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memory  作者: 柊 しゅう
4/23

     四


 何日か経ったある日、昼休みに久地先輩からメールが来た。

【お前、また部活に入部する気とかあるのか?】

 歩と同じこと言ってる。そんなに楽しくなさそうに見えるかな、俺って。

【まだ考えてないです。特に他にやってることないんで、入部したいと思った部活があったなら考えようかと思っています】

【なら、放課後に俺のところ来い。紹介したい部活がある】

 また久地先輩は内容が薄い。でも、この感じだと行っても損はしないだろうし、一応放課後に三年生のクラスに寄っていこう。

 

放課後になると、俺はすぐに三年生の教室に向かった。しかし、そこに久地先輩の姿はなく、久地先輩の友達から伝言をもらった。

どうやら、急用で帰らなければいけなくなったみたいで、案内ができないから内田先輩に案内してもらえという事らしい。やはり部活関係のことだったみたいだ。

内田先輩のいるクラスは、伝言してくれた先輩に教えてもらった。どうやら、真上のクラスらしい。俺は廊下に出て、階段に向かった。

なんで、内田先輩なんだろう。この前カラオケで会っただけなのに、久地先輩はなんで案内役に内田先輩を選んだんだろう。・・・もしくは順番が逆か。

階段を上がろうとしたとき、ちょうど上から内田先輩が降りてきた。

「ちょうどいいところに、話は聞いてるよ。さあ、行こう行こう!」

内田先輩は少し狼狽えている俺にお構いなしに手を引っ張った。恥ずかしかったので、離してくださいと頼み、内田先輩の後ろを少し距離をあけて歩いた。

三階まで階段を上がり、廊下を歩き始めたあたりからどこに向かっているか察した。正直、伝言で内田先輩の名前が出てきたときから予感はしていた。

「さ、入って!」

やはり天文部だった。というか、そんな気しかしていなかった。やっぱり、内田先輩が久地先輩に話した方が先だったんだろう。

「どういうことですか?俺を天文部に勧誘するんですか?俺、星なんて興味ないですよ」

「そこは、いろいろ話してみてから決めてよ」

 またニヤニヤしている。俺はどうやらこの先輩のこの笑顔が苦手なようだ。

「・・・話だけですよ」

「うむ!よろしい」

 そう言い、内田先輩はテーブルにお茶とお菓子を出し、話し始めた。いつ活動しているか、どんな活動をしているか、自分がどれだけ星が好きか、どの星座がお気に入りか。

「先輩はなんで星が好きなんですか?」

「そう聞かれるとうまく答えられないけど、星がよく見える日に空を見てると、空に落っこちていくような感覚がするんだよね。それが好きなのかも。」

 照れくさそうにその後も星について話す内田先輩を見て、彼女にとって星がどれだけ魅力的なのかはわかった。まさに、三度の飯よりって感じだ。でも・・・

「すいません。俺は天文部には入部しません。」

「・・・そっかー」

 内田先輩は楽しそうに話していた時の笑顔から、急に落ち込んだような顔になり、少し下を向いた。

「・・・ごめんね、退屈な話に付き合わせちゃって」

「いえ、先輩の話を聞くのは楽しかったので気にしないでください」

「ありがと・・・」

 空気が気まずくなってきた。そりゃあそうだ。勧誘失敗した相手にこれ以上何を話せばいい。世間話をしても会話はすぐに途切れてしまうだろう。・・・帰りたくなってきた。

「あの、俺もう—―」

「あのね!部活は入らなくていいから、たまに顔を出して話に付き合ってくれないかな・・って」

「・・・そういうことなら」

「ありがと!」

 どうやら、さっきの楽しそうに話しているのを見たところ、話を聞いてくれる人がいるだけでも嬉しかったようだ。すごい語りっぷりだった。

確かに、星の話なんて友達にされたら、ふつうは少し引いてしまうだろう。俺はそういうのを気にしないタイプだから、趣味の話をするにも暇な時間に付き合わせるにも打って付けだろう。久地先輩もそれが狙いだったのだろう。

本当にあの人は何なのだろう。周囲の人に対して気を使えすぎではないか?お節介なくらいだ。だからグループでも中心人物になれるんだろうな。

「ここ、有彩とか久地先輩とか、暇のときによくおしゃべりしてるし、いつでも来ていいからね!」

 内田先輩は勧誘に失敗したなんてことはなかったかのように、よく見るニヤニヤした笑顔に戻っていた。


 用事があると言い帰った俺は、そのまま家に直行して早々に寝ることにした。

 布団に入る前にメールの確認をしようとすると、久地先輩から今日のことでお詫びのメールが随分と前に来ていた。

【メール気づきませんでした。伝言はちゃんと受け取れたので大丈夫ですよ。】

 数秒すると、返信が返ってきた。

【そりゃあよかった】

 本当にマメな人だな。この先輩は。そろそろ布団に入ろうとしたら、もう一通メールが届いた。

【天文部の件、どうした?】

【紹介してくれた久地先輩と内田先輩には申し訳ないんですが、断りました】

【そうか。でも、美月さんと話すのは楽しかったんだろう?俺もあそこで駄弁ってるときあるから、遊びに来いよな】

【わかりました】

 今日の成果は、あらかじめ内田先輩から聞いていたようだ。一応、どう思っているか探りにでも来たのだろう。

 しかし・・・入部を断った部活に遊びに行くのはどうなんだろうか。自分勝手すぎるよな。当分は内田先輩とは関わることはなさそうだな。

 布団に入ると、勧誘を断ったことを考えてしまい、あまり良い気分で眠ることができなかった。それに加え、やはり心のどこかに何かが引っかかっている。それの正体がわかるのは一体いつになるのだろう。


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