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久しぶりの物語

予定より12時間ほど遅くなりましたが何とか書き上げました。

 6月12日(金)


 今日は晴天である。もうすがすがしいくらい晴れ渡っている。雲1つ無い。さて今日は本当の久しぶりに部活に寄ってみようか。もう誰も俺が野球部だってこと覚えてなさそうだけど。


 俺は前回に来たのがいつか分からないくらい久しぶりではあるがグランドにやってきた。運動能力自体は体育祭で上げたため深刻な被害になっていないが全体的にみると-5されている。何とかこの辺りを盛り返さないとまずいんだよな。


「オラァ!ちゃんと取れバカ!」


「ス、スイマセン!」


 以前に1度だけ見たことがあるような無いような奴がノックを受けていた。俺は体操服に着替え練習組に混じった。本当に久しぶりなのだが体育祭で知名度を上げたからか俺が野球部だと認めてくれてるらしい。


 キャプテンが打ったボールを取る。そして投げる。この繰り返しだ。野球をやってるのはまあ楽しい。けど花がないんだよな。誰かマネージャーとして入部してくんねえかな。主に美人さんが。


 今日は少しの練習の後、紅白戦をやるみたいだ。どうやら明日から予選大会が始まるらしい。メンバーは2,3年からで1年からは選出されてないみたいだ。


 せっかくの夏休みを野球に費やすというのも味気ないので良かったと思っている。別に選ばれなくて悔しいとか思ってない。本当だかんな。


 チームは赤がレギュラー組というか大会メンバーである。白が1年生とメンバーに選ばれなかった2年生の混合チームだ。俺は白の6番ライトで先発出場している。


 試合は9回までで延長は無し。先行は赤で俺達白は後攻だ。俺はライトの守備位置につきながら周りを見渡す。ちらほらと紅白戦を見てから帰ろうと考えてる生徒が見える。


 校舎の窓からは部活動をしている生徒が休憩時間の時とかに窓からのぞいてるようにも見える。ここの野球部って強かったけ?そしてこんなに人気だったけ?


 そんなことを考えてると1回の表が終わった。三者凡退だ。おいおいこんなので勝ち進めんのかよ。


 1回の裏の攻撃も三者凡退だ。俺はベンチから出番を待っていたがなかった。俺にチャンスを回せよ。そしたらレギュラー組に勝てるからよ。


 そんな傲慢なことを考えるとこちらに打球が飛んでくる。俺はすばやく落下点に移動してボールをつかむ。今のが3アウト目だったようで白チームがベンチに戻っていく。


 先頭打者がアウトになって5番がバッターボックスに入る。俺は準備をしながら周りを見渡してみると人が増えていた。うおっ!俺が驚いてる間に早くも2アウトになって俺に打席が回ってくる。


 2球見逃して1ストライク1ボール。3球目の甘い球を見逃さずに強振する。打球はセンターの前に落ちた。これで両チーム通じて初ヒットである。


「よし」


 一言そうつぶやく。これで2アウトながらランナー1塁。7番さん打ってくれよ。しかしそんな願いむなしく7番さんはアウトになり2回終わって0対0である。


「零君さすがだね」


「まあな」


「ところで守備しなくてもいいの?」


「ああ。行かなきゃ。って何で美咲がここにいるんだ!?」


「暇だったから遊びに来ちゃった」


「そうなんだ……」


 すでに白チームは守備位置に着こうとしてたので俺も慌ててベンチから飛び出す。3回の表も簡単に2アウト取ってバッターボックスには9番。


 完全に3アウトチェンジと考えてたのだがまさかのフォアボールで2アウト1塁。そこから1番にもヒットを打たれて1,2塁とピンチになった。


 しかし2番は三振で3アウト。なんとか無失点に抑えたのだった。とはいっても俺はただボーっと立ってただけのような気がするがな。


「なかなか点が入らないね」


「そうだな」


 試合は3回の裏、8番と9番が出てノーアウト1,2塁のチャンスを作ったのに1番がバント失敗、2番が外野フライを打ち上げて2アウト1,2塁になってしまったのだ。


 さらに3番も2ストライク2ボールと追い込まれてしまっている。そしてボール球を振らされての三振。はぁ、とため息をして守備位置に向かう。完全にバッテリーに手玉に取られてんじゃん。


