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十四
姉ということを自覚して最初に弟のためにしたことは、何があっても弟からあの女の子を遠ざけることだった。キャンプの帰りもバスの席が近くにならないように、地元に帰っても公園で出くわさないように。小学生ながらも、少ない知恵を使ってなるべく弟からその女の子を遠ざけた。それは徐々に私の一つの義務のようになった。
それから三年後、その女の子のことも忘れて普通に学校生活を過ごしていた中学三年の春に、その女の子は私と同じ中学に入学してきた。
最初に見たときにすぐにあの女の子だと分かった私は、その女の子に対して悪い印象しか持たなかった。
私は裏でその女の子の入部した部活に親しい後輩を作り、弟が入学してくるのに備えた。
私が卒業すると、弟はその中学に入学した。忙しいバスケ部に入った弟は、その女の子と友達になることはなかった。もちろん、廊下ですれ違うくらいはしていただろうけど、お互いのことを思い出すことはなかった。
さらに高校三年の春、またその女の子は私の通っている高校に入学してきた。今度はその女の子のことを忘れていなかった私は、天文部に入学したことを聞いてホッとした。弟は星に興味はまったくない。だから出会う可能性はないと確信した。
大学二年生になって一か月が過ぎたころ、弟の友達から弟が天文部の先輩と仲良くなったと聞いた。それを知ったとき、弟のことがとても心配になり落ち着かなかった。しかも、後日に天文部に入部したことまで知らされ、加えてあの女の子が弟に対して異性として好意を抱いているとも聞いた。その日は最近覚えたやけ酒を、家から飛び出し駅の近くの居酒屋で実行した。
居酒屋から帰る途中に弟と出くわしたが、どうやら例の女の子だってことはわからなかったみたいだった。
しかし、弟のスマホには今でもあの女の子からもらったストラップが付いている。しかし、弟はそのことを忘れ、自分で作ったと間違って覚えていた。それを知ったとき、まだ頑張らなくてはいけないと義務感を感じた。
ここまで隠してきて引き下がれなくなった私は、高校の時の後輩と弟の友達を巻き込んだ。全て事情を話した。それで、二人がお互いのことを思い出さないように頼んだ。くだらない話だと自分でも分かっていたが、二人は意外にもすんなりと了承して、協力してくれた。
でも、私は勘違いをしていた。あの女の子が覚えていないとばかり思っていた。弟と天文部の合宿に行っている二人から、どうやらあの女の子が子供の頃のことを覚えていると報告があった。
私は焦った。弟のことを覚えていながら、あの女の子は弟に対して好意を抱いていた。あの女の子は性悪が悪いに違いない。
私は二人と今後のことを相談するために、通っている大学の最寄り駅で開催している祭りに呼び出した。
「先輩、そこまでする必要ありますか?」
「・・・」
「少し過保護なのでは?」
「・・・私は、あの子のことが心配なだけで・・・」
わかっている。普通、姉が弟に対してここまで過保護になることはないし、そもそもそんな昔のことを気にすることはない。でも、あの時に感じた弟に対する感情が、今も私を動かそうとする。




