求嫁占
その剣を手放したのは、いくつかの偶然の悪戯が積み重なったためだった。
けれど、それを後悔してはいない。それを手放したために手に入れた縁もあった。
その日。辻で占いをする美少年に出会った。歳の頃は十になるかならずか。際立った顔立ちは辺りを圧する程。笑顔は人懐こく、歳に合わぬ知性を感じさせる瞳。出会いからして「にぃちゃん、安くしとくよー! 占いしようか?」とにこやかにしつつもしっかり商売するところは後年になっても変わらなかったが。ふと気が向いてそのまま頼んだら、「たくさん嫁さんを貰って子供も何人か生まれる、えらい立場になる。窮屈だけど」と返ってきた。
「窮屈なのはたまらんな。のんびり楽して過ごせる仕事に就きたいんだが」
笑いを含んで言ったから、少年も冗談だと思っただろう。まあ本気は半分程度だったが。
「んー。まあそれでも大丈夫だろうけど、にぃちゃんは今頑張った方がいいよ」
何か引っかかる言い方にじっと少年を見つめてみる。
「今頑張っておくと、一番最初のお嫁さんが、顔も体も性格も極上のいい女になる」
にやり、としか言えないような顔で笑ってこちらを見てくる。最初の妻、という言葉に私は少し頬が熱くなった気がした。
「どんな女か、占いで判るか?」
「……にぃちゃんがこれから頑張るなら、って条件付きだけど。年はにぃちゃんの二つ下ってところで、顔立ちは二六の頃は可愛くて、大人になっていくに従ってどんどん美人になる。性格は素直で従順、相手のことを考えるやさしさと周囲を慮る思慮深さがある。身の丈に合わせた振る舞いが出来て、身持ちは固いけど優しく丁寧に可愛がればちゃんと望むままに応えてくれる柔軟さもある。もうこれ、理想的な嫁じゃない?」
十やそこらの子供の答えにしては随分明け透けなものがあったような気がするが、気にしないでおこう。必要なのはいい嫁だってことだ。
「ありがとう。いい占いだ。色々これから努力することにしよう」
小銭を出そうと懐を探って少年を振り返ると、忽然と姿が消えていた。座っていた筈の卓や椅子とともに。
少々困った気分にはなったが、払えなかったのはこちらのせいではない。また次に会えた時にでも支払うことにしよう。と私は気分を改めた。
こちらも慌てて割込。
ついでに剣に関するお話は色々考えつつも省略としました。
今後思いついたら追加するかも知れませんが、割込は今回限りになると思います。




