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撮影の物語

この話を読む前に1度第2話時間割の物語を読むことをお勧めします。

 5月28日(水)


 テストも終り普通の授業の日々が戻ってきた。

 今日は映像実習の日だ。

 ようやくシナリオを絵コンテにしたりロケハンしたり配役キャストを決めたりし終えたのだ。

 ちなみにロケハンとはロケーションハンティングの略で撮影現場の下見をすることである。


 ちなみに配役キャストは以下のように決まった。

 主人公の少年役……逢坂 零

 対国家兵器役……一色 恵

         二神 翔

         三上 颯

         四ツ原 奏

         五月雨 快

         六角 愛

         七草 御影

 ハーフの美少女役……桜 美咲

 以下略だ。


 それより俺主人公だよ。

 会長権限を使って1年の授業に紛れ込んだくせに今日撮影に来ていない会長はおいとくとしても順当な配役キャストである。

 対国家兵器役は名字に1~7までの数字が入ってるし。

 俺の名前は本当は『れい』と読むんだけど『ぜろ』と読むことが出来るし、なんか対国家兵器を凌駕するみたいな感じでカッコいい。

 ヒロインのハーフの美少女役も本当は本物のハーフがいればよかったんだけどいないのでクラス1の美少女である美咲を選んだのはナイスだと思う。


 他にもというか同学年のほとんどの人が出演しているのだが多いしどうせモブキャラなので割愛させてもらった。

 ほとんど背景をCGを使って合成するのだが合成せずとも撮れるところは今日やってしまうのだそうだ。


 というわけで俺達は現在グランドに来ている。

 一番最初の主人公が戦闘訓練で無能っぷりを発揮してるところの撮影だ。


 生徒がカチンコを持ってシーン数、カット数、テイク数をしゃべっている。

 カチンコというのは小型の黒板の上に拍子木をつけたものだ。

 よくドラマ撮影などでパチパチ言わせてるやつだ。

 シーンというのは場面だ。

 国語などの段落で分けてあるのが近いと思う。

 カットというのはカメラが回り始めて止まるまでに撮影された画面のことだ。

 テイクは撮影回数だな。

 おっと撮影が始まったようだ。


 テイク1


「くっ」


 俺は腕立て伏せの途中で力尽き倒れる。

 もちろん演技だが。


「何をやってるんだ!逢坂!」


 先生役というか本物の先生に怒鳴られる。

 本名をそのままキャラクターの名前にしてるし先生役を先生がやってるので本当に怒られた感じになってくる。

 ていうか先生ノリノリだな。


「すいません!」


俺はそう言うと腕立てを再開する。

 

「カット!」


 俺は腕立てをやめ皆の方に行く。

 今の撮影がOKなのか確認するためだ。

 ここでNGだった場合撮り直しということになる。


「どうだった?」


「このシーンはOKだね」


 よし!1発OKだな。

 つーかどうせ最後はアフレコするのだから少しセリフをミスっても問題ない。

 ど忘れとかは取り直しだけど。

 この調子でどんどん撮影を進めていこう。

 俺達は体育館にやってきた。

 別の学年が授業でグランドを使うためだ。

 次は俺が対国家兵器の1人と戦って勝つシーンだ。

 このシーンは俺と翔でやる。

 床にはけがをしないようにマットをしいてある。

 けが対策は重要だよね。


 ちなみにアフレコとはアフターレコーディングの略で映像を見ながら、それに合わせてセリフやSE(効果音)を録音する方法のことである。


 テイク1


「はぁ!」


 翔が走って近づいてくる。

 この間俺は一切動いていない。

 なぜならここは翔が超スピードで近づいてくるシーンだからだ。

 当然、現実の人間にそんな芸当はできないので早送りで再生することになる。

 しかし俺が少しでも動いてしまえば早く送りがバレバレになってしまう。

 たとえ早送りで再生しているとバレていてもそう見せないのが重要だと俺は考える。


 翔がゆっくり殴りかかってくる。

 俺はそれを躱し手をかざす。

 ここは後でCG合成するところなのではた目にはごっこ遊びにしか見えない。

 現に、俺達の演技を見て笑ってる奴が何人かいる。

 笑うなよ!こっちは一生懸命演技してんだぞ!


「カット!」


 俺と翔がみんなの方へ歩いていく。

 そして映像を確認する。

 一度早送りで確認をする。 

 すると超スピードで俺に近づいて殴りかかってきた翔を俺が一瞬で倒したように見える。

 おお~すげー。


「これもOK」


 またも1発OKだ。実は俳優の才能があったのか?

