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memory  作者: 柊 しゅう
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     十一


 最終日、今日は雨が降っている。昨日の夜はバーベキューをし、天体観測をした。実は、寝始めるころからぽつぽつと降っていたのだ。濡れては困るものは先に避難させておいたので、ダメになったものはないが、おかげで今日はなにもやることがなさそうだ。

 全員で濡れながらテントの片付けなどして、さっさと、車に荷物を全て積んでしまった。

 最後に、二日目に一度行った近くにある温泉に行くことになった。雨の中の片付けで体は冷え、温泉はそんな体を癒してくれた。

「ふ~。つかれた~」

「ちょっと残念だな。最終日に降るなんて」

 久地先輩と歩は足をいっぱいに伸ばして湯に浸かっている。俺もその横で足を伸ばして、天井を見上げている。

「この後どうすんの?」

「わからないな。このまま帰って解散って感じになりそうだな」

「なんか最後にこんなんなるって、異様な疲れがあるな」

「そうですね」

 三人同時にため息をつくと、女風呂の方から人の声が聞こえた。さっき温泉に入る前に、受付の人が今日はまだ客は来ていないと言っていたから、きっと内田先輩たちだろう。

「こういうのって、普通覗きに行くイベントだよね」

「じゃあ、お前あの壁上ってみろよ」

「テルなら行けるんじゃないですか~?」

「ふざけんな」

 たいして会話も続かず、会話が途切れるたびに一斉にため息をついていた。全員本当に疲れ切っているようだ。

「それで、美月は結局あのこと言ったの?」

「・・・タイミングなくてまだ言ってない」

「・・・私もタイミング削るようなことしちゃったし、今回はしょうがないね」

「気にしないで。どのみち、あれがなくても言えなかっただろうし」

「あら、この前言っていたことかしら。やっぱり言う気ではあるの?」

「そうなんですけど・・・」

 ・・・三人とも静かに聞いていたが、あとは聞こえなくなってしまった。そこで久地先輩が出ると言い、三人とも湯から上がった。

 ロビーでアイスを食べて待っていると、残りの三人も少ししたらあがってきた。小林先生と渡辺先輩は久地先輩に女子としての立場を存分に使い(一人は女性だが)、アイスを奢ってもらっていた。

 珍しく内田先輩がこういう場面でノリに乗らないでいた。

「先輩は奢ってもらわなくていいんですか?」

「久地先輩がかわいそうだし」

 内田先輩はレジに並んでいる三人を見つめながら、テンションの低い声でそう言った。

「・・・ねえ、テル君が奢ってよ」

「俺の財布はかわいそうじゃないんですか」

「おねがