表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/175

88話 ジャグジーです!?


 ミズキたちの向かった先は、泡がゴボゴボと出ている湯船の前だった。


 遠巻きにミズキたちを見つめている者たちが居たが、ミズキは気づくことなくクーへと話しかける。


「泡が出てるのはジャグジーですか?」

「わからない。たぶんそう」

「そんなお風呂もあるんですね~」

「一緒に入る?」

「クーさんもこういうお風呂が好きなんですね!」


 ジャグジーを体験したことのあるミズキは、泡のこそばゆい感覚を思いだし。そんな感想を漏らしていた。そして、つま先を湯船につけると。


「あっつううううい!?」


 後ろに倒れたミズキが転げ回り、慌てたファティマに水を掛けられていた。


 泡の出る風呂はジャグジーなどではなく、沸騰しているお湯、もとい熱湯だった。


「熱過ぎじゃないですか!?」


 勢いよく起き上がったミズキが叫ぶ。しかし、クーを見れば首を傾げていた。そのことにミズキは驚愕きょうがくする。


 クーが一歩を踏みだすと、周りで見守る者たちが息をんだ。しかし、クーは気にすることなく熱湯の中へと入ってしまい、辺りにどよめきが起こった。


「あの、クーさん……熱くないんですか?」

「そこそこ」


 そこはかとない恐怖を感じる光景だ。それに何に対してそこそこなのか、ミズキにはわからなかった。


 信じられないことに、平然と浸かっている様子から熱くはないのだろう。


「一緒に入る?」


 ミズキは全力で首を振った。つま先を触れさせただけであれほど熱かったというのに、全身を浸からせたら、どうなるかわかったものではない。


「残念」


 クーは本当にそう思っているのか、視線を少し下げて悲しそうにしていた。


「全部これにすればいいのに」


 いきなり恐ろしいことを言い始めた。もし、風呂の湯が全て熱湯になどなってしまったら、誰も入れなくなるだろう。

 やがて満足したのか、熱湯からクーが上がり。


「寒い」


 ミズキは嫌な予感がした。即座に振り向き、その場から離れようとしたがクーに捕まってしまう。


「ぎゃああああ! 熱いです、熱いですぅぅぅぅ!?」


 先ほどまで熱湯に浸かっていたクーの体は、凄まじく熱くなっていた。


 必死に逃げだそうとしても逃れることはできず、その体がぴったりと張り付いている。ミズキがばたばたともがくが、放されることはない。


 そして涙目でぐったりとするミズキを、クーが抱きかかえ脱衣所へと向かった。


 ミズキがクーに体を拭かれていると、一九九一が白い煙と共に目の前へ現れる。


「かえの服を持ってまいりました!」

「わ! びっくりしました……」


 そうして一九九一が持ってきたのは、ミズキたちが着ていたものと同じはかまと浴衣だった。


 ミズキは浴衣よりも袴のほうが馴染なじみがなく、いつもと違った格好を楽しめるからと袴にしていた。


 また、クーも同じく袴を選び、ファティマは浴衣にしていた。


「浴衣のほうが着心地がいいからね」


 ミズキがファティマの浴衣姿を見ていると、そんなことを言われた。


 それに一九九一の気配りか、どちらの服も背中が開いたものだったが、ファティマは浴衣のほうがいいようであった。


 そして、背中が開いていることで浴衣には見えず、ある意味扇情(せんじょう)的でもあったが、背中に羽があるのでは仕方がないのだろう。


「では『花風流水』の階層へはどうしますか?」

「今回も転移でお願いしようかな」

「かしこまりました!」


 一九九一が戻る方法を聞けばファティマが答え、両手を合わせて鳴らすと言葉を紡いでいく。


「道(つな)ぐ助けを、他を見失わぬ道しるべを、〈転移〉、『花風流水』!」


 一九九一が言い終わると同時に両腕を広げ、ミズキたちは白い煙に包まれる。煙が晴れればそこはミズキたちが宿泊する建物の中だった。


「一瞬で移動できるなんで便利なんですね?」

「わたしたちはこの『摩天楼』の中ならどこへでも転移できますよ! これもすべてアルマさまのおかげですから!」


 ミズキが思っていたことをつぶやくと、一九九一は小さい体ながらも胸をそらし、誇らしそうに答えた。


「あ、夕食はいつお持ちしましょうか」

「どうしよっか?」

「ボクはお腹が空いてますし今からでもいいですよ」


 ファティマとミズキが話す横で、クーは何も言わすにうなずいていた。


「かしこまりました! すぐにお持ちしますね!」


 言うや否や、一九九一が白い煙に包まれるとその姿を消した。


 待つことしばし、一九九一がほかのきつねっ子を連れて戻ってくる。狐っ子たちは手に皿や食器などを持ち、大皿は掲げるようにして運んでいた。


 そして、狐っ子たちが手と耳と尻尾をせわしなく動かしていく。ちょこちょこと動き回れば、机の上にはあっという間に料理が並んでしまった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もし、面白いと思いましたらクリックしてくださると作者が喜びます。一日一回だけ投票できます。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