48話 ミズキの寝たあとは
話しているうちにもジャラックが魔物の接近を感知する。
「言ってるそばから来ましたね。私が前に出ます」
「了解だぜ!」
ペルナキアが前に出たジャラックの後ろに続く。現れた機兵の踏みつけをジャラックが盾で弾き、その横から槍が胴体を貫いた。
すぐにペルナキアが距離を取ると、目の前を機兵の足が通り過ぎていく。次の瞬間には円錐状の岩が機兵を貫き動きを止めていた。
カレヒスの魔法により床の石材が変化したものだ。
「恐らく頭部が弱点だと思われますのでそこを叩きましょう」
アルクはカレヒスから渡された矢をつがえると、頭部に向かって撃ち出した。高所にある部位にも無理なく届き、何本も突き刺さっていく。
動きが完全に止まった機兵は光る粒子となり散っていった。
「いい連携です。やはり魔法は便利ですねぇ」
「止まってる的に当てるだけだからすごく楽だよね」
ジャラックが賞賛し、アルクも今の戦闘についての感想をのべていた。
「これでも結構疲れるんだよ?」
とは言うものの、カレヒスはさして疲れた様子もなかった。
「あれ、俺要らなくね?」
「前二人と後ろ二人でバランスはいいのでは?」
「なるほど、それもそうだな!」
ペルナキアは一瞬、自分が不要なのではないかと焦ったが、ジャラックの言葉に懸念が晴れたことで調子を取り戻す。
その後の戦闘も全て危なげなく終え、その道程は順調であった。しばらく進むと小部屋が見つかりひとまず休憩することとなる。
「ここは、安全なのかしら?」
「そればかりはわかりませんねぇ」
ルーリアの疑問に、ジャラックがここでの野営は初めてだからわからないと返す。
「見張りを立てるか? 俺が最初でも構わないがどうする」
ペルナキアが交代での見張りを提案した。
「魔物が近くに来たらわかりますので武器だけ出しておき、いつでも戦えるようにしておくのはどうですか?」
ジャラックがいつも自分で行っている警戒方法を提案すると、ルーリアがそれを採用した。
「そうしましょうか。魔物の接近がわかるのなら見張りで体力を消耗することもないし、〈風の知らせ〉で常に魔力を消費してるから、感知する魔法も必要ないのはかなり助かるわ」
方針が決まると野営の準備を進めていった。しかし、そこで問題が浮かび上がる。
「食事、どうしようかしら」
ルーリアが悩む背中ではミズキが寝息を立てている。
「ミズキは寝ていますからねぇ」
「起こすのも可哀想だし勝手に魔法箱を探るなんてやりたくないわね」
結局、普段の食事となりスープと固焼きパニネ、干し肉を用意していった。
「かってぇ……ミズキの出すものがマジで恋しくなるな。しかしその点アルクはいいよな」
「こればかりは僕の特権だね」
固焼きパニネの硬さにペルナキアが愚痴をこぼした。その横で、固焼きパニネや干し肉だろうと関係なしにカリカリと食べているのはアルクだ。
特に苦もなくかじっているのはその歯ゆえか、軽快に食べ進めている。一方でルーリアは愚痴を言い続けていた。
「硬いよぉ……美味しくないよぉ……」
その硬さとわびしさにほろりと涙している。
「俺は魔法で口の中を強化してるから実はそんなでもないんだけどね~。まぁ味はどうしようもないけど」
カレヒスは変わらない調子で食べ進めていた。
「え、お前そんなことできんの? 俺にも使ってくれよ」
「やだよ面倒くさい」
ペルナキアの要求はすげなく却下された。
「コーヒーですが良かったら要りますか?」
「お、ありがたくもらうぜ。旨いなこれ」
助かったとばかりに、ペルナキアがコーヒーを片手にパニネをばりばり噛み砕いていた。
「ある程度日持ちのする飲みものはこだわってましたからねぇ」
「私にももらえるかしら」
「ええ、構いませんよ」
五人がコーヒー片手に語る楽しい時間は過ぎていき、それぞれが毛布を被り寝に入る。
時刻は夜ではあったが、この迷宮内は明るいままなことに感覚が狂ってしまう。それでも夜の静けさはやってきていた。
ミズキが寝息を立てるその横にはルーリアがおり、やはり抱き枕の代わりにされていた。ほかの者たちがまだ起きないころにミズキの目は覚める。
なんとか抜け出し、いつものように日課の素振り終えてから朝食を取った。
起きてからそれなりの時間がたっていたが、ジャラックたちが起きる気配はなく、ミズキは暇で仕方がなかった。
少し前まではほかの者たちの寝顔を見たりして楽しんでいたが、長続きするようなものでもない。
しかし、何もやることがないからといって一人で探索に行くこともできない。
いっそ魔物が来たらみんなを起こせるのではないかと考え始めてしまうが、結局はひたすら時が過ぎるのをぼーっと待つばかりであった。




