果実は実らず
「やあ、こんにちは」
いつものように少年は筮竹を握っている。
「いらっしゃい。占いかい? 何を占えばいいの?」
にこやかに笑っているが、目は酷く冴えた輝きを秘めている。
「そうだな。果実が実るかどうかを」
何か含みのある言い方に、少年は首を突っ込み過ぎないようにすることにした。
「果実、ね。わかった。じゃ、その果実について考えていて」
神経を研ぎ澄まして筮竹を握り直す。その卦がどう出るかはこの男次第だ。自分はあくまでも結果を届けるための器。それが占いを売る者としての本分である。
「出た。……この結果がおじさんにとっていいものかどうかは判らないけど、言っていいかな?」
眉を微かに顰めたのは、少年の物言いのせいか、それとも何かを見通したような眼差しのせいか。
「勿論だとも。教えてくれるかな?」
「不実(実らず)」
あっけないほどきっぱりと少年は応える。男は掌で目を覆うと空を仰いだ。
「ありがとう。これで足りるかな」
もう片方の手で少年の掌に金を落とす。普段の十倍ほどの金額が載せられていた。
「毎度ありがとう」
少年は釣りを出すでもなく、愛想を良くするでもなく、淡々と受取り、そのまま去っていく男を見つめていたけれど、やがて思い出したように呟いた。
「あー。そういえばねぇちゃん、大丈夫かな」
その声はどこかのんびりしていて、さっきまで居た男のことは頭の片隅にも残っていないようだった。