 次は俺にやられた翔との会話のシーンだ。

 ここは普通に会話するだけなのでセリフを間違えなければ大丈夫だ。


 テイク1


「くっなぜだ!?貴様は戦闘員の中でも最弱だったハズだ!」


 倒れている翔が叫ぶ。

 俺はそんな翔を見下ろしながら言う。


「悪いな。僕には特殊な能力ちからがあってな。しかしこの能力ちからは強すぎるんだよ。だからこの国……いや世界でも最強レベルの君たちにしか使えないんだ」


「特殊な能力ちからだと!?それは一体……」


 翔の顔が驚愕に染まる。


「それは…………なんだっけ?」


 セリフのど忘れをやってしまった。

 これが動画で助かった。

 劇とかだったら終わってたわ。

 それにしても予算削って画用紙買ってカンペ作らないからこういうことになるんだよ。

 カンペとはカンニングペーパーの略で撮影中に出演者にセリフ等を示す紙のことである。


「カット!カット!」


「零君『状態異常ステータス操作コントロール』だよ」


 美咲が教えてくれる。

 そういえばそんな中二っぽい名前の技だったな。

 効果を聞くと本当にチートだよな、と思う。


「おっと。そうだった」


 テイク2


「くっなぜだ!?貴様は戦闘員の中でも最弱だったハズだ!」


 倒れている翔が叫ぶ。

 俺はそんな翔を見下ろしながら言う。


「悪いな。僕には特殊な能力ちからがあるんだ。しかしこの能力ちからは強すぎるんだよ。だからこの国……いや世界でも最強レベルの君たちにしか使えないんだ」


「特殊な能力ちからだと!?それは一体……」


 翔の顔が驚愕に染まる。

 俺はドヤ顔で答える。


「それは『状態異常ステータス操作コントロール』だ」


「『状態異常ステータス操作コントロール』だと!?そんな能力ちから聞いたことがないぞ!」


「あたり前だよ。これまでずっと隠してきたんだから」


 俺は両手を広げ高々と叫ぶ。

 なんか悪役っぽくて嫌だな。


「それはどんな能力ちからなんだ?」


「ありとあらゆる状態異常を操作できるのさ。毒、石化、麻痺、眠気、病気、身体能力、混乱、魔力異常、凍結、魅了、気絶、火傷、出血、暗闇、ひるみ、これらすべてを操れるんだよ」


「なぜそれほどの力を隠す。力を隠さなければ無能と罵られることなどなかったハズなのに」


 翔は何でか分からないといった風に質問する。

 それに俺は心外そうに答える。


「なぜ?そんなの決まっている。戦争に参加したくなかったんだ」


「そんなの誰だってそう思ってる!なぜ貴様はその能力ちからを戦争を終わらせる為に使わない?」


 俺は八ッとなる。

 そうだ。みんなが思ってることなんだ。

 それなのに俺はみたいな表情を作る。

 

「カット!」


 ここで1度演技を止められる。

 せっかくのってきたところだったのに。

 まあ長すぎると次のシーンで失敗したらまた長いセリフ言わなきゃなんないし仕方がないな。


「二人とも迫真の演技だ。凄かったぜ」


「零がここまで演技できるとは…意外だったわ」


 まあ俺もここまで出来るとは思ってなかった。

 これはかなりいい作品になるんじゃいか?

 たしか文化祭で上映するんだよな。

 撮影間に合えば良いけど。

 でも楽しみになってきた。

 俺が主人公でチート能力持ち、これは絶対ビデオに録画して永久保存しないと。

 たしかゲームの中で保存したものでもSDカードに入れることができるからな。


「次のシーンいくよ」


「分かりました」


 俺は次の撮影の準備をする。

 次は先ほどの続きだ。

 

 テイク1


 ハッとする俺


「戦争を終わらせる……?」


「そうだ!その能力ちからがあれば戦争を終わらせるなんて簡単だろーが!」


 翔は必死に叫ぶ。

 倒れても気持ちは折れていない。


「無理だよ……この能力ちからを使えば日本さえも僕の敵になる。僕を消そうとする!」


 俺はトラウマを呼び起こしたみたいな叫び声をあげる。

 そんな俺に翔は力強い言葉をかけてくれる。


「なら俺が貴様を守ってやる!だから!俺と共に戦えぜろ!」


 しばらく沈黙が続く。

 俺は無言で翔に手をかざす。

 翔は立ち上がる。


「本当に…信じて良いんだな……?」


「ああ!」


「なら僕は君に協力するよ。翔くん」


 俺と翔は握手をする。


「カット!」


 いいんじゃないか?

