黒歴史の物語
夏休みが終わり執筆作業が遅れがちでやばいですわ。
けど頑張ります!
6月16日(火)
俺はいつも通りに登校する。そしていつも通りに勉強しそして帰る。そんな当たり前の毎日だと思っていた。
しかし平穏というのはすぐに崩れる。そう実感させられた。
今朝まではまったくのいつも通りだった。いつも通りに起きて、いつも通りに朝食を食べ、いつも通りに準備をしていたのだ。
当然、学校でもいつも通りだと思っていた。俺が学校であるものを目にするまでは。
時刻は8時25分。生徒のほとんどはすでに登校し友達と話すなり、今日提出の宿題をあわててやっていたり、寝不足から机に突っ伏して寝ていたりしている時間帯だ。
俺はもう10分以上正門のところで固まっていた。そして誰もがそんな俺を不審な目で見て、その後にあるものを見て納得顔で校舎内へ入っていく。
いつもは空気を読まずに話しかけてくる美咲たちも気の毒そうに見て去っていく始末である。ただ、元凶である奏ちゃんだけは俺の事をずっと待っていてくれた。
30分になりチャイムが鳴り響く。俺は無気力ながらも教室へ足を運んだ。そんな俺を心配そうに見つめながらも自分の教室へはいっていく奏ちゃん。
いつもならチャイムが鳴った後に入ってきたやつは遅刻だと威張り散らす先生も今日だけはオマケしてくれた。そして誰もが俺の顔を見てはヒソヒソと話し始める。
何でこんなことになったんだ。いや、原因も犯人も分かっている。それでも現実から目をそらしたいほど状況は最悪だった。だって学校中に知れ渡ってるのだから。
「零君、元気だしなよ」
「そうは言ってもな……」
「1時間目が終わったら七草先輩か八戸先生のところに行こう?」
「ああ。そうだな」
美咲が何とか励まそうとしてくれるが今の俺には無意味である。それほどまでに俺の心はズタズタにされた。このバーチャル人生ゲームを始めてから初めてログアウトしたいと思ったほどだ。
ログアウトならやろうと思えばいつでもできるがここでログアウトするともう二度とこのゲームにログインしなくなりそうだったので何とか踏みとどまってるのである。
このゲームはオートセーブなので直前からやり直すは使えない。リアルタイムに連動もしてないのでログアウトしてしばらく置いておくという方法も使えない。
ここで有効な対処方法は設定を変更することだ。しかし今は試運転という名目でこのゲームをプレイをしてる為、設定を変更できるのは愛さんと社長のみである。
社長は最近まったく見かけないし、愛さんはデータを取るとか言って協力してくれなさそうなので自力でこの問題を解決しないといけないわけである。
犯人と原因が分かってるなら犯人に何とかしてもらえと思う人もいるかもしれないが、事態は犯人でもどうしようもないところまで来てしまってるのだ。
この事態を打開できるのはこの学校で権力を持っている生徒会長である七草御影先輩と校長である八戸夜桜先生である。
しかしこの2人は最終兵器と呼べるものだ。この2人に協力してもらえばこの問題は解決できるであろうが俺の印象力がダダ下がりになる可能性が高い。まあ現時点でダダ下がってそうなものだけどもステータスに変動はないので無事な可能性が高い。
俺は授業を受けながらもなんとか打開策を考えようと頭をフル回転させたが良作は実らなかった。そればかりか頭に浮かんでくるのは校門にあったあの校内新聞である。
もうごまかしようがないので白状すると校門にあったあるものとは校内新聞の事である。校内新聞を見るとまず目立つのは『逢坂零、紅白戦で3安打3打点の大活躍!大番狂わせの1,2年連合の勝利!』とでかでかと書かれた記事だ。
これだけなら良かった。何も問題なく追われたんだ。しかしその後が良くなかった。その後には『校内注目度急上昇中の逢坂零の意外な過去』と書かれた記事である。
そして内容と言えば俺が中学時代に中二病で高校デビューだった、と書かれてるのである。そう先日の台風の日に奏ちゃんがタクシー代を手に入れるために男子連中に売ったという俺の黒歴史である。
しばらく動きがなかったので助かったと安心したのが間違いだった。まさか校内新聞に載せてくるとは。予想の斜め上だよ。大体実年齢から何年前の話だよ!?
