06剥奪される褒美
彼女がいさせてくれたから、安全に産まれた。それだけ。
父親なんて最早なにもしてない。パルミティアの中では一番伸び代のない立場。まともに子供を育てられない男なのだ。
欲にも弱く、守る気概もない、自分の感情のコントロールさえお粗末。自分の機嫌は自分で取ろうねと最後に言葉を投げ落として、最後の一撃を加えてルフェインに連れられる。王族達の前から消えて、周りから人がいなくなる体験をした。転移ってすごいな。景色が変わる。
「ここは?」
「自由都市という今の時代で一番考え方が新しい都市のある国、にある一軒家の中」
「自由都市?」
「そうだなぁ、考え方がお前の世界の価値観に一番近いかもな」
「男女的にどうなの」
「かなり近いぞ」
女だからと何か言われたりはしないということなのか。
「そうだ。ここを拠点に妖精達に文句を言いにいく」
勝手に心を読んで答えられたが、パルミティアは相手がそういう存在であると受け入れた。文句を言うということは、なにか特典をつけたのかと問う。
「ああ。勿論。報酬なしはおれだってやだからな」
「それなのに破ったの?格上の相手の約束を?そんなことあり得る?」
「現にお前は全く守られてなかった」
「そうだね。証拠は私だ」
「そうだ。だからやったもんを剥奪しに行くのと、罰を受けさせる。契約違反は許されん」
ここからでもいつでも剥奪や罰するのはできるが、説明すればもっとなにをやらかしたのか自覚させられるとのこと。確かに、具現化した相手が言いにいけば嫌でも目に入るようになる。それにしても、なぜ妖精達は一人残らず男の契約を守らなかったのか。
いくら妖精だろうと、考えた方は人それぞれであるはず。一人くらい、男との契約を守りにきてもおかしくない。
「なにかあったのかな」
「あっても、やらなかったんだから約束のものは返却してもらわなきゃな」
例えるならば商品を渡したのにお金を払わなかったようなものである。食い逃げされ、踏み倒され。許されざる違反行為。
どの妖精から行こうかと言うと、先ずは闇の妖精だと彼はいう。闇の妖精は、妖精の愛し子と呼ばれる人間を最近恋人にして、人生の中の春を謳歌していると。
「闇の精霊に愛し子」
なにをあげたのか聞くと返ってきたのは。
「人型にしてくれと望まれたから人間に好まれる容姿にしてやった。んだが、なぁ」
あいつ真面目そうだったのにな、と残念そうに言われる。そんなのこっちに言われても。
「なにを回収するの」
「そりゃ、人型と恋人の愛し子強制解除だな」
人型は遂行しなかった当然の罰で、愛し子解除も契約の反故。人型にならなければ、愛し子が実家で苛まれていたところへ、人の形として押しかけて助けられなかったのだから、結果を取り上げることにしたらしい。
「人じゃなくなっても愛の力で生きていけるだろ」
「そーだねえ」
適当に返事をして、用意されていたテーブルのオヤツを食べた。
*
ルフェインは用意ができたから行くぞと、旅行気分でいればいいと闇の精霊がいる場所へ行く。そこにいたのは漆黒を擬人化したらこうなるだろうなという美男子。これで愛し子を助けたのか。
「なっ、だ、誰だっ!」
突然現れた二人を、警戒した様子で見る。
「ルフェインだ。お前に人型をくれてやった」
「ル、ルフェイン様!?」
「反応を好きにすればいい」
男は吐き捨てて、冷たい目で妖精を見る。
「お前、おれの依頼をなぜやらなかった」
「え」
「え、じゃねえんだ。頼んだよな?神の嫁を守るようにって」
言われてじわじわと思い出したのかみるみると顔を真っ青にしていく妖精。
「すすすす、すみませんっ、でしたっ!わ、我が妻を助けるために奔走しておりました!」
「ふーん、で?今はもう助けられたんだよな?」
「はい!二年前に!」
「終わった後はどうだ。二年前に助けられたよな」
「うっ」
パルミティアにはなんとなく察せた。二人はきっとイチャイチャしてたんだな。しらっとした冷ややかな瞳が闇の精霊に突き刺さる。
「ひっ、ま、誠にっ!わ、忘れていたわけではっ。ほ、他の妖精達にも助けを求めて、奥方を助けられのですよね?」
まるで、そうであってくれという声音で問いかけてくる男。残念ながら、誰一人参上せずでした。
「いや?五人中五人来なかった」
「な、なんだって!?」
まさかとは思うけど自分が行かなくても他のやつが行ってるだろうということを考えていたのか?職務怠慢!なんの報酬もなかったら仕方ないで済まされたのに、先払いで報酬を渡されているのに。なんという杜撰さだ。
この闇の精霊が一人でも助けに来てくれたら二年早く痛みから解放されたのに。
「お前を闇の精霊から下級のただの妖精に降格させる」
「そっ、それだけ、はっ!」
闇の精霊は汗を流して撤回を求む。
「わかっているのか?それは成功報酬だ」
人型の男を指差してルフェインは咎めた。
「!!……はい」
無茶な要求を言っていることを自覚し始める。
「さて、妖精の愛し子にも用がある」
「え、は、か、彼女にでしょうか?」
妖精はなぜだろうと顔を顰める。
「お前は、恋愛脳で回転率が悪くなってるな……初めてあったときはかなり賢い印象だったのに」
「は、はあ」
パルミティアはルフェインを可哀想と思い始めていた。