 これは完璧だと思うが。


「どうだ?」


「うん!これは良いよ」


 ここも一発OKだ。

 これでプロローグというべき部分が終わったな。

 俺の出番がという主語がつくが。

 この後はプロローグのナレーションを撮る。


 も撮るらしいが俺はナレーションの方が気になるし出番はないのでナレーションの方にいる。

 だってセリフなしでなんかゆっくり動いてるだけなんだよ。

 早送りでやること前提で撮ってるから仕方がないけど面白くないからね。

 

 テイク1


「時は西暦2500年。150年前の20年に亘る第3次世界大戦の影響でどの国も兵士の育成に尽力していた。それは日本も例外ではなっかた。この時代ではアメリカ、イギリス、ロシアが3強と呼ばれ、そのワンランク下に日本、ドイツ、オーストリア、フランスの4国が2番目セカンドと呼ばれていた。その日本には3強にも渡り合える『対国家兵器』と呼ばれ恐れられていた7人の少年少女がいた」


おおっ!なんかそれっぽい感じだ。

 こちらも当然のごとく1発OKだった。

 この後に7人の実力を表すシーンがあるんだったな。

 いったいどんなシーンになるのだろう。


 次に7人の実力を表すシーンになるのだが、今日は会長がいないので後回しになった。

 プロローグ部分のも会長のとこだけ後で撮るらしい。

 というわけで繰り上げで俺と『対国家兵器』の1人である翔との出会いのシーンを撮ることになった。


 テイク1


 俺はゆっくり歩いている。

 なんか本来なら街を歩いているシ-ンのはずなのにマットの上を歩いてることに凄い違和感を覚える。

 とりえず俺は歩いている。

 うん。

 歩いてるだけだな。

 早く翔よ登場してくれ。


「おい。貴様、止まれ」


 ようやく翔の登場だ。

 俺は足を止め翔の方に体を向ける。


「僕に何か用ですか?」


「なあ貴様戦闘員の中でも最弱って呼ばれてる逢坂ぜろか?」


「そうですけど……」


「ならさ、「キーンコーンカーンコーン


 チャイムが鳴った。

 しまったな。

 撮影やってると時間を忘れてやっちまうんだよな。

 撮影は一時中断となった。

 休憩時間中に撮影してまたチャイムが鳴ると困るからだ。


「零さん。かっこよかったですよ」


「そりゃどうも」


 奏ちゃんが飲み物を手渡してくれる。

 俺はそれを受け取って喉を潤す。

 主人公はセリフが多いから大変だ。


「奏ちゃんの出番はまだ?」


「はい。多分今日は出番はありませんね」


「そうか」


 参加人数が多いこととシーン数、カット数が多いので撮影にはかなり時間がかかる。

 そうするとどうしても撮影をしない暇な生徒が出てくる。

 そんな生徒は基本小道具作ったりカメラなどの機材を運んだりしている。


 キーンコーンカーンコーン


 チャイムが鳴り撮影が再開される。

 先ほどのシーンの撮り直しからだ。


 テイク2


 俺はまたただ歩き続けるだけの演技をする。

 1人でただ歩いてるだけってむなしいな。


「おい。貴様、止まれ」


俺は足を止め翔の方に体を向ける。


「僕に何か用ですか?」


「なあ貴様戦闘員の中でも最弱って呼ばれてる逢坂ぜろか?」


「そうですけど……」


「ならさ俺のサンドバックになれ。弱い奴は戦闘員にいらないんだよ」


 高圧的に翔が言ってくる。


「いきなり何を言い出すんですか!?」


 俺は声を荒げる。


「今、イラついてんだ。いいから殴らせろ!」


 翔は俺に向かって走り出す。

 これが先ほどの俺が翔を瞬殺するシーンに繋がるわけか。

 それにしてもチャイムが鳴らなければ一気にここまで撮影出来たのに……

 もったいない。


「カット!」


 まあこれもOKだろ。

 今日の撮影予定では俺の出番はこれで終わりだ。

 なので休みながら他の生徒の演技でも見させてもらおう。


 スキル『演劇』を手に入れた。印象力が10上がりました。


 僅かではあるが印象力を取り戻した。

 よしよし。この調子で頑張ろう。


 他の人の撮影は話しても面白くないので割愛させてもらおう。

 こうして何とか今日の分の撮影を終わらせることが出来た。

 まずまず順調なスタートだな。


 その後毎週の撮影と編集係が休み返上で頑張ってくれたため何とか10月の文化際までに完成させることができた。

 しかし編集作業や残りの撮影、アフレコ等は描かれることのないお話である。


 



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