1200メートルリレーの物語
『これよりプログラム13番パン食い競争を行います』
この競技は美咲が出場する。
1組は沸いている。
特に男子が沸いている。
美咲は周りに手をふっている。
どこのアイドルだ。
選手は既に入場し集中力をためている中で1人だけ手をふっている。
美咲よ。それで負けたら許さねえぞ。
来賓の方も男性が美咲に見とれていて隣の妻か、恋人か知らないが女性に怒られている。
ざまーみろ。相手がいるくせに美咲に見とれてるから怒られるんだよ。
一夫多妻制ではあるが半分くらいの女性は他の女性と仲良くしている彼氏が許せないらしい。
パン食い競争では男子と女子では差が出るのでパンを釣る紐の長さを変えている。
あとパンにも色々と種類があり順位が上の人から好きなパンを選ぶことが出来る。
このパンは競技終了後にもらえるのでパンを選べるというのは大きなアドバンテージだ。
でも結局は競技終了後にパンを交換したり、他人にあげたりしてるので生徒的にはアドバンテージでもなんでもない。ただの障害にすぎない。
しかし教師陣は好きなパンを栄養補給として使えるということでアドバンテージととらえているらしく毎回パンに気合が入ってるらしい。
今年のパン食い競争の第1走者用のパンを見るとメロンパン、食パン、あんぱん、カレーパンと様々なパンが用意されている。
運営はどうでもいいところに力を入れ過ぎだろう。
パァン!
久しぶりの拳銃の音を合図に第1走者達が走り出す。
美咲は1年生の中で最後の第4走者として出場する。
まず50メートルくらい普通に走ってぶら下がっているパンを取りまた50メートル走ってゴールという形である。
ひもの長さが違うため選ぶパンはおのずと限られてくる。
そこは運営も考えてたらしく男子用には男子受けしそうなパンが、女子用には女子受けしそうなパンがつるされていた。
パン食い競争では当然のことながら手を使うことが出来ない。
さらにパンがあるのは空中でギリギリ届かない高さに設定されている。
なのでパン食い競争に巨乳の女の子が参加すると揺れるのである。
なにが、とは言わないが男子勢の目は重力に引き寄せられるかのようにそこへ向いている。
そのせいで男子はうまくパンを取ることが出来ずそろいもそろって順位を落としていった。
来賓席の男性も生徒たちと変わらずそれに目がいって女性に怒られていた。
さっきも見た光景だった。
現実だろうがゲームの中だろうが関係ない。
男は男だった。
正直俺よりひどいかもしれない。
俺も目を吸い寄せられたが女性に不快感をあたえないようにチラッとだけしか見ていない。
そこら辺の男のようにガン見はしていない。
俺は紳士だからな。
しかしまあ美咲がいなくて良かった。
ばれたら大変なことになりそうだったしな。
そして早くも美咲の出番がやってきた。
美咲はスタートラインで軽いストレッチを行っている。
応援の声が自然と大きくなる。
1組が優勝するためにもここは大きな山場となるからな。
ここで1位を取るのと取らないのとじゃこの後の競技をやる人たちの精神状態が大きく違ってくるだろう。
「位置について……よーい……どん!」
パァン!
どん!と同時に空砲が鳴らされ一斉にスタートする。
美咲は現在2位である。
1位とは走力はほぼ同じなのだがスタートで少し出遅れた分リードされているといった感じだ。
あっという間にパンがつっているところまでたどり着く。
美咲はカロリーの少なそうなサンドイッチぽいパンを取った。
その際美咲の胸が揺れ一瞬グランドは静まり返った。
次の瞬間ものすごい歓声が鳴り響いた。
美咲は顔を真っ赤にしながらも1位でゴールした。
ちなみに途中まで1位だった子は美咲への歓声を聞いて戦意喪失したみたいだ。
まああれだけの歓声が美咲を後押ししたんだ。相手からしたらたまったものではないだろう。
これだけの歓声を聞いているとしみじみ美咲は人気があるなと思う。
そして同時によくあんな可愛い子と仲良くなれたよなと思う。
今なら男子が俺に敵意を向けている気持ちも分からなくはない。
もしも翔が美咲と仲良くしていたら俺も男子勢にまじっていろいろやってたと思う。
友達をやめてたと思う。
続いて二年生がパン食い競争を行う。
そして女子の胸が揺れるたび歓声が巻き起こる。
そして女子は顔を真っ赤にしながらゴールするというシーンが非常に目立った。
恥じらう姿も興奮するな。
なんか俺下種になってきていか?印象力をこれ以上落とせないというのにまずいな。
パン食い競争恐るべし!
