綱引き・騎馬戦の物語
『さあ!早くもプログラム6番です!綱引き予選です!』
この綱引きには恵が出場する。
綱引きは4チームずつに分かれてリーグ戦を行い予選の1位同士、2位同士、3位同士、4位同士で決勝を行う。
Aリーグは1、4、6、8組でBリーグは2、3、5、7組で行う。
恵のクラスと予選で当たらないので助かった。
Bリーグはかわいそうになってくる。
Aリーグはプレイヤーが参加する組はないのでどこの組にも優勝するチャンスがある。
「美咲、うちのクラスって綱引き強いのか?」
「結構強いと思うよ。私も友達から聞いただけなんだけどね」
「そうなのか……」
ここでなんとか2位に入ってほしいな。
現在の1位は4組なので7組に負けたとしても2位になれたなら暫定1位になれるからな。
この綱引きでは男女混合で13人参加する。
ただし男子は1、3人と数える。
これで男女差をなくすのだ。
あんまハンデになってない気がするが……
とにかく全員を男子にすると10人しか出ることが出来ない。
差がこれだけなんだな。
『準備はできましたか?それでは予選第1試合開始!』
予選はAリーグが1組対4組と6組対8組でBリーグは2組対3組と5組対7組である。
綱引きの実力はともかくいきなりの首位攻防戦だ。
綱引きに出ない人もそれが分かってるのかまだ午前中であるが1番声を出している。
綱引きでは予選は一本勝負で決勝は三本勝負で行われる。
つまり今行われている予選は一発勝負である。
綱引きに出場している選手も気合が入っている。
「「「オーエス!オーエス!」」」
今のところ1組が優勢ではあるが1組は速攻で勝つ戦法を取っているので長期戦になるほど不利である。
「「「いけいけ1組!押せ押せ1組!」」」
俺を含めて全員が選手を応援している。
ああ、ようやく俺はクラスの一員になれた気がするよ。
パァン!!
ここで試合終了を表す空砲が鳴らされた。
我らが1組は無事初戦を勝利した。
他のクラスの結果はやはり7組が圧倒的というイメージだ。
う~ん、やっぱり運動能力の差がでかすぎるのか?
俺が運動で活躍出来るのは嬉しいけど、結果が分かりきっているのは面白くないな。
NPCの運動能力をあげた方が良いかもしれない。
あと危険度も0だと安全に暮らせるが面白味がなくなったように思う。
体育祭が終わったら愛さんに相談してみよう。
『みなさん!準備はいいですか?』
そろそろ第2試合が始まるようだ。
Aリーグは1組対6組と4組対8組でBリーグは2組対5組と3組対7組である。
「6組はそこまで強くないし油断しなければまず勝てる相手だよ」
なるほど。美咲が相手チームの説明をしてくれる。
出場メンバーの顔を見たところ油断しているようには見えない。
これなら勝てそうかな?
今回は見事に作戦がはまり速攻で勝つことに成功した。
いや~作戦が決まって完勝するのって気持ちいいな。
これで1組は2勝したし最下位だけはなくなったな。
それにしても勝ち数が同じになった場合はどうやって順位を決めるのだろうか?
「なあ美咲。綱引きって勝ち数が同じになったらどうするんだ?」
「勝ち数が並んだ場合は現在の総合得点が高い順になるらしいよ」
ということは1組が1位通過するためには3連勝するしかないってことか。
それか4組が負けた時点で1位通過決定か。
現在のリーグ戦の成績は1位2勝0敗で1組、2位が1勝1敗で4組、3位が1勝1敗で8組、最下位が0勝2敗で6組だ。
正直4組が6組に負けるとは思えないので8組には絶対勝たないといけない。
これに対しBリーグの方は7組が2勝0敗で余裕の1位。
2組も接戦を制し2勝0敗で7組と同率1位。
3組と5組は0勝2敗で同率3位になっている。
ぶっちゃけ綱引きに引き分けはないのでこちらは総合得点は既に関係ない。
来賓の人達は7組対2組の1,2位決定戦と1組対8組に注目している。
まあ3,4位決定戦見ても仕方がないし、4組対6組は結果が見え見えだしな。
「零君、8組に勝てると思う?」
「分からないな。これが初戦とかなら1組の勝ちなんだろうが、今の1組は疲労しているし8組はこのリーグ1位候補の4組との試合は捨てて2位を狙いに来てたからな」
「互角ってこと?」
「ああ」
そう現状8組に確実に勝てるだけの力は残ってない。
1組が8組に勝つためには速攻で決めるしかない。
『さあ!いよいよ綱引き予選も最終戦!1位通過するのはどのクラスなのでしょうか!?なお2年7組は総合得点の関係ですでに1位突破が決まっています』
ああ、そういえば3学年同時に行われてたんだっけ。
1年の戦いしか眼中になかったよ。
そして会長のクラス強すぎでしょ!
