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中間テストの物語

このお話で5月後半まで一気にいきます。

 5月14日(水)


 テスト1週間前


「これからテスト範囲を配る。高校入って初めてのテストだ。しっかり勉強しろよ」


 先生がテスト範囲のプリントを配りながら言ってくる。

 そういえばもうそんな時期か……

 確か今日から部活動も停止だったな。


「ねえ零君。みんなで勉強会しない?」


 美咲が話しかけてくる。

 最近はなにかとみんなでやろうと言ってくる。

 なにかあったのかな?


 俺はテスト範囲のプリントに目を落とす。

 うん。

 簡単だな。


 テストは5教科で3日間かけて行う。

 学年が上がると選択科目のテストがあるため3日間になったらしい。

 1年生だけだな。楽できるのは。

 初日が国語、英語で二日目が数学、化学で3日目が社会だ。


 国語は小学2年レベルだし、数学は四則計算だし、化学も理科の実験とか簡単なものだ。

 社会もめっちゃ簡単だ。

 都道府県テストとか懐かしいな。

 英語もローマ字だし。


 とにかく俺達プレイヤーなら勉強せずとも100点を取れるようなそんなレベルである。

 なんで勉強会やらないといけないのか……


「正直簡単すぎて勉強する気がないんだけど……」


「何を言ってるの。ちゃんと勉強しないと赤点取っちゃうよ?」


 ないないない赤点とかありえない。

 でもまあゲーム内じゃこれが高校レベルなんだよな……

 異世界召喚物のラノベで識字率が低かったり四則計算が完璧にできたりするだけで驚かれたりするやつあるけど、異世界に行ってないだけでまさにそれが今起きてるな。


「分かったよ。それでいつやるんだ?」


「今週の土曜日だよ」


「分かった。それでどこでやるんだ?」


「男子寮の零君の部屋」


「俺の部屋かよ!?」


 なんかそのうち俺の部屋がみんなのたまり場になりそうで怖いな。

 どうせ拒否したところで寮に来るのは目に見えている。

 ならいっそ許可したほうが良いか。


「ったく。誰を呼ぶつもりなんだ?」


「ありがとう零君。愛ちゃんと恵ちゃんと奏ちゃんの3人だよ」


 まあ、ある程度は予想してたがまじでか。

 最近美咲はことあるごとに愛さん、恵、奏ちゃんと行動している。

 先週の土曜日からそうなったな。

 やっぱり土曜日に何かがあったんだろうな。

 俺には何も教えてくれなかったけど。


 そもそもあの3人も勉強しなくても満点取れるだろ。

 特に愛さんの学力はステータスはどうか知らないが現実ではかなり高かったハズだ。

 何を今更勉強するっていうんだ。


「分かった。その日は開けとくよ」


「さすが!零君だね!」


 5月17日(土)

 

 テスト4日前・勉強会当日


 今日は8時に起きる。

 もっと寝ていたかったのだが今日は勉教会の日だ。

 俺は部屋を軽く掃除し、少し大きめの机を出す。

 これで5人くらいなら余裕で座れるはずだ。


 あと昼食としてカレーを作った。

 勉強中に料理するのもめんどくさかったので冷たくなってもおいしく食べられるカレーにした。

 ご飯はお昼時に炊き上がるようにタイマーをセットしておけば問題ない。

 

 これで準備完了。


 ピンポーン


「はーい」


「おはよう零君」

「零おはよう」

「逢坂君おはよう」

「零さんおはようございます」


 4人同時に挨拶してくる。

 4人いっぺんにしゃべるな。

 俺は聖徳太子じゃねえんだぞ。


「おはよう。とりあえず中に入ってくれ」


「「「お邪魔しまーす」」」


 今度は4人でハモった。

 部屋に入り机の周りに座る。

 あと2~3人は入れそうなスペースがあった。


「それで何から始める?」


「零、何を始めるの?」


 恵が心底不思議そうに聞いてくる。


「いや、勉強だろ!」


 何言ってんだ。

 勉強会開くっていってたからわざわざ準備したのに。


「あ~そうだったね。勉強するんだよね。はぁ……」


 いやいや最後のため息はなんだ。

 本当に勉強する気あんのか?