これは悪魔の競技と言っても過言ではない。
こんな危険な競技を行うなよな運営!
下手したらカップルの破滅を招くぞ。
さっきから男性が女性に怒られている。これだけで分かるだろ?男は胸には勝てないんだ。巨乳には勝てないんだよ!
そういえば八戸先生って独身だっけ?まさかこの競技の本当の狙いはカップルの滅亡だったのか!?
なんという策士!これでリア充が少しでも減れば最高だぜ。
俺は勝手な思い込みで校長に賞賛を送る。
たとえ校長にこのような意図がなくともリア充が減りそうなこの展開は大歓迎だ。
ここだけは運営も褒めてやらんこともない。
うわぁ。俺超上から目線だな。
1、2年生と同じように3年生のパン食い競争が行われた。
やはり女子が走るときはものすごい盛り上がりを見せた。
それに対して男子が走るときは異様なほど静まりかえっている。
正直男子のガチのパン食い競争見てもなにも面白くない。
男子の走りを見るならリレーの方が良い。
リレーは障害物の一切ない純粋な走力だけで競われるからな。
かく言う俺もリレーに出場する。
なんだかんだ言ってもリレーは体育祭の花形競技だ。
ここで勝つと校内の人気者になれるしな。
印象力を上げる絶好の機会だ。
『さあ!だんだんとボルテージが上がってきました!それではここからは皆さんお待ちかねのリレー種目に入りたいと思います!』
いよいよリレー種目か。
先ほどまで喧嘩していたカップルたちも喧嘩の手を止めグランドの方に注目している。
それだけリレー種目は人気なのだろう。
『それではリレー種目第1弾!1200メートルリレーです!』
この種目は恵が出場する。
だとすれば1位は決まったも同然だな。
もしこの競技で2位以上になれなければ首位陥落という事態に陥る。
それだけは何としてでも阻止したい。
頼むぞみんな………。
『準備が整いました!1200メートルリレーに出場する選手の入場です!』
音楽に合わせ行進をしてスタート位置までやってくる。
恵はアンカーを務める。
どうやら先行逃げ切りではなく逆転勝利を狙っているようだ。
『それでは1年生からスタートします!位置について……よーい……どん!』
パァン!
どんと同時に空砲が鳴らされ第一走者がスタートする。
この1200メートルリレーは200メートルずつ6人が走る。
つまり最低でも5回は競技の流れが変わるターニングポイントがあるということである。
しかし前評判でも7組は優勝候補に躍り出ていてアンカーが恵なので7組を抜かし1位を取るというのは至難の業である。
それでもどこのクラスもリレーには力を入れている。
足の速い人ばかりが出場しさらにかなりの練習を積んでいるのだ。
混戦になる可能性も捨てきれない。
第1走者は7組が頭一つ抜け出し200メートル付近を通過した。
残りの7クラスはめまぐるしく順位が変動している。
どのクラスも声を張り上げ体育祭1番の応援している。
もうこのリレーからはギャグが一切なしの真剣勝負だ。
早くも第2走者にバトンがわたった。
現在の順位は1位が7組、2位が8組、3位が1組となっている。
ここにきてまさかの8組が強いという展開である。
これなら3位になっても次の次のクラス対抗リレーで逆転できる点差である。
それにクラス対抗は現実では平均レベルだがこのゲーム内においてチートレベルの運動神経の持ち主である俺が出場するのだ。
負ける要素がどこにもない。
まあクラス対抗リレーで再び首位に躍り出ても最後の得点あり競技大玉転がしで負ければ優勝はできないけどな。
しかし1200メートルリレーで首位をキープ出来るとクラス対抗リレーで点差を開けることが出来るのでかなりゆとりが出来る。
さて1200メートルリレーの方だが順位は変わらず第3走者にバトンがわたる。
ここからは第1走者や第2走者よりも足の速い選手が登場する。
来賓の人達もかなりヒートアップしてきている。
「「「いっけー!!」」」
「「「頑張れ-!!」」」
どのクラスもさらに声が大きくなる。
特に8組はすごい応援だ。
まあこのリレーで勝ち続ければ最下位を脱出出来るからな。
さすがの8組も最下位だけは嫌なのだろう。
競技は早くも第4走者にバトンがわたっている。
リレーも後半に入った。
1組は肉薄はしているのだが抜くには至っていない。
「あと少しなんだがな……」
俺は思わず呟く。
1組のクラスメイトも応援はしているがやきもきした顔をしている。
7組はさらに差を広げ2位と半周くらいの差が開いている。
やっぱり7組強い。
バトンが次々と第5走者にわたる。
1組は8組を抜けそうで抜けない。
あーもどかしい。
7クラスが混戦を繰り広げている中7組がアンカーにバトンをわたす。
アンカーの恵はものすごいスピードで最下位を一周遅れにする。
おいおい……早すぎじゃないのか?
恵は1位でゴールする。
恵がゴールすると同時に1組と8組がアンカーにバトンをわたす。
3位と4位の間が少し開いている。
ここでアンカーなので3位以内には入れそうだ。
ここで何とかして8組を抜かしてくれ!
3位のまま残りが100メートルになる。
頼む!逆転してくれ!
残り80メートル。
まだ抜けない。8組との差は5メートルもない。
「頑張って」
「頑張れ-!」
俺と美咲も精一杯応援する。
8組と1組のデッドヒートに来賓も大いに盛り上がる。
残りは30メートル。
「うおおおお!」
1組のアンカーが最後の力を振り絞って走る。
残りは15メートル。8組との差は1メートル。差はわずかであるが縮まってきている。
残り10メートル。差は80センチ。
残り9メートル。差は70センチ。
残り7メートル。差は50センチ。
もう1メートルも差がない。
残りは7メートル。逆転は十分に可能である。
とは言っても普通こういう接戦って1位争いのはずなのに1組は2位争いでこんなにも白熱しているのだろう?
残り4メートル。差は30センチ。
残り3メートル。差は20センチ。
残り2メートル。差は15センチ。
残り1メートル。差は5センチ。
そしてそのままゴール!
俺の目にはほぼ同時にゴールしたように見えたがどうだ!?
『2位は8組!3位はおしくも1組!』
えええええええええええええ!
そこまで引っ張っておいて3位のままかよ!?
普通こういうのって逆転するもんじゃないの!?
とにかくこれでここに来てまさかの首位陥落だ。
4位は4組で3位に後退した。
8組は追い上げもうすぐ7位に上がれそうである。
1200メートルリレーは2年生の番になっている。
ここまで圧倒的首位に立っている7組がここでも上位に入っている。
何でここまで強いのかな?
クラス編成が間違ってんじゃないの?
あまりにも強すぎるし。
それに対して1年生のこの接戦は何なんだろうね?
学校側はどんな生徒か把握できていないはずなのにここまで接戦になるなんて。
3年生もある程度は混戦になっているが1年生ほどではない。
学校側は生徒の把握を行わずにクラス編成を行った方が絶妙なクラスになるかもしれない。
来賓が楽しめるようなシーソーゲームになりそうである。
さて2年生の1200メートルリレーだが1位こそ別のクラスが取ったが相変わらず7組は上位だ。
必ずと言って良いほど3位以内には入っている。
さて最後の3年生ではあるが総合順位が上のクラスが上位独占をしたので4位と5位の差が広がった形になった。
そしてリレーの1位を決める三つ巴の戦いがメッチャ盛り上がった。
羨ましいわ。あそこまで盛りあがるとか……
『次はクラブ対抗リレーを行います。出場選手は入場門にすみやかに集合してください』
リレーの第2弾はクラブ対抗リレーだ。
クラブ対抗リレーは得点に関係なく1200メートルリレーに出場した人達の中から出る人もいるので招集が少し遅れるのだ。
俺としては各クラブのパフォーマンスに期待したいな。
俺は招集場所に行きながらそんなことを考える。
いよいよ俺の出番近し、だな。
いよいよ次回主人公が走ります。
お楽しみに。




