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memory  作者: 柊 しゅう
5/23

     五


 一学期も後半が過ぎ、一年生はそれぞれの部活に慣れ、放課後には校庭から一年の、タイミングも、声の大きさも揃ってきた掛け声が聞こえてきていた。

 今いる教室の窓からは、歩のいるサッカー部が見える。最近は、放課後にすぐには帰らず少し暇をつぶすのにハマっている。

 しかし、例の天文部には一度も顔を出していない。内田先輩とのメールのやり取りもない。

 正直な話、部活の勧誘を断った理由は自分でもはっきりしていない。運動部でもないし、厳しい部活でもないのだから、入部してもよかったのだ。

 多分、俺は内田先輩のことが少し苦手なのだろう。もちろん、嫌な意味ではない。対面するには、すこしまぶしい・・・と言ったら簡単だが、もっと複雑な感情がある。それがどういったものなのか、わからずにいる。

 歩達サッカー部が一度目の休憩に入ったところで、帰り支度を始めた。

 教室を出ると、廊下の一番端にある教室に自然と目がいった。

この学校は各教室がある棟の一番は端の余った教室が小規模な文化系の部活に貸し出されている。

階段を降りようとしたとき、天文部の方から話し声が聞こえてきた。

他の階だと、天文部ほど小規模ではないが、四、五人程度の文化系の部活がいつも楽しそうに談笑しているのが聞こえるが、この階からはいつもはそんな声は聞こえない。

話し声が聞こえないのが気になって、何日か前に久地先輩に遊びには行ってないのか聞くと、いつもは昼休みに集まったりしているらしい。放課後に集まることは予定が合わず滅多にないらしい。

今日は久地先輩達がいるのか?ああ言った手前、一度は顔を出した方がいいのか?

行こうか行かないか悩んでいる俺に、背後から女子の声がした。

「君は確か飯島君だっけ、何してるんだ?」

 振り返ると、そこには渡辺先輩がいた。

「え、あ、帰ろうとしていただけです・・・」

「ちょうどよかった、この後何か予定ある?」

「いえ・・・特にないです」

 嫌な予感がしてきた。

「じゃあ、ちょっと天文部に遊びに来てよ」

「え、でも・・・」

「いいからいいから」

「ちょ、ちょっと――」

 渡辺先輩は少し強引に俺の腕は引っ張り、天文部の方に歩き始めた。

「おじゃましまーす」

「有彩遅いじゃん。何してたの?」

内田先輩がこちらに顔を向けた瞬間、目が合った。

「君、来てくれたの!」

「すいません。全然来れなくて」

 内田先輩は急いでパイプ椅子をもう一つだし、紙コップにジュースを注いでくれた。その横にはトランプを持ち、険しい顔をしている久地先輩がいた。

「いいよ!今日来てくれたし」

 そう言うと、内田先輩はあのニヤニヤした笑顔を向けてきた。

 その後は、トランプやら人生ゲームやらのテーブルゲームで遊んで時間をつぶした。

 外も暗くなってきて下校時刻が近くなったころ、久地先輩が帰ろうと声をかけたところで、全員帰り支度を始めた。

 駅までは全員一緒だった。内田先輩は例の重そうなケースを持っていたため、久地先輩が気を使い、代わりに持ってあげていた。その久地先輩の荷物を今は俺が持っている。

 駅の近くまで来たところで久地先輩が財布を学校に忘れたと言い出し、取りに戻るため、俺と久地先輩は持っていた荷物を交換し、久地先輩を置いて先に帰ることにした。

 渡辺先輩は、俺と内田先輩とは逆方向で、改札を通った後すぐ分かれた。

 俺と内田先輩は同じ車両に乗った。

「持ってもらっちゃって悪いね」

「大丈夫ですよ。一応男ですから」

 内田先輩は、ありがとうと言うと、俺が背負っているケースに肘を乗せ、体重をかけてきた。ただでさえ体が後ろに傾きそうなのに、そんなことをされた俺は後ろに倒れそうになるのを耐えるため、必死に堪えていた。

「ほらほら、一応男の飯島君。頑張りたまえ」

 内田先輩は楽しそうに笑うと、肘を下ろした。

 その後も何気ない会話が続き、俺の降りる駅が近づいてきた。

「先輩、俺次で降りるんですけど、このケース大丈夫ですか?」

「あ、私も次!」

 同じ駅だったようだ。いままで全然気づかなかった。

 駅に降りると、同じ駅口で同じ方向だった。歩との待ち合わせする場所より何個か前の十字路で内田先輩は曲がるそうだ。

「ねえ、うちまでそのケース運んでよ」

「・・・はあ、いいですよ」

「先輩に対してため息とは、何事だ!」

「後輩をパシるとは、何事ですか」

「えへへ」

 内田先輩の家は思っていたよりは遠くなく、すぐに着いた。

「ありがと!お茶でも飲んでいく?」

 冗談交じりにそういわれ、飲んでいきますと答えてしまおうかと思った。

「・・・遠慮します」

「つれないな~」

 内田先輩はさよならの挨拶を交わすと、家の中にそそくさと入っていった。その背中を眺め、家の中に入っていくのを確認すると、俺は元来た道を戻り自分の家に向かった。


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