 途中から遊びに変わるグダグダなのは嫌だぞ。


「逢坂君ってそんなに真面目だったっけ?」


 愛さんが意外そうに聞いてくる。

 失敬な。

 俺は意外に真面目だよ。


「もしかして勉強会と言うのは嘘で、遊ぶために来たんですか?」


 愛さんに聞いたはずなのになぜか奏ちゃんが答える。


「零さんそれはないよ。ちゃんと勉強しに来たんだよ」


「ほほぉ~ならそのかばんに入っているオセロやらトランプやらは何だ?」


「ヤバッ!あ~と、その……休憩中にやろうと思って」


 怪しい。めちゃくちゃ怪しい。

 ヤバッとか言ってるし。

 ここは1つ鎌をかけるか。


「そうか。なら勉強が終わったらやろうか。さあ奏ちゃん教科書出して。まずは勉強だよ」


「えっとその……」


「まさかゲーム類だけ持ってきて教科書忘れたわけじゃないでしょう?」


「奏ちゃん、マズいよ。早く教科書出して」


 美咲が奏に何か話しているが、大方教科書だしてこの場をやり過ごそうとでも考えているのだろう。

 甘いな。

 今日の俺は勉強モードだ。

 遊ばせねえぞ。

 貴重な休日潰しやがって。

 仕返しだ。


「その……忘れました」


「何やってるの奏ちゃん」


「とりあえず私2冊持ってるからコレ使って」


「ありがとう恵さん」


 おい!

 なに目の前で不正やってんだ。

 いい度胸だな、お前ら。

 そして何か工夫をしろよ。

 堂々と目の前でやるなよ!


「零さんホラ!ちゃんと持ってます」


「社会か……なら47都道府県全部言ってみろ。それが出来るまでは休憩なしな」


「そんなぁ~」


「勉強しに来たんだから当たり前だろう」


 俺の正論に反論できないようだ。

 そりゃあそうだ。

 なんせ正しいことを言ってるのだから。


「うー、えーと、北海道、青森県、岩手県、山形県、福島県、宮城県、秋田県、茨城県、新潟県、福井県、長野県、岐阜県、静岡県、東京都、埼玉県、山梨県、群馬県、神奈川県、静岡県、福井県、石川県、静岡県、富山県、京都府、滋賀県、奈良県、和歌山県、大阪府、三重県、兵庫県、鳥取県、広島県、岡山県、島根県、山口県、高知県、徳島県、愛知県、愛媛県、香川県、福岡県、大分県、長崎県、佐賀県、宮崎県、熊本県、鹿児島県、沖縄県、これで47都道府県です。これでOKでしょ!?」


「駄目だ」


「なんでですか~?」


「栃木県が抜けている。あと福井県と静岡県を2回言った」


「う~恵さん、愛さん助けてください」


 恵と愛さんに泣きついたか。

 愛さんが敵にまわるとか厳しすぎる。


「零、私に問題だしてみなさい。絶対答えてあげるわ」


 あ、恵は余裕だな。

 ゲーム内じゃ賢いのだろうが、俺にテストの点で1度も勝ったことがないからな。


「いいだろう。なら47都道府県の県庁所在地を全て言ってみろ」


「何よ!その問題!」


「答えられないのか?」


「分かったわよ。やってあげるわよ」


 こんな見え見えの挑発に乗ってきた。本当に扱いやすい奴だ。


「札幌市、青森市、盛岡市、仙台市、秋田市、山形市、福島市、水戸市、宇都宮市、前橋市、埼玉市、千葉市、新宿区、横浜市、新潟市、富山市、金沢市、福井市、甲府市、長野市、岐阜市、静岡市、名古屋市、津市、大津市、京都市、大阪市、神戸市、奈良市、和歌山市、鳥取市、松江市、岡山市、広島市、山口市、徳島市、高松市、松山市、高知市、福岡市、佐賀市、長崎市、熊本市、大分市、宮崎市、鹿児島市、那覇市、これでどう!?完璧でしょ!」


「いや駄目だ」


「どうしてよ!?」


「埼玉市ではなくさいたま市だ」


「そんなのどっちでも良いじゃない!」


「そういうことを言ってる奴がテストで間違えるんだ!」


「うっ」


 そう俺も中学の時に1度やった間違えだ。

 みんなも注意しろよ。


「最後は私だな。逢坂君」


 いよいよ愛さんか……

 愛さんに答えられない問題があるのか?

 少なくともテスト範囲内の問題にはない!


「愛さんには日本の旧国名を答えてもらいましょう」


「なっそんなのテストに出ないだろう!!」


「そもそも愛さんは人に教える側だ。それを答える側にしてるのですからこれぐらいの難易度アップも当然だと思いますが?」


「分かった。旧国名だな?」


 よし!乗ってきた。


「ええ」


「蝦夷、陸奥、羽後、陸中、羽前、陸前、佐渡、越後、盤城、岩代、上野、下野、常陸、上総、下総、安房、武蔵、相模、甲斐、伊豆、駿河、信濃、遠江、三河、越中、飛弾、美濃、尾張、能登、加賀、越前、近江、伊勢、若独、志摩、山城、伊賀、河内、大和、紀伊、和泉、摂津、丹波、丹後、但馬、播磨、淡路、因幡、伯者、美作、備前、讃岐、阿波、出雲、備中、備後、伊予、土佐、石見、安芸、長門、周防、豊前、豊後、筑前、筑後、肥前、肥後、日向、薩摩、大隈、琉球、これでどうかな?」


