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開会式の物語

 6月5日(金)


 体育祭当日。

 今日は快晴だ。

 雲1つないすがすがしい朝だ。


「良い天気だな」


 俺は体操服に着替えながら窓から外を見て思わず呟いた。

 体育祭は体操服で学校に登校する。

 基本は半袖、短パンであるが長袖ジャージを着ても可らしい。

 普段は制服着用なので少し新鮮である。


 恵は雨が降るんじゃないとかなんとか言っていたが快晴じゃないか。

 雨じゃなくて熱中症に気を付けるべきだな。

 俺はいつもより多めに水筒を持っていく。

 それとプログラムと筆記用具、弁当、タオルをかばんに入れる。

 授業道具がいらないからメッチャ軽い。


 今日は普段より30分早く登校しなければならない。

 なのでそれに合わせ寮を30分早く出る。

 俺は普通に30分前には学校に着く。

 教室には半分くらいの生徒がいて、午後の仮装レースの予想をしている。

 こういうイベントごとの時はみんな早く来るんだよな。


 なんか毎年、非公式で仮装レースに出場する生徒を当てる賭けが行われているらしい。

 賭けというのは仮装レースに出場する20名全員を当てることである。

 毎年ほとんどの人が全員当てることが出来てないので当たった人はかなり儲かるらしい。

 ちなみに誰も当らない年もあり、そんな時は体育祭の打ち上げの経費として使われる。

 俺は賭けに参加しないがそれでも仮装レースに出るのが誰なのか気になる。


 先輩たちは一攫千金を夢見てかなりの人数が賭けに参加するらしい。

 同じクラスの人もちらほらと参加してる人が見受けられる。

 そんなに楽して儲けたいのか?

 いやどちらかというと宝くじみたいに当たりを夢見ているだけで、当たれば儲けものぐらいの感じなのだろう。


 俺は改めてプログラムを確認する。

 まず開会式があり準備体操をする。

 その次から競技が始まり、競技の最後は仮装レースだ。

 その後に閉会式があって終了という流れだ。


 片付けは今日体育祭が終わってから行われる。

 そのため帰るのは19時くらいになる。

 今までの中で最も遅く帰ったので22時という記録が残っている。

 みんな早く帰りたいという理由で片付けを頑張るのだが大抵の生徒は翌日の土曜日は筋肉痛で動けなくなるらしい。

 だから体育祭前は宿題を出してはいけないという暗黙のルールが先生たちの中であるらしい。

 

 しかし仮装レースに出場した男子10名、女子10名の計20名は写真撮影を行い片付けには参加しない。

 撮った写真は文化祭でブロマイドにしたり写真集にしたりして売りに出される。

 毎年結構売れるらしい。

 出場者の20名はタダで写真集がもらえる。


 写真撮影は近くのデザイン専門学校に依頼してその学校の教師が来てくれる。

 その教師はプロではないがコンテスト等で入賞した実績を持つ教師なのだ。

 普通の競技の様子などはデザイン専門学校の生徒さん(計120名)が撮ってくれる。

 もちろんうちの高校からもPTAが写真撮影をしてくれることになっている。

 だがデザイン専門学校の人の方が写真を撮るのが上手い。


 キーンコーンカーンコーン


 ガラっ


「席につけ。出席をとるぞ」


 チャイムと同時に扉が開け放たれ先生が入ってくる。

 俺は思考を現実?(ゲーム内なので微妙だが)に意識を呼び戻す。

 先生は名前を呼び出席点呼をすましていく。

 全員の出席点呼が終り午後からの仮装レースの投票を行う。


 投票は男子は女子の名を、女子は男子の名を3名書かなくてはいけない。

 ただクラス、学年は問わない。

 まあほとんどの人が自分がよく知っている校内の有名人や同級生を選ぶのであるが………


 投票の上位10人が仮装レースに出られるわけだ。

 モデル業を目指している人はまず仮装レースに出ることを目標にしているしスカウトも注目をしている大規模なイベントである。

 まあ仮装レースに出たからといって必ずしもモデルになれるわけではないし、仮装レースに出てないからといってモデルになれないわけではない。

 だが出たほうがアドバンテージになるのは確かである。


 俺は特に興味がなかったので知り合いの女子の名前をあみだくじで決めて書いた。

 興味はないといっても知り合いの女子が出場するのは誇らしいからだ。

 俺は仮装レースに出られないからだろうからな。

 仮装レースに出場する男子は大抵イケメンのリア充である。

  

