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応援合戦・綱引き決勝の部の物語

なんとか中三日で更新できた。

 俺が応援席に戻るとすでに8割方の生徒は応援席に戻っていた。

 ここにはいない2割の生徒もすでに応援団の服装に着替え入場門で待機している。

 

「零君、元気出してよ」


 美咲は俺がいまだ昼休みのことを引きずってると思っているようだ。

 

「もう本当に大丈夫だ。心配かけて悪かったな」


 心配してくれた美咲にお礼を言う。

 だがな俺を運動音痴みたいに言ってたことは許さねえ。

 絶対リレーで1位を取って見返してやるからな。


『これより応援合戦を行います』


 応援合戦は全学年合同で、8クラスを2つに分ける。

 1クラスから平均8人の人が出ていて4クラスの3学年なので1チーム約96人いる。

 これに加え各クラスから旗を持つ人が12人出るので計108人の大規模応援合戦になる。


 毎年いろいろとパフォーマンスをやっていて生徒と来賓、両方から絶大な人気を誇っている。

 さらに応援団に参加している生徒は放課後、休日、早朝など時間がある限り練習を繰り返すらしいのでクオリティーがメッチャ高いらしい。

 中にはパフォーマンス目当てに来る人もいるらしい。

 

 パフォーマンス中は旗を持っている人が応援団を取り囲み旗を振っている。

 この旗は各クラスで1枚ずつ作成されたものでいろいろなデザインがある。

 応援団の様子を描いた旗もあれば、アニメのキャラクターを描いている旗もある。

 中には文字だけというシュールな旗もある。


 まず1,3,5,7組の生徒が入場する。

 この4クラスの応援団は全員学ランを着てハチマキを巻いている。

 応援団のチームは毎年ランダムで決められ今年はたまたま偶数クラスと奇数クラスに分かれたのである。

 俺は応援団がどんなパフォーマンスをするのか知らないが応援団の練習を見に行ったことがある人に聞くとかなりカッコいいらしい。

 なんか楽しみになってきたな。


 応援団の裏話としては応援合戦という競技が始まった当初は応援合戦も得点ありにしようとしてたらしいのだが8クラスとクラス数が多いので全クラスが1クラスずつ応援をするのは無理だから2クラスにしようという話になり、それに加えクラス対抗というルールでやっていたので得点ありだと不公平になってしまうという理由から得点はなしになったらしい。


 ちなみに運営が2チームに分けての対抗戦にすれば良いと気づいたのは応援合戦がパフォーマンス合戦というイメージが定着した後だったらしい。

 それに得点をありにしてしまうと両チームとも真面目に取り組むため面白みがなくなるらしい。

 来賓の人達からしたら面白いほうが楽しめるようだ。

 俺は別に真面目でもいいと思ったんだけどな。


『それでは第1チームの人は応援パフォーマンスを始めてください』


 ドドン!


 放送部のアナウンスに合わせ太鼓の音が鳴り響く。

 太鼓の音を合図に応援団の人たちは腰を下ろす。

 中腰の格好だ。


「三三七拍子!」


 先頭にいる団長が声を張り上げる。


 ドン!ドン!ドン!


 ドン!ドン!ドン!


 ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!


 初めの3回の太鼓の音の時に右、左、右の順に腕を突き出す。

 2回目の3回の太鼓の音の時は先ほどとは逆に左、右、左の順に腕を突き出す。

 最後の7回の太鼓の音の時に体を開き横向きになって腕を左右に突き出す。そこから左腕を折り曲げ、右腕を左腕を斬るように回転させる。回転と同時に左膝を立て右膝は地面につける。そして両手を左膝の上に来るようにする。


 カッカッカッ


 太鼓の淵を叩いた音が鳴り響く。

 3回目のカッの時に全員が素早く立つ。この時腕は腰につけている。


「全学年、全クラスの健闘を祝してそーれ!」


 団長が声を張り上げる。

 他の人は微動だにしない。


「フレー!フレー!全員!フレッフレッ全員、フレッフレッ全員!オーーハッ!」


 フレーで右腕を開き次に左腕を開く。

 全員のところで両腕を閉じ、すぐに両腕を開く。

 これを3回繰り返す。

 

 オーーハッのところで右腕を斜め上へ突き出す。

 全員の動きが揃っていてめっちゃカッコいい。

 ちなみに全員の応援をするのは毎年チームが変わるのと敵同士でチームを組んでいるという理由かららしい。

なんかものすごい違和感を感じる。

 全員って何かおかしい気がする。


 応援団は両チーム共通の三三七拍子からフレフレまで終りパフォーマンスタイムが始まる。

 今年のパフォーマンスは空手?拳法?かは知らないが格闘技の型を太鼓の音に合わせやっている。

 さらに108名の応援団を4チームに分けそれぞれ違ったパフォーマンスを行っている。

 

