた。