そんな昔の話盛り返すなよな。思い出すのも嫌なんだよ。封印した記憶なんだよ。無断で封印を解くなよ。心に多大なダメージを負うんだよ。
しかもデマだと言えない状況に持って行かれたのだ。具体的には中二病時代を知っている翔とか後輩君とかの証言である。あいつら裏切りやがって。
さらにたちの悪いのが匿名希望者からの中二病時代の写真提供である。その写真というのが俺が黒いコート来て眼帯つけてたり、中二病ノート持ってたりとかなり恥ずかしい写真である。
というかあの写真どっから持ってきたんだ?現実世界の写真ってのはゲームに持ち込む方法はなかったハズだが。俺の思い違いだろうか?そんなことはないと思うんだけどな。
だとしたらゲーム内で撮影したか合成という可能性もあるし写真の出所を抑えるのは無理がありそうだな。そもそも俺はこの事態を鎮静化したいのであって写真提供の犯人を見つけたいわけじゃない。知っておくに越したことはなさそうだけど。
とにかくいきなりだが最終兵器に頼るしかないかな。おっとちょうどチャイムが鳴ったな。
「それじゃあ今日の授業はここまで」
そう言って教室から出ていく先生。俺はすぐさま教室から出ていき生徒会長室を目指す。美咲は追ってこようとする人たちの足止めを買って出てくれたのでお願いした。
俺は普通に生徒会室に入る。というより俺は忘れられがちだが生徒会長補佐なので生徒会長室の合鍵を持ってるのだ。なので俺が生徒会室にいることは何ら不思議ではない。
「逢坂君どうしたんですか?」
「会長、助けてください」
「何があったんですか?」
「校内新聞をご存じないんですか?」
「知ってますよ。逢坂君が活躍した野球部の試合ですよね」
「もう一つの記事の方です」
「逢坂君の過去ですか?」
「そう。それです!」
「あの記事が何か?」
「何か?じゃないですよ!あの記事のせいで俺に多大な迷惑が掛かってるんですよ!」
「ですがあの記事は本当の事を書いてると新聞部がおっしゃってましたし、二神君と三上君からも証言は取れています。それに写真も見つかっているのです」
「そういうことではないんですよ。本当だから困ってるんです」
「どうしてですか?」
そういえばこの人もうわさ大好きな人だったな。確か知り合うきっかけになったのも俺と恵が一緒に出かけてるところを見られて、それを会長が噂にしたのが原因だったもんな。
「いいですか?中二病だったという過去は俺にとって消したい記憶であり誰にもばれたくない記憶なんですよ」
「ですが逢坂君が中二病だったのって中学2年生の時なのでしょう?中ニの時に中二病だったのならセーフなのではないんですか?」
奏ちゃんと美咲と同じことを言うとは……。確かに中二病の時なら大丈夫だろ。俺は至高の存在だとか孤独の戦士とか言っとけば大丈夫なんだろうし。
ただ中二病を卒業した後に黒歴史を持ち出されると死にたくなってくるんだよな。心の深い傷になるんだよ。若気の至りにできないことなんだよな。
「全然セーフではないです。むしろアウトです。中二病とは黒歴史になりえるものであり、黒歴史とは決して他人にばれてはいけないものなのです!」
「逢坂君が言うとすごい説得力がありますね」
「分かってくれましたか」
よし。まずは生徒会長を仲間にしたぞ。これ以上ない最強の味方だな。お次は校長だな。あの人を味方に引き入れれば何とかなる!ハズ。
なんだかんだ言いながらも5年この高校で校長やってるからな。発言力というものはなかなかのものだろう。
現に少し前に校長権限で公欠扱いで学校を1日休めたしな。先生には病気と伝わってるはずだからな。だが通知表には病欠はないという素晴らしい結果になりましたしね。
「逢坂君。協力する代わりに中二病だった逢坂君を見せてくれませんか?」
「嫌です。そもそも動画とかありませんし」
「なら今ここで見せてください」
「今、ここでですか?」
「ここでです」
ものすごい笑顔で言われた。ヤバいぞ。逃げ場がない。この事態の解決には会長と校長の協力が必須。しかし会長を協力させるには中二病を今ここで再発させなければならないだと!?