 死ねばいいのに………


 しかしこの仮装レースは恋人がいる人には票は集まりにくい。

 なぜなら仮装レースに出場した人を恋人にしたいとみんなは考えるためすでに恋人のいる人には票は集まりにくいのである。

 むしろフリーでモテているとか、顔、容姿が良いとかで決められることが多い。


投票が終わりパラパラとグランドに集まり始める。

 グランドには24枚の大きなシートがあり、1クラス1枚である。

 この24枚のシートでグランドのトラックの半分を囲む。

 残りの半分は先生たちがいる本部と保護者が見る来賓席だ。

 あとトラックを囲っているのは入場門と退場門だ。


 来賓席には100を超える椅子が置かれている。

 椅子が多いかなと思っていたのだが、その心配は杞憂であった。

 仮装レースは全国でもやってる高校が少なくたくさんの人が見に来る。

 まだ開会式も始まってないのにすでに満員である。

 先生曰く早く席を取っておかないといい席で仮装レースが見られないからだそうだ。


 俺は自分のクラスのシートの所に行く。

 40人はさすがにきついが半分の20人なら余裕で座れるくらいの大きさがある。

 俺は靴を脱ぎ、シートの上に上がる。


 周りを見渡すがまだ人は集まってきていない。

 せいぜい1クラスにつき3~4名といったところだ。

 快晴なのでギリギリまで校舎内にいたいという気持ちは分からなくもないが、早く集まってくんねえかな。

 保護者の視線が集まっている。

 おそらくどんな新入生が入ってきたのか気になってるのだろう。

 その証拠に入学式で見かけた同級生の保護者は周りを見渡しこちらを見ていない。

 

 さて開会式まではあと10分ほどだ。

 本部の方を見ると先生たちが打ち合わせをやっている。

 おそらく最終確認でもやっているのだろう。

 先生たちの中に4人の生徒が見えた。

 あれは生徒会か……


 会長と恵が俺に気づき手を振ってくる。

 俺は保護者達に気づかれないように控えめに手を振り返す。

 俺が手を振り返すと2人は笑顔になる。


 開会式まであと5分ほどになると次々に生徒が自分のクラスのシートに集まってきている。

 2年生と3年生は去年に体験してるからか素早く自分のクラスの所に行っている。

 1年生はキョロキョロあたりを見渡し自分のクラスのシートを見つけると走って行っている。

 少し1年には分かりにくいようだ。


 開会式は背の高い順に並んで入場するらしい。

 残り3分となったところで今までシートで休んでいた人も腰を上げ並んでいってる。

 俺も背の順に並ぶ。

 俺の身長は真ん中より少し高いほうによっている。


 全学年、全クラス男子1列、女子1列の2列に並ぶ。

 全クラスが並び終えると音楽が流れる。

 その音楽に合わせ足踏みを始める。


 ドォン!!


 大きな太鼓の音がする。

 その音に合わせ前進し本部前まで行進する。

 本部前まで行進するとその場で足踏みに変わる。

 

 ドォン!!


 太鼓の音が鳴る。

 音に合わせて1,2,3のタイミングで足踏みをやめる。

 音楽も止まりシーンと静寂の時間が生まれる。


『これより第97回体育祭を開会します。まずは開会の挨拶を生徒会長、七草御影さんに行ってもらいます』


 司会の人がそう言うと会長が軽く走って本部前に置いてある朝礼台の前に立つ。

 朝礼台に上がり一礼する。


「今日は快晴で絶好の体育祭日和となりました。私たちは今日の為にいろいろと準備をしてきました。お越し下さったご来賓の皆様、今日はそんな私たちの体育祭を存分にお楽しみください。そして生徒の皆さん今日は精一杯頑張り、楽しみ、応援し体育祭を成功させましょう!以上で開会の挨拶を終わりにしたいと思います」


 会長は一礼して朝礼台から降りる。

 生徒、教師、来賓の人達から拍手が送られる。


『続いて校長の八戸はちのへ先生に挨拶をいただきます』


 そして朝礼台の前に立ったのは少女だった。

 おそらく身長は140センチもない。

 え、校長子供………?

