73話 ジャラックに相談です
「ジャラックさああああん!」
『森の都』にそんな声を響かせながら、ミズキがジャラックへと突進していた。
「んん! おや、ミズキじゃないですか。あのあと無事に帰ったものだと思っていましたが……」
「それがひどいんですよ!」
ミズキは元の世界に帰ったあとの話をジャラックに伝えていった。
「それはなんとも……わからないところはありましたが大変でしたね……」
ミズキとファティマは合流したあと、ジャラックの下へとやってきていた。ミズキがジャラックに抱きつく横で、ファティマは首を傾げている。
「元の世界?」
ファティマが疑問に思っていたのでミズキは今までの経緯を説明した。
「そんなことがあったんだ。大変だったんだね」
「でもジャラックさんと出会えたから大丈夫でしたよ!」
ファティマが労わるような視線をミズキへと向けている。しかし、ミズキの表情は言葉のとおり明るく、ジャラックを見る目は輝いていた。
「ですが帰る方法はわからないのですよね。これからはどうするのですか?」
「とりあえずは時の素材も集めつつ完全に帰れる方法を探す感じなのかな? 時間制限はありますけど元の世界に帰ることはできますから」
「なるほど。今はそちらの方と行動を共にしているのですね?」
ジャラックの言葉にミズキは頷きつつ当初の目的を思い出す。
「あ、そうでした! ジャラックさんに聞きたいことがあったんです」
ファティマの剣の扱いについてだ。ファティマを紹介し、何かいい方法は無いかと聞いていく。
「でしたら一度どれほどか見てみましょうか。あまり時間はありませんがそれくらいならできるでしょう」
「なにか予定があるんですか?」
「一緒に探索に行く約束があるのですよ。忙しくて嬉しい悲鳴が出ています」
「そうだったんですね!」
ジャラックの目的への進みも順調そうでミズキは安心する。
「では早速向かいましょうか」
*
ミズキたちが来た場所は以前ジャラックとミズキが打ち合いをした、森の中にぽっかりと開いた円状の空間だった。
すでにジャラックは盾と片手剣を取り出し構えている。
「では私が受けますので適当に打ち込んでみてください」
「わかった」
ファティマも片手剣を抜き放つと構え、踏み込んだ。ジャラックに向けて片手剣が振られたが盾に弾かれてしまう。
ミズキの居る方向へ。
緊張しつつ見守っていたミズキが気づいたときには、すでに剣が自身の体へと突き刺さっていた。
反応に遅れ腹部を見ると、剣の柄がおなかから生えているのが目に入る。
「へ? わあああああ! 剣が、剣が突き刺さってますぅぅぅぅ!?」
「ミズキ!?」
「ごねんなさい!」
ファティマが慌てて駆けつけ、刺さった片手剣を無造作に引き抜いた。どばどば血が出るがおかまいなしだ。
その惨状にジャラックは焦り、魔法箱から回復薬を取り出そうとする。しかし、その傷も回復魔法ですぐに塞がってしまう。
ジャラックが慌てて取り出した回復薬を握ったまま停止していた。
「大丈夫?」
「死ぬかと思いました……!」
「ファティマは回復魔法が使えるのですね。かなり焦ってしまいました」
「うん。ほんとに驚かせてごめんね」
次の打ち合いのときには、木の影からミズキは顔だけを出し見守っていた。飛んでくる凶器に備えての行動だ。影から恐る恐る覗き込んでいる。
「気を取り直してもう一度始めましょう」
「わかった」
ファティマが踏み込み、若干赤色の残る片手剣を振る。今度は剣同士で打ち合うべく、ジャラックも片手剣を振るった。
交差し、ファティマの片手剣が弾かれた。
今度はミズキの居た方向とはずれている。しかし、ミズキの近くにあった木に当たるとその軌道を変え、ミズキの横腹へと突き刺さった。
「ぎゃあああああなんでえええええ!?」
ファティマが急いで駆けつけ雑に片手剣を抜くと回復魔法を掛けていく。
ジャラックはやり方を変えることにした。この方法ではあまりにも危険だったからだ。
「まずは素振りをしてみましょう。それを見て判断します」
「素振り、素振りね。ちょっと難しいけど頑張るよ」
「ちょっと待ってください」
嫌な予感のしたジャラックは、離れていたミズキの下へ行き大盾を渡す。震えるミズキは受け取ると目を輝かせた。
「ありがとうございますジャラックさん! これでもう安心ですね!」
ミズキから離れた位置で、ジャラックがファティマの素振りを見ていた。動きそのものは悪くないものだったが、どことなく緩慢な動きでもあった。
何度も振るファティマをジャラックがなるほどと観察していた、そのとき。
ファティマの手から片手剣がすっぽ抜けた。
剣は放物線を描き、大盾を構え縮こまっていたミズキの上空から襲いかかる。へっぴり腰だったミズキの姿勢が仇となり、そのお尻へと突き刺さった。
「ぎゃあああああやっぱりいいいいい!?」
ファティマが駆けつけ、ぞんざいに片手剣を引き抜くと回復魔法を掛けていた。