 俺は格闘技とかはまったく分からないので何の格闘技か知らないし素人であるが動きが洗練されているのが分かる。

 それだけキビキビした動きを見せている。


 まるでゆっくりと組み手をやっているように見える。

 確かにこれはカッコいい。

 パフォーマンスは佳境クライマックスに入る。

 いわゆる大技だ。

 もちろんゆっくりやってるし誰かに当てるということはないのだが見とれてしまった。

 

「ありがとうございました!」


 団長が叫び一斉に退場門へ走る。

 来賓の人達は盛大な拍手で退場する生徒を見送っている。

 応援席にいる生徒からも拍手が送られる。


 応援団の人が退場を終えると旗を持っていた人が旗をなびかせながら退場する。

 拍手が鳴りやまぬ中、入場門には2チーム目が準備している。

 後半組はどんなパフォーマンスをしてくれるのか楽しみだな。


 第1チームが退場してすぐに2チーム目が入場する。

 2チーム目は体操服のままであるがチアリーダーが持っているようなポンポンを持っている。

 先ほどのようなカッコいいパフォーマンスではなくダンスのようなパフォーマンスが予想できる。


『それでは第2チームの人は応援パフォーマンスを始めてください』


 第2チームも三三七拍子から入りフレフレを行う。

 第1チームと比べても遜色ないうまさである。

 しかし衣装の違いから第1チームはカッコいいイメージであったが第2チームはフワフワとした可愛いイメージだ。


 第2チームは女子の方が人数が多い。

 その中で少数の男子がポンポンをふっている姿がシュールである。

 その男子勢の中に翔の姿を見つけた。

 翔は俺から見てイケメンだと思う。

 そのイケメンの翔がポンポンをふっている姿はかなり笑える。


「キャー!翔君かわいいー!」


 隣のクラスの女子がキャーキャー言っている。

 翔は女子にも人気である。

 よく耳を澄ますと先輩や他クラスの女子からもキャーキャーと聞こえる。

 うぜえな。

 あんなスポーツバカどこがいいんだ?


 翔は現実では毎年全国大会で優勝争いをしている超強豪校への推薦入学確実とまで言われたサッカー少年だった。

 しかし中学の時に足をケガし、強豪校からの推薦も取り消されサッカーも続けることが出来なくなった。

 そんなときに俺がアニメ、漫画といった2次元オタクの道へ誘い入れたのだ。

 はじめはサッカーへの未練を断ち切れないでいたのだが、当時投稿型ネット小説サイトで話題になっていた小説を読んだのをきっかけに翔はオタクの道へ足を踏み入れた。

 

 それ以来、俺と翔は親友と言える関係にまでなり同じゲーム会社に入社しこのゲームを完成させたのだ。

 だがこのゲーム内では足のけがを気にせず思いっきりサッカーが出来る。

 なのでゲーム内では俺と翔はあまり話はしていない。

 翔はサッカー部でレギュラーを獲り活躍していると聞く。


 翔が満足しているのなら俺は嬉しい。

 だが翔ばかりが女の子からキャーキャーともてはやされるのを許容できるかどうかは別問題だ。

 俺だってゲーム内では素晴らしい活躍してんじゃん。

 フリースローだって全部決めたし野球部の練習試合では大活躍だったじゃん。

 なんで翔ばかりがチヤホヤされんの!?

 意味分かんねえよ!


「零君だってカッコいいから大丈夫だよ!」


 美咲が励ましてくれる。

 やっぱり美咲は天使だ。


「ただ……ちょっと印象が悪いだけだよ」


 天使は一瞬で悪魔に変わった。

 その台詞は駄目だろう!

 俺だって分かってんだよ!

 確かに印象力は低いよ!

 でもそれを口に出すのは駄目だろう!


 でもそうか翔との人気の差、それは印象力だ。

 確かに翔は最初から印象力を上げまくっていた。

 俺も最近は印象力を上げてきているが翔には遠く及ばない。


 その差がこの惨状か。

 俺は印象力を上げるのが遅すぎたらしい。


俺が落ち込んでいる間に第2チーム目の応援パフォーマンスは終わってしまった。

 ああっ!ほとんど見てないのに!


『次はプログラム12番綱引き決勝です!』


 とうとうこの時がやってきた。

 綱引き決勝。対戦相手は最強の7組。

 勝てる気がしねえ。


「みんな頑張ってー!」


 美咲が大声で応援をする。

 そうだよな。いくら相手が強いからってそこであきらめたら試合終了だよな。

 ましてや応援する俺達が諦めてたら駄目だよな。


「頑張れー!」


 俺もめいいっぱい応援する。

 グランドには4本の縄。俺から見て右側が1組対7組の1,2位決定戦。そこから順に3,4位決定戦。5,6位決定戦。7,8位決定戦が行われる。


 出場選手は既に開始位置についている。

 この決勝では予選とは打って変わり3本勝負になっている。

 つまり一回だけなら負けても大丈夫!


 要するに最初の1本目を取れたとしても残りの2本取られたら意味はないのだ。

 言い換えれば最初の1本を取られたとしても残りの2本を取ればいいだけの話である。

 

『それでは綱引き決勝1本目!始め!』


 全クラスが一斉に綱を引く。

 我が1組は劣勢ではあるがギリギリのところで粘っている。

 俺達は最強の7組に挑むのにあたり1つの作戦を決めた。

 それは1本目は負けてもいいから相手の体力・精神力を削るというもの。

 体力面はあまり期待は出来ない。

 なぜならこちらも体力を使わなければあっという間に負けてしまうからだ。

 しかしもう少しで勝てそうなのに勝ちきれない。

 これはかなり精神的に来ると思う。


 1組だって予選を1位で通過した強者だ。

 7組が力の入れどころをミスすればたちまち1組の優勢に変わる。

 今は我慢の時間帯だ。

 7組が動き出した時こそ勝負の時だ。


『1組が粘ります!それに対し7組はあと少しのところで勝ちきれません。完全に膠着しています!』


ここで7組が勝負に出る。

 恵を起点とし一気に綱を引く。

 1組勢は引きずられていき1本目は7組の勝利に終わった。


『粘った1組でしたが最強7組の前に1本取られました。さあ1組は崖っぷちだ!』


 2戦目は位置を入れ替えて行う。

 両チームとも疲れが見えている。


『さあ!綱引き決勝2本目。開始!』


 すぐさま2本目が開始される。

 今回は早々から1組が勝負に出た。

 7組は虚を突かれバランスを崩す。

 バランスの崩れた7組はズルズルと引きずられていく。

 だがすんでのところで踏ん張る。

 

 先ほどとは逆の展開だ。

 7組が粘り1組があと少しのところで勝ちきれない状態になっている。

 そもそも1組の戦法は1度きりか使えない奇襲戦法だ。

 これで決められず体力を奪われていくようならたとえここで勝っても3本目が厳しいだろう。


 1組がめいいっぱい綱を引くが数ミリしか動かない。

 それでも動くことは動くので1組は綱を引き続ける。

 長い時間の末、1組は激闘を制し1勝1敗のタイに持ち込んだ。

 これは金星ともいえる戦いだ。


『1組の粘り勝ちで1勝1敗のタイ!勝負は3本目にゆだねられました!』


 再び位置の交換を行い綱を引く体勢になる。


『それでは3本目!開始!』


 最後の戦いが始まった。

 今回は始めから膠着状態に陥り真ん中で1組と7組の方を行ったり来たりしている。

 それでも1組の方が疲労は蓄積していて表情に余裕がない。

 2本目での7組の粘りが効いている。


 均衡は突然崩れた。

 7組が綱を一気に引き勝負を決めた。

 最後は実にあっさりした終わり方であった。

 それでも名勝負を繰り広げた両クラスに暖かい拍手が送られる。


 結果は激闘の末7組の優勝で幕を閉じた。

 残る得点ありの種目はパン食い競争、1200メートルリレー、クラス対抗リレー、大玉ころがしの4つだけである。

 いよいよ勝負も大詰めになってきた。


 現在首位の1組であるが2位との差はわずかに5点だ。そして先ほど綱引きで勝った7組が3位に上がってきた。

 4組は相変わらずの2位。6組が4位に下がっただけで他のクラスの順位変動はなかった。

 ちなみに綱引き決勝は勝ったほうに5点が与えられる。

 そして4,6組が負けたので2~4位が全部1点差づつになっている。

 今後の展開によっては4位の6組が優勝する可能性もある。

 ずいぶんと混戦になったな。


 泣いても笑っても後得点ありの競技は4種目。

 なんとかこのまま優勝してやる。

 

 


 



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