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嫁入り日和
「やあ、こんにちは」
にこやかに赤っぽい髪の青年が声を掛けてくる。
「こんにちは。お久しぶりですね」
美少年もにこやかに応えるが、社交辞令という裏張りがきっちりと張られていて、隙間もない。
「今日は良い日和ですからね。嫁入りにはぴったりだ」
そう言いながら軒先へ手を伸ばす。細やかな雨がしっとりと降っているが空はとても明るい。
「へぇ。そうなんですか?」
「ええ、そうですとも。倭、でしたか? 東の方の国では狐が嫁入りするのだそうですよ」
「へええ。それはまた」
話は半分くらいに聴いておくのがいい。情報としての価値はあまり高くはないだろう。けれどこの青年の場合、ちょっとした裏がある可能性も低くはなかった。
「また寄らせて頂きますよ。阿蘭」
どこか嫌味のような響きがあったが、気にしないでおくことにした。
この青年はそのうちまた出て来るかも知れません。