なんという拷問。いや、死刑に等しい罰だろ。そこまでして俺を社会的に抹殺したいのか!?それとも俺をぼっちにするのが狙いか!?
俺は膝をついた。どうするどうするどうする!?中二病を再発させるのか!?だがそうしないと会長の協力は得られない。それにここでなら会長以外には見られない。被害を最小限に食い止められるだろう。
「分かりました。やります」
「わぁ~」
会長は拍手をしている。やめてそんな期待しないで!?俺のはかなりひどいから。中学の時周りから超ドン引きされるレベルだから。
オホンと1度咳払いをする。
「我は煉獄の業火に焼かれた堕天使ルシフェール様の末裔であり、この世に混沌をもたらすものなり。我はこの世界を変革するためにやってきたのだ」
「逢坂君?」
「我を止めたければ生贄を差し出せ。さすれば天界へと帰ってやろう」
「逢坂君?」
「それともこの世界が業火に包まれて滅びるのを黙ってみているつもりか。まあそれも一興だろう。我はこの手でこの世界を滅ぼし新たな世界を作り出すのだ。それがルシフェール様の悲願でありその末裔であり、この世に混沌をもたらす我の宿命なのだ」
「何かノリノリですね」
「うわあぁぁぁぁあ!」
頭を抱えてうずくまる。なんかまた暴走してたような気がする。あの中学の時みたいに誰もがドン引きするようなことを何度も言いまくってたと思う。
「逢坂君。そんなに落ち込まないでください。逢坂君は私の頼みを聞いてくれただけです。別に中二病なわけではありません」
「本当に?」
「本当です」
「そうですか。先ほどは見苦しい姿をお見せしてしまいました。ですがもう大丈夫です。それでは校長先生の所へ参らないといけませんので」
「逢坂君がこの上なく礼儀正しくなってます」
「それでは失礼いたしました」
俺は生徒会室を出ていき、校長室を目指す。生徒会室と校長室は意外に近いところにあるので誰にも見つからず校長室までたどり着くことが出来た。
「何か用かな」
「校長先生、助けてください」
「どうしたんだね。君が私に助けを求めるなんて珍しいじゃないか」
「校長先生は校内新聞をお読みになりましたか?」
「ああ。君の過去を乗せたというあの記事が原因か」
「さすがです校長先生」
「私にも経験があるからね」
「そうなんですか?」
「ああ。私の場合は光の女神とか名のっていたね。そしてこの世界の闇を浄化できるのは私だけなんだとか言っていたね。私としては苦い思い出だよ」
「光の女神とかないわー」
思いっきり棒読みで言ってやった。光の女神って。ファンタジー小説とかならいざ知らず現実でやったらただの痛い人じゃないか。まあここはゲームの中だけど現実に近いから痛い人に分類されるよな。
「ひどくないかい?私は君の苦しみを私が少しでも肩代わりしようと思って過去の苦い記憶を引っ張り出してきたというのに」
「それは……すいません」
「分かればいいんだよ。それで君のお願いというのは君の中二病騒ぎを何とかしてほしいってことかな?」
「そうです。さすが校長先生は話が早いですね」
「だろ?私を嫁に迎えるといいことあるよ」
「それは一旦保留で」
「なんでだよ!?」
「校長先生のお心遣いは嬉しんですけどやっぱり光の女神はないわ~って思いました」
「正直だね!?けど君だってルシフェールの末裔とか言ってたそうじゃないか?」
「うっそれは……」
「大体男子って悪にしとけばかっこいいとか思ってる節があるよね。あと不死とか覚醒って言葉に弱いよね」
「それを言うなら女子って女神とか光の~みたいに正義の方に行きすぎだと思うんですよ」
その後なぜか中二病談義になって行った。この話が終わったのは午後になっても授業に出ない俺を心配して校長室まで様子を見に来た時だ。どんだけ話し込んでたんだよ。
6月17日(水)
つまり翌日だな。俺が学校に行くと1枚の張り紙が貼られていた。その紙には『中二病は人によっては心に傷を追いますのでむやみやたらに言葉にしない様に心がけましょう』と書かれていた。
この紙のおかげか中二病と口にする人は少なくなったのでした。
印象力が3下がりました。




