74話 魔法剣の可能性
「ごめんね、ほんとにごめんね」
ファティマがミズキを助け起こしながら謝っていた。そして、ミズキが落ち着くのを待ちジャラックは考えを述べていった。
「どうやらファティマのその腕は握力が弱いようです。剣を振り回すのは無理でしょう」
ジャラックが言った言葉は、剣を持って戦うことに必要な能力が低いという、絶望的なものだった。
「そっか……薄々そんな気はしてたけど、やっぱりそうだったんだね……」
ファティマが光る腕を見て落ち込む。剣を握ることができないと言われ、剣士になる道が閉ざされ悲嘆に暮れていた。
今まで頑張ってきたものはいったいなんだったのか、そんなことを思ったところで事実は変わらない。しかし、ジャラックが希望を見いだす。
「ですが魔法剣なら可能かもしれません」
「え、魔法剣なんてあるんですか?」
魔法剣という単語にミズキは反応する。しかし、ミズキは魔法剣といったものがどんなものかよくわからず首を傾げてしまう。
ミズキがわからないなりに想像する魔法剣は、振ると刀身から炎などが出たりするものだ。
「ええ、ありますよ。私は使うことができませんが」
「〈魔力刃〉とは違うのですか?」
「〈魔力刃〉は武器を魔力の膜で強化して、直接斬ったり叩いたりするものなので違いますよ」
ジャラックが言うには魔法剣とは魔法そのもので斬るとのこと。
扱うには魔法を使えるほどに、魔力操作が習熟していなければならないというものだった。
また、魔力量も相応に無ければすぐに使用できなくなることからも、扱う者は少ないと説明される。
「魔法剣は普通の剣と違い、魔法の切れ味だけで対象を斬るので振った本人に衝撃が伝わらないといった特性があります。ですので、ファティマには最適なものになるのではないでしょうか?」
「そんなものがあったなんて、すごいですジャラックさん!」
そのことでやっと光明が見えたと、ミズキは手を上げて喜んでいた。これでファティマの目標まで一気に近づくことができると。
「良かったですねファティマさん!」
「私にも、扱える剣があったんだ」
ファティマの口調はいつもどおりだったが、望みが見えたことで目はうるんでいた。憧れた存在に、なることができるかもしれないと。
胸の前で手を重ね、その事実を噛み締めていた。
「ですが問題点もありますよ」
しかし、喜ぶ二人にジャラックが水を差してしまう。
「作ることが難しく費用がかさんでしまいますし、作れる人も少ないですからね。それに素材を集めるのも大変ですよ」
しかし、ファティマにとってそれはさしたる問題にはならなかった。
確かに遠いかもしれないが、明確な目標が打ち出されたことでこれから何をすればいいかわかったからだ。
「素材に関してはボクも手伝いますから大丈夫ですよ! 任せてください!」
「うん。ありがとうミズキ」
ミズキが請け負えばファティマは花開くように微笑んだ。
ミズキと一緒ならばなんとかなる気がすると。あとは目標まで向かえばいいのだと。そう思うことができた。
「ミズキが一緒なのでしたら素材については問題はないですね」
そうしてジャラックが時計を見ると、約束の時間に近づいているとのことなので、ミズキたちは『森の都』へと帰ることとなる。
ジャラックと分かれたあと、『森の都』を歩くミズキとファティマは、魔法剣の作り手について心当たりがないかを話し合っていた。
「ファティマさんは何かそういったものを作る人は知らないですか?」
「うーん、結盟ではそんな話は聞いたこともないからわからないかな」
「困りましたね……」
ミズキは腕を組んでうなる。箱庭に来てから会った者たちを思い浮かべるが、剣を作っていそうな人は居なかった。
しかし、そこではたと思い出す。自分の武器などを作ったのはリティスだ。これだけのものを作れるのならば魔法剣だって作れるのではないかと。
「もしかしたらリティス様なら作れるかもしれません!」
「リティス様?」
ファティマは聞いたことがなかった名前に首を傾げていた。
「ボクをこの世界に呼んだ魔女です!」
「ミズキの魔女はそんなこともできるんだ?」
「ボクの長柄戦斧もリティス様が作ったものですからね! ちょっと聞いてきてみます!」
ミズキはそう言うや否や、魔女リティスの下へと帰還してしまった。
お知らせです。投稿方針を変更し毎日更新をやめ、今回から一日10話更新していきます。
ですので更新期間の空白ができてしまうため、執筆中の次章を投稿するのは8月になります。