『準備は良いですか?それでは綱引き予選第3戦スタート!!』
この言葉とともに1位通過を掛けた戦いが始まった。
4組は俺達の予想通り6組相手に優勢に試合を進めている。
それに対して1組対8組の試合は拮抗している。
「頑張ってーみんなー」
「頑張れ!」
「ファイト!」
次々に応援の言葉を叫んでいる。
その声が届いたのか徐々に1組優勢になってきた。
良し!その調子だ!
パァン!
よっしゃー!
三連勝で1位通過だ。
クラスメイトもお互いに手を取り合い喜んでいる。
「やったね零君。1位通過だよ!」
美咲が興奮気味に話しかけてくる。
「ああ、疲れてるはずなのに8組に余裕を持って勝利できたのは大きいな」
『さあ!これより予選結果を発表したいと思います。まずはAリーグから発表します』
放送部はこういうところも放送してくれるのか。
親切だな。
現実での体育祭なんか、周りはうるさくて放送は聞こえないし結果を放送してくれるのも稀であった。
『1位は3勝0敗!1組!!2位は2勝1敗!4組!!3位は1勝2敗!8組!!4位は0勝3敗!6組!!』
見事に予想通りだな。
順位が発表されるたびに各クラスから歓声が上がる。
なんでそこまで盛り上がれるのか?
甚だ疑問である。
『続いてBリーグの結果です。1位は3勝0敗!7組!!2位は2勝1敗!2組!!3位は1勝2敗!5組!!4位は0勝3敗!3組!!に決まりました!!』
これで決勝は1組対7組、3位決定戦が4組対2組、5位決定戦が8組対5組、7位決定戦が6組対3組に決まった。
決勝は午後から行われるので綱引きに出場した選手も少しの間休むことが出来る。
これで決勝戦で奇跡を起こしてほしいものである。
『――――以上で綱引きの予選結果発表を終わります。続いてプログラム7番騎馬戦』
次は騎馬戦だ。
体育際の目玉競技の1つのハズなのにプレイヤーが一人も参加してないとは……
これはあまり面白くなさそうだ。
美咲の話だと騎馬戦はあんまり強くないらしいし。
「逢坂君、調子はどうですか?」
俺が振り返るとそこにいたのは腕に見回り係を示す腕章をつけた会長がいた。
会長の周りには林達が群がっていた。
「森ですわ!」
あ、森だった。
「森さん。どうかしたのですか?」
会長に本気で心配されている。
そして森はメッチャあわあわしている。
そりゃあいきなり自分の名前を叫んだら心配されるよな。
主に頭の病気で。
「会長様、なんでもありませんわ。ご心配ありがとうございます」
森は本物のお嬢様なのだがどうしても敬語を使う気になれない。
俺の中では森は森だろって感じだ。
そして会長と話している森をみると子供が一生懸命背伸びしている姿を思い浮かべてしまう。
「あ、会長また性懲りもなく零君にちょっかいかけようとしてるんですか?」
ちょっ美咲!?
なんでまたそんなに喧嘩腰なの!?
ホラ、会長困惑顔だよ。
森はこっち睨みつけてるよ。
「あの……桜さん?この間のことは許してくれたのではなかってのですか?」
「はっ」
無意識で言ってたのかよ。
いろいろ怖えよ。
「スイマセン会長。ちょっと我を忘れてしまって」
いや我を忘れるって。
おかしいよね。
さっきまで普通に意識あったじゃん。
というかみんな騎馬戦見なくていいの?
一応目玉競技だよね?
「大丈夫ですか?保健室行きますか?」
「いえ、もう大丈夫です」
会長は人が良過ぎないか?