 鮮やかな黒髪をなびかせ少女は朝礼台に上がる。

 背伸びをしてマイクを取る姿がなんか背伸びしてるみたいで庇護欲をそそられる。


「えーまず私のことを幼女と思った新入生諸君、入学おめでとうございます。ご挨拶が遅れたことまことに申し訳ありません。私はこの学校で校長をしています八戸夜桜よざくらと申します。年齢は20です。まだ若い年齢ですが小学生などと口にしたものは特別課題を差し上げますので楽しみにしていてください」


 笑顔が怖い。

 ロリとか言った暁にはどうなるかわかんねえぞ。

 注意しなければ。


 あれで20かよ。

 校長にしては若すぎだろ。

 まあ優秀な人なんだろう。

 だとしたら問題は見た目だな。

 どう見ても11~12歳だぞ。

 どんなに頑張っても15歳が限界だぞ。


 来賓席から笑いが起こる。

 ちらほらと「今年もやったな」と聞こえてくる。

 もしかして毎年校長の挨拶と脅しを体育祭でやってんのか。

 いつから校長やってんだよ………


「えー私は15の時に飛び級しまくって校長としてこの学校に派遣されました。今年で5年目ということになります。毎年同じ質問が寄せられるので今年は先に言っておくことにします」


 今度は来賓だけでなく生徒の方からもちらほらと笑いが起こる。

 中には苦笑いをしている先輩がいる。

 おそらくあの先輩はいつからこの学校で校長やってるのか聞いた人だな。


「えーそれでは体育祭の挨拶をしたいと思います。今日は絶好の体育祭日和で嬉しく思います。1人1人が全力でプレーし優勝を目指してください」


 校長は一礼する。

 そして朝礼台から降りる。

 短かった。

 こういう時の校長の話って長いものではないのか?

 こっちとしてはありがたいけど。


『続いてPTA会長烏山様よりご挨拶をいただきます』


 おいおい校長が先生でPTA会長は様かよ。

 なんかPTAが学校の支配者みたいになってるぞ。

 そしてこちらの話は長い。

 あー早く終わってくれ。


 PTA会長は普通に50代くらいのおっさんだ。

 だが話が長いせいなのと校長が空気を読んで早く話を終わらせた為、来賓の人も生徒も先生たちすらもうんざりとした視線を向けている。


 視線に気づいたのか慌ててまとめに入った。

 こっちは暑い中ずっと立ってるんだ。

 さっさとしろや。


「――――以上で挨拶を終わらせていただきたいと思います」


 PTA会長が朝礼台から降りる。

 やっとか………

 長かった。


『続いてプログラム1番、準備体操を行います』


 あーそういえばあったな。

 ちなみに優勝旗返還は行われない。

 なぜなら毎年各学年3位まで表彰され優勝は優勝旗、準優勝は杯、3位は盾を受け取る。

 つまり各学年から優勝、準優勝、3位が出てるため計9クラスの返還となり非常に時間がかかるためである。

 以前優勝クラスのみの返還を行えばいいという話が出たらしいのだが、前3年生は既に卒業してるため優勝旗返還はなしになったらしい。


 俺達は体操体系に広がる。

 横が両手を思いっきり伸ばしてもぶつからい程度で前後が前ならえをした時の2倍の距離を開けている。


 ラジオ体操の音楽に合わせて体操を行う。

 体操をしている途中でこっそり周りを見渡すとやはりと言うべきか真面目に体操をしない奴、真面目にやってるが動きが面白いことになっている奴がいる。


 来賓の人達も笑いをこらえてる人が数名いる。

 あの人たち絶対気づいてるな。

 それに対して面白い動きをしている生徒はまったく来賓の人たちの反応に気づいていない。


 やばい笑いをこらえてたら腹筋が痛くなってきた。

 我慢だ。我慢するんだ俺。

 ラジオ体操は既に終盤、あと少しだ。


『深呼吸です。ゆっくりと深く息を吸って…………吐きます』


 俺は深呼吸をし心を落ち着ける。

 なんとか噴出さずにすんだ。

 ラジオ体操が終り生徒は1度始めに並んでいた体系に戻り、応援席へと帰っていく。


「零君、お疲れ様」


 美咲がねぎらってくれる。

 嬉しいんだけど早くね?

 まだラジオ体操しただけだよ。


「零君、ものすごく笑いをこらえてたでしょう?」


「気づいてたのか?」


「私も笑いこらえるので必死だったけど……」


 美咲も気づいていたようだ。

 他にも何人か笑っている人がいる。

 みんな気づいてたんだろうな。


 ここからは競技に出場する人は招集場所にむかい、それ以外の人は応援席から応援するという形になる。

 俺の出番はまだなので応援席に向かう。

 

 




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