 4回の表は2アウト3塁のピンチを迎えたが俺のファインプレーで切り抜けた。周りからは歓声が上がる。やっぱり女子にキャーキャー言われると元気出るな。男子にキャーキャー言われてもまったく嬉しくないけどな。


 キャーキャー言ってる女子の中に見知った顔を見つけたし全打席ホームラン狙うつもりで勝ちを狙いに行くか。まあ全打席ホームランとか無理だけど。


 気持ちだけは全打席ホームランでいいや。そっちのほうがモチベーションも上がるしな。そして4回の裏、今度は1アウト2塁のチャンスで回ってきた。


 やればできるんじゃん。そんなことを思いながら打席に立つ。初球を打ちにいったがわずかに切れてファール。2球目と3球目は完全にボールだったので見送った。


 これで1ストライク2ボール。4球目で捕手が後ろにそらしてランナーが進塁。1アウト3塁でカウント1ストライク3ボール。これは圧倒的に俺に有利じゃねえか。


 5球目、ストライクを取りに来たど真ん中のストレートを振り切った。打球はあと10センチでホームランというフェンス直撃の適時二塁打となった。


 これでまずは白チームが1点先制。よしよし。このままいけば白チームが勝てる。楽に勝つためにももう1点欲しいな。


 7番の打球はセカンドゴロになり俺は3塁まで進む。これで2アウト3塁。得点の大チャンスだ。バッターボックスにはさっき出塁した8番。


 2球目を捉えたがファーストの攻守に阻まれて得点ならず。あーおしい。


 5回の表は7,8,9の下位打線を三者三振に切って取った。あれはマジで圧巻だった。しかも得点直後の大事なイニングだったためこの三者三振は白チームに勢いをもたらしてくれる。


 5回の裏は9,1,2の上位に回る打順だったのだが3者凡退だった。相手の攻守に阻まれたので仕方がないと言えばそれまでなのだが攻守がなければもう1点くらいは入ってたかもしれないだけに悔しいな。


 6回の表はレギュラー人の上位打線。しかもこっちの投手は疲れからか球速が若干落ちている。ここさえしのげば投球練習している次の投手にバトンが渡せる。


 しかしさすがはレギュラー組というべきか疲れを見抜いて冷静にファールで粘りボールを見極め3者連続フォアボールでノーアウト満塁の大ピンチ。しかも打席に立つのは4番だ。しかも3ボールでもうボール球は投げることが出来ない。


 これは詰んじまったか?そんなことを考えてると大きな飛球がこちらに飛んでくる。俺は下がりフェンスによじ登りジャンピングキャッチをした。ボールは吸い込まれるように俺のグラブに収まった。


 これが犠牲フライになって同点。さらに1アウト1,3塁のピンチであるがホームランで逆転という最悪の結末は回避できたのだ。ここは喜ぶべきだろう。


 周りからはものすごい大歓声だ。ここは甲子園なのかと錯覚するくらいの大声援である。この後球威が戻った投手の力で2者連続三振でピンチをしのいだ。


 しかし6回で8奪三振は凄いな。失点も1点だけだし。そのかわりフォアボールが多いという弱点も露見したがな。


 6回裏の攻撃は3番からである。1人ランナーが出れば俺まで回る。頼むぞ。しかし3者凡退だった。これで6回終わって1対1。


 なんという勝負なんだ。全くの互角じゃないか。そして試合は終盤、7回の表に入った。この回から白チームは2番手投手を投入してきた。赤は7番からである。


 そしてランナーを1人出したが見事に0点に抑えた。よっしゃ!