美咲のアレ、多分わざとだぞ。
「会長は見回りですか?」
ここは話を変えさせてもらおう。
このままだと嫌な予感がする。
「そうなんですよ。会長というのも大変なんです。なのでいつでも手伝いに来てくれて良いですからね?生徒会長補佐君」
会長がなんかアピッてきた。
あと生徒会長補佐と言うところにアクセントが置かれていたような。
「会長はそろそろ見回りに戻ったほうがいいのでは?」
美咲が建前上丁寧に言ってるが本音としては「早くどこかに行って」だろうな~。
森は会長の味方をしてるのか知らないがしきりに「ゆっくりして行ってくださいまし」と言っている。
森と同じく会長のファンの生徒もなんとか引き留めようとしゃべりかけている。
「別に戻らなくても大丈夫ですよ。恵さんたちが頑張ってくれていますし、元は私は今の時間帯は仕事はなかったですから」
会長が生徒の話に乗っかった。
まじか。
美咲と会長の間で火花散ってるのに。
「そうなんですか。なら会長はファンの人達とお話していてください。零君の相手は私がしておきますので」
「そうですね。ではお言葉に甘えてしばらくそうさせてもらいましょうか」
美咲の言葉に会長が引き下がった?
まあ会長は誰にでも優しいからファンの人達のことを考えて引き下がったのかもしれないな。
さすが生徒会長になるだけのことはある。
「零君。これで2人きりだね」
そういえばほとんどのクラスメイトが会長の方へ寄って行ったので今は俺と美咲の2人きりである。
「そういえばそうだな」
「ねえ零君。体育祭1組優勝できるかな?」
「分かんねえな。だけど俺の出る競技は1位を取ってやるよ」
まあ運動能力にかなりの差があるので本気さえだしたら負ける要素がない。
正直2組から翔が出てきそうだが、翔との対戦成績は5分だ。
翔は短距離走はプレイヤーの中でも圧倒的に早いが中、長距離走になると俺の方が有利だ。
「零君、カッコいい」
俺は赤面してしまう。
女の子から面と向かってカッコいいとか言われたことねえしな。
まあ、実際にはまだ勝ってないんだけど。
「美咲はパン食い競争勝てるのか?」
「分かんない。パン食い競争の練習やったことないし」
そうか。
確か練習は自己責任だからパン食い競争の練習をするのなら自腹でパンを買ってこなくちゃいけないのか。
なんか自腹で練習って嫌な競技だな。
「そうか。まあ応援しているから頑張れよ」
「零君が応援してくれるのなら絶対勝つよ!」
嬉しいことを言ってくれるが若干重い。
それもし負けたらどうするんだよ。
「そうか……」
俺はこう答えるしかなかった。
何か余計なこと言ってやる気をなくされても困るしな。
「そういえば騎馬戦はどうなった?」
「今は三年男子でかなり盛り上がってるよ」
俺はグランドに視線を向けると三年男子が組み合っていた。
もちろん1番上の人がだ。
騎馬戦は頭につけているハチマキをとれば勝ちなんだがそれを忘れて取っ組み合いになっているところもある。
なぜこうなった?
ハチマキとれよ。なんかもう相手の騎馬を崩そうとしてんじゃん。
先生も止めろよ。
俺が教師のいる本部席を見ると教師が止めに入ろうとしているが校長の八戸先生が止めに入らないようにしている。
そして笑っている。
あの校長この状況楽しんでやがる。
けが人出ても知んねえぞ。
「凄いね……」
美咲も遠い目をしている。
そうだ!
教師が駄目なら会長だ。
俺が会長の方を見る。
会長は依然と俺のクラスメイトに囲まれている。
「会長!助けてください!」
俺の声を聞きつけ人混みの中から出てくる。
若干銀髪がやつれている。
「逢坂君どうしたのですか?」
「三年男子の騎馬戦が……」
騎馬戦の方を見て察したようだ。
会長は慌てて本部席に向かう。
本部席に入った会長は校長と何か言い合っている。
これはあくまで俺の予想だが
「校長先生何をやってるんですか!?」
「何もしてないわよ」
「早く止めてください」
「嫌よ。ここからが面白いんじゃない」
みたいなことを言ってそうだ。
その後3分くらいたった後でようやく教師が止めに入った。
会長がなんとか校長を説得したようだ。
さすがは会長だ。
結局3年の騎馬戦は無効となった。
男子の先輩からは無効になったことより3年女子の騎馬戦が行われなかったことにブーイングをしているようだ。
本当分かりやすい先輩達だな。
これで体育祭の3分の1が終わったことになる。
やっと3分の1か。
まだまだ続くな。
活動報告をアップしました。
よろしければ見ていってください。




