72話 剣士を目指す理由
「やりました! やりましたよファティマさん!」
巨剣を叩き斬ったミズキが振り返り、腰に手を当て無い胸を張っていた。
「やったね! あんなもの斬っちゃうなんてすごいよ!」
「ファティマさんのおかげですよ!」
それからは素材を回収し、階段に腰掛ける二人が分配について話し合っていた。
「私は全然戦えなかったからほとんどミズキのものだよ」
「そんな、ファティマさんに武器を直してもらえなかったら倒せませんでしたし半分ずつですよ!」
「結盟でも私の分は少なかったよ?」
「今は関係ないですから半分こです!」
ファティマに構わずミズキは強引に決めてしまう。
「ふふ、ありがとう」
「あ、どうやって分けよう……」
しかし、いくつかある素材を物理的に半分にする訳にもいかず、ミズキが手を組んでうなっていた。
「それなら順番に欲しいものを取っていくか、競売所で換金してお金を分けるかかな。素材が欲しいときは差額分を渡したりもあるよ」
「なるほど! じゃあ順番に取りあいっこですね!」
「なら最初はミズキが選んでよ」
「い、いいのかな……?」
誘惑の言葉にミズキが目を逸らしもじもじとする。チラチラ見るのは階段に置かれた素材だ。
かなり眩しく光るそれらが気になって仕方がないといった様子だった。
「うん。さっきまで落ち込んでたけど、ちょっとだけ元気が出たしそのお礼だと思ってさ」
「そ、そこまで言われたら仕方ないですよね……!」
ミズキは真っ先に一番光の強いものを取っていった。
そのあとは順番に取っていき、終わった頃にはミズキはほくほく顔であった。ミズキの喜ぶ姿を見たファティマもまた笑っていた。
「はぁ、でも剣の扱いは良くわからなかったんだよね……」
一転、落ち込んだファティマがぼそりと呟いた。
剣の扱いについて何かわかるかもしれないと、この迷宮へと来てみたが剣を弾かれるばかりで、収穫と呼べるものはなかった。
「なんだかわたわたして終わっちゃいましたもんね……」
どうすればファティマが剣を満足に扱えるようになるのか、考えてもいい案は浮かんでこなかった。
「そういえばファティマさんはなぜ剣で戦いたいんですか?」
ふと思った疑問をミズキは口にする。驚異的な回復魔法があるにもかかわらず、剣に拘る理由がわからなかったからだ。
「それには理由があってね。一言で言うと憧れかな……かなり前のことなんだけどね」
魔物に追い詰められもう駄目だと思った矢先に、片手剣を持った者が颯爽と現れ助けてくれたのだそうだ。
とても嬉しかったし、その後ろ姿が格好良かったと。それ以来、自分も剣士になりたいと思ったことを話してくれた。
「そのときはまだ魔力の腕も使えなくてね。左腕で頑張ったりもしたけど全然駄目で、それはもう落ち込んだよ」
ファティマの赤く光る腕は、腕や羽が無いことを憂いた魔女に、魔力の応用を教えてもらい、回復属性を高め続けることで習得したのだそうだ。
「でも最近はやっぱり無理なのかなって諦めてた。この腕を見るとみんな気持ち悪がっちゃうしね……」
ファティマは赤く光る腕を生成し悲しそうにする。剣士になりたいとずっと思ってきたが、まるで進展のない状況に諦めかけていた。
「そんなことないですよ! あ、ごめんなさい! 触れられるのは嫌だったんですよね……?」
ミズキがその腕を掴むも慌ててその手を離す。ファティマは自身の腕をまじまじと見つめ、そして小さく笑った。
「ううん、大丈夫だったみたい。こうして誰かにちゃんと握ってもらったのは初めてだったから。こんな腕をわざわざ触りたがる人なんて居なかったしね」
「でも暖かい手でしたよ」
ミズキはもう一度ファティマの腕を触り両手で包み込んだ。
「ほら、こんなにあったかいですよ。優しい人の手です」
手を握られたファティマの顔がみるみる赤くなっていく。ミズキから背けられた顔は羞恥に染まり顔が引きつっていた。
そしてそのとき、ミズキにある考えが浮かんだ。
「あ、剣の扱いはジャラックさんなら何か知ってるかも!」
「ジャラック?」
「はい! カボチャの人なんですけど、とっても強くて優しいんですよ!」
「そうなんだ」
「ジャラックさんなら片手剣を使ってましたし今度聞いてみましょうよ!」
それから二人はカードを触れ合わせ登録する。後日に再び会う約束をした二人が光に包まれ、その姿を消失させた。