 7回裏の攻撃は俺からである。結果は13球粘ってのフォアボールで出塁した。続く7番が内野安打でつないでノーアウト1,2塁。勝ち越しのチャンスを迎えた。


 8番は高いバウンドのショートゴロ。これで1アウト1,3塁になった。赤チームの内野は前進守備である。外野は定位置で守っている。


 打席には9番。頼むぞ。外野フライでも1点の場面だぞ。併殺打だけは絶対にダメだぞ。俺は3塁から祈るように打席を見ていた。


 9番は1ストライクノーボールからスクイズした。ボールは投手前へ。俺はホームベースに突っ込んだ。しかし相手投手はホームをあきらめ2塁へ送球した。


 結果はアウト。さらに併殺を狙い1塁へ送球する。しかしここは9番の足が優りセーフ。結果、内野ゴロの間に1点をもぎ取った。


 終盤に1点を勝ち越し。大きな1点となった。


「零君やったね」


「ああ」


「で、あとどのくらいで試合終わるの?」


「え~と。40分くらいかな?」


「そんなにかかるの?」


「正確にはわかんないけどな。というかつまんないなら帰っても良いけど?」


「私はここにいるよ。ここなら零君の活躍間近で見られるし写真も取り放題だからね」


「え、写真?」


「あ、零君。チェンジだよ」


 写真っていったい何のことだ。釈然としないがこれから8回の表なので守備につかなくてはならない。8回は2,3,4番の上位打線だ。


 ここは投手が踏ん張り2アウト満塁のピンチを招いたが0点に抑えた。よし8回の裏は2番からだ。俺まで回ってくるには少し時間がある。


 今のうちにさっきの写真って何のことか問いただしておかないと。


「なあ美咲。写真って何のことだ?」


「零君が野球してる写真に決まってるじゃない。この写真高く売れそうなんだよ」


「待てい!売るってどういうことだよ!?」


「知らないの?今日こんなに人が集まってるのって零君目当てなんだよ。男子は零君がエラーするの待ってるみたいだけど女子は零君の活躍を見に来たんだよ」


「え、そうなの?」


 女子が俺目当てとか現実じゃありえなかったことだぞ。ゲーム万歳。体育祭万歳。このゲーム始めてからモテモテ人生まっしぐらだな。


「けど守備の方は外からの方が撮れるんだけどバッターボックスはこっちの方が撮りやすいんだよ。だから守備の写真はたくさん出回りそうだから、私はバッティングの写真で勝負しようと思って」


「何の勝負だよ!?」


「え~どれだけ零君をかっこよく撮れるかの勝負だよ」


「はぁ~」


 ため息をこぼす。まさかそんな勝負になってるだなんて。確かに体育祭では女子のコスプレ写真の取引とかが行われてると聞いたことはあるがイベントでもない紅白戦でこんなことになろうとは。しかも俺の写真だからな。


「おい。逢坂次じゃないのか?」


「ああ。すまない」


 よく見ると2アウト1塁でちょうど5番がフォアボールを選んで1,2塁になったとこだった。ここで一気に勝負を決めてやる。


 打席に立つ。相手投手は2番手に代わっていた。初球見送ってストライク。2球目はファールで簡単に追い込まれてしまった。3球目と4球目はボール。5球目はきわどいところをファールする。そして6球目、高々と打ち上げてしまった。


 しかし風にも乗って再びフェンス直撃になった。2塁ランナーは楽々生還。 1塁ランナーも激走してホームへ還ってくる。そして外野からの送球が逸れた隙に俺もホームまで還ってきた。


 記録はスリーベースとエラー。ともかく一気に3点追加で5対1。勝負は決まったな。


 ついに最終回、9回の表。今回は延長が無しのルールなので最低でも5点取らないと勝つことが出来ない。それどころか3点以内だと負けが決まる。


 打順は8番からの下位打線である。1点差ならまだしも4点差なんだ。こちらの勝ちはゆるぎないだろう。


 まず8番は内野安打で出塁。9番はファーストゴロに打ち取って1アウト2塁。後2人でゲームセットだ。俺は一層集中力を高める。


 ここで同点に追いつかれるという事は9回の裏をすることである。そうなれば帰るのがさらに遅くなり、写真を撮られまくれ取引されるという事でもある。


 体育祭の写真で異世界君と女子の写真を取引した以上女子に強く言うことは出来ない。ならさっさと試合を終わらして取られる枚数を1枚でも少なくすることだ。


 1番はデッドボールで1,2塁となる。おおい!なんで当ててんの。後2人なんだからさ。しっかりやってくれよ。


 2番はサードゴロ。併殺打で試合終了だと思ったのに1塁セーフで2アウト1,3塁とランナーが残った。マズいな。


 3番には4球目の難しい球をうまく拾われレフト前への適時打に。これで3点差の1,2塁。おいおい。もしもホームラン打たれたら振り出しだぞ。


 さっきも俺のファインプレーがなければ4点取られてたわけだからな。何とか抑えろよ。


 最後は4番が打ち上げ捕手へのファールフライでゲームセット。


 何とか5対2で勝利の上に9回表で終わらせることが出来た。正直先輩らには勝ってしまって悪いと思うが勝負は勝負だ。美咲は良い写真が撮れたのかご満悦であった。


 ああ。どうか写真が流失しませんように。ここだけは重要だよな。


 運動能力が5上がりました。



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