「ぜ、全問正解です」


「おおーさすが愛さん」


「っくまさか旧国名までマスターしていたとは」


「私をなめちゃ困るよ。まあ今回はすべて合っている自信はなかったけどね」


 なんという記憶力だ。

 この問題はかなり難しいハズなのに。

 やはり俺以上の学力の持ち主だ。


「ねえ零さん。お腹すきました」


 俺が時計を見ると13時。

 もうそんな時間か。

 俺は炊き立ちのご飯に温めなおしたカレーをかける。


「ほれ。昼飯だ」


 俺は机の上に人数分のカレーを入れた皿を置く。


「零さんって料理出来たんですね」


「零の作る料理はかなり美味しいわよ」


「そうなのか。楽しみだな」


「カレーだ。おいしそう」


 俺達は少し遅い昼食を食べる。

 カレーうめー。

 やっぱり事前に昼飯用意しといて良かったな。


「ねえ零さん。愛さんがクリアしたんですから昼からは勉強しなくて良いですよね?」


「分かったよ」


「やったー」


 4人は喜んでいる。

 おそらく始めから勉強なんてする気などなかったのだろうな。

 まあ、俺も勉強やる気になれねえし良いか。


 俺達は昼からトランプ、オセロ、将棋、チェス、人生ゲームなどのボードゲームで遊んだ。

 

 トランプでは奏ちゃんがダントツビリになった。

 奏ちゃんが愛さんに勝負を挑んだのだ。

 愛さんを敵に回すとか馬鹿なことを……

 

 オセロではリーグ戦式でやった。

 俺は3勝1敗で2位だった。

 1位はもちろん愛さんだ。

 俺と愛さんの直接対決では僅差だっただけに悔やまれる一戦となった。


 将棋では俺が全勝で1位になった。

 ネットゲームで将棋などのボードゲームもやってたんだ。

 いくら愛さんでもそう簡単に勝てないぜ。

 それでも紙一重の戦いであった。


 チェスでは意外にも美咲が善戦を繰り返し1位を取られた。

 俺は愛さんにも負け3位という結果になった。

 なんということだ。

 俺が3位だと!?

 この結果は予想外であった。


 最後に人生ゲームをやった。

 バーチャルやゲーム機を使ったものではなくレトロな回して遊ぶやつだ。

 ここで今までの鬱憤を晴らすように恵と奏ちゃんが首位争いを繰り広げていた。

 なんで頭を使わないゲームになるとこの2人は強くなるのだろうか?

 俺は最下位だった。

 途中までは3位につけていたのだが終盤に愛さんと美咲が金を稼ぎまくって俺を抜いていった。

 それでも恵と奏ちゃんには敵わなかった。


 今日は結局午後からは勉強しなかった。

 何のための勉強会だったんだろうな。

 ちなみに奏ちゃん以外の3人も1教科ずつしか持っていなかった。

 しかも全部バラバラの教科であった。

 でもまあ楽しかったので良しとしよう。


 5月21日(水)~5月23日(金)


 テスト当日


 全て簡単であった。

 小学生レベルって本当に簡単だな。

 現実じゃこんな簡単な問題でないから余計に簡単だと思ったな。

 国語の漢字も『谷』の読み方を答えろとか、『しんぶんし』を漢字に直せとか簡単すぎた。

 数学も普通に四則計算がでた。

 テストというより100マス計算みたいだった。

 英語はマジでローマ字しか出なかった。

 ⅠamとかYouareすら出なかった。

 化学も簡単すぎた。

 リトマス紙とか懐かしかった。

 社会は都道府県穴埋め問題だった。

 県庁所在地は問われなかった。

 しかも栃木や群馬などのややこしいところは問題に出ず北海道とか沖縄とか小学生ですらわかりそうな所ばっかり空欄にされていた。

 サービス問題なのかと疑ったほどだ。

 俺は完璧に空欄を埋めた。

 

 5月26日(月)


 テストが返ってきた。

 すべて満点であった。

 たとえ問題のレベルが小学生レベルであっても全教科満点は嬉しい。

 他のプレイヤーも全員全教科満点であった。

 当然だよな。このくらい。

 7人が同率1位になっていた。

 なんか今年の1年は賢いとか言われるようになった。

 別に賢くないよ。ただ簡単ぎるんだよ。

 美咲は平均95とかなり高かった。

 恐らく俺達プレイヤーがいなければ1位だった点数だ。

 なんか俺達はズルのようなものなので少し申し訳なく思う。

 でもまあこれで学生の敵、定期テストは終わったのだ。

 これでしばらくは平和だろう。


 学力が10上がりました。運動能力が5下がりました。スキル『全教科満点を取る方法』を手に入れました。



 




 

 



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