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61話 情けは人の為ならず


「どうしてここに?」

「それは俺が説明しよう。実はジャラックにお前さんが時の素材を集めてるって聞いてな。まぁそのお礼に時の素材を持ってきたって訳だ!」


 ペルナキアが自慢げに語った。


「そんな、悪いですよ……!」

「僕のたちの財産をどう使うか自由、なんでしょ?」


 ミズキの言葉にアルクがいたずらっぽく反論した。にやにやとしたカレヒスが続ける。


「ミズキちゃんが団長に宣言してたからね~」

「確かに言いました……ごめんなさい」

「いやいや、別に責めてる訳じゃねぇよ。要するに気にするなってことだ!」

「あの戦いでみんなも装備とか魔法箱とか、いろいろとなくなっちゃったからすごい喜んでたよ」


 ペルナキアとアルクがミズキは悪くないとフォローする。


「まぁ俺は六万シリーグを別に稼げたからあまり必要なかったんだけどね~」


 カレヒスがそんなことを言えばペルナキアはすでに槍を抜き放っていた。


「ほう、ここでつらぬかれたいのか。念入りに穴だらけにしてやろうか?」


 ペルナキアがカレヒスの額へと槍の切っ先を向ける。その目は血走り口角がつりあがっていた。


「すぐに暴力に訴える短絡的な思考はよくないなぁ」

「二人ともお礼しに来たところで喧嘩けんかしないでよ……」

「それもそうだな」


 ペルナキアはアルクが仲裁により槍をしまう。代わりに素材を取り出しミズキへと手渡した。


「団長は来ることができなかったが俺たち四人分だ。受け取ってくれ」

「ありがとう、ございます」

「良かったですねぇ」

「なんだ、ジャラックも居たのか」

「ええ、ルーリアからの報酬を渡しに来ていたところです」

「なるほどな。ああ、今度予定が合えば一緒に探索いかねぇか?」

「よろしいので?」

「あんたが駄目だったら誰がいいんだよ。アルクとカレヒスも別に構わんだろ?」

「僕は大丈夫だよ」

「俺も問題ないよ~」

「ということだ。もちろんミズキが一緒でも構わないからな。今度一緒に行こうぜ」

「はい! 良かったですね、ジャラックさん!」


 ミズキがジャラックに抱きつく。見上げる笑顔はまぶしいほどに嬉しそうだった。


「ミズキ、暑いから離れなさい」

「嫌です、もうちょっとだけこうしていたいです!」

「はぁ、仕方ないですね……」


 そうしていると通りを歩く人だかりが目に入った。どうやらその集団はこちらに向かっているようだ。


 振り向いたペルナキアがその人だかりを見て納得する。


「ああ、あんたらか。大共闘以来だがどうした?」

「いや、たいした用じゃないんだが……」


 ペルナキアが尋ねると先頭に居た男は口ごもる。



「その……だな。あんたが時の素材を集めてるって聞いたから、俺たちは大共闘の礼をしに来たんだ」


 男に続いてほかの者たちが語るのは感謝の言葉ばかりだった。


「迷宮の主のときも世話になったしな」

「そう、だったんですね……」


 ミズキがしんみりとつぶやいた。


「ああ、だから受け取ってほしい。ちょっと数が多いかもしれないが……」


 男が素材を取り出し、ミズキへ渡すと後ろの者たちもそれに続いた。ミズキの腕はすぐに素材でいっぱいになり、前が見えづらくなってしまうほどだ。


「ありがとうございます……!」

「いいってことだ。カボチャの兄ちゃんもありがとな」

「ああ、俺からもお礼を言わせてくれ! 大共闘のときも助けてくれてありがとな!」

「ここに居る奴らは複雑なところがあるかしもれんが、少なくともあんたはいい奴だって知ってる奴らばかりだ! 何か困ってたら相談してくれ!」


 本当にお礼をしに来ただけだったようで、大勢の者たちの訪問はあっという間に過ぎていった。


 ミズキたち五人だけとなり、先ほどの喧騒けんそううそのように静かになってしまう。


「ジャラックさん?」


 ミズキが嬉しさを隠せない声で話しかけた。


「なんですか?」

「良かったですね!」

「……まぁ、そうですねぇ。いことなんでしょう。ただ、急に良くなりすぎて戸惑ってもいますが」

「はっはっは、あんたほどの腕なら引く手数多だろうよ!」


 ペルナキアが快活に笑い飛ばし自信満々に断言した。


「ジャラックさんは強いですからね!」

「んん、それだけの時の素材が集まればミズキの目標も達成できるのでは?」


 恥ずかしくなってきたのか、ジャラックはせき払いすると話題を変えた。


「そうですね、これだけあれば帰れると思いますよ!」

「あ? 帰るってどこにだ? 魔女んところか?」


 帰るという言葉で、ペルナキアが思い浮かぶものは魔女の領域くらいだ。


「いえ、ボクは別の世界から呼ばれちゃったみたいで。帰るために時の素材が必要だったんです」

「別の世界からねぇ。魔女んところみたいなもんか」

「僕はその向こうだと思うけど。でも、そっか。帰っちゃうんだね」


 そう考えたのはアルクだ。寂しそうにつぶやき耳がしおれていた。


「違う世界かぁ、ちょっと興味あるな~」


 頭の後ろに両手を回して話すカレヒスは、ミズキの世界が気になるようだった。


「ボクの世界は回ってますよ!」

「あんまり行きたくないな~」

「なんでですか!?」


 ミズキが不服とばかりにカレヒスを見上げ問いただす。


「回り続けたら酔いそうだし」


 返ってきたのはそんな言葉だった。


「大丈夫ですよ! 丸いですけどみんなその上で生活してますし」

「うん、ますます行きたくなくなっちゃったね~」

「どうして!?」


 挽回ばんかいむなしくミズキはうなだれる。


「丸くて回ってる世界なんて僕には想像ができないね……」

「地面が動き続けてるとかおっかねぇ世界だな!」


 アルクとペルナキアも好き勝手言い始める。


「ひどいです! ジャラックさんはそんなことないですよね!?」

「私もできれば住み慣れた場所がいいですねぇ……」


 ジャラックにすら裏切られたミズキは、ただただ口を開けて放心するしかない。


 目を見開いたまま固まるミズキが動きだすまでには、それなりの時間を要することとなった。


 ようやく動きだしてからは少し雑談を交わし、別れの挨拶を済まし解散となる。


 ミズキはそのままリティスのもとへと向かっていった。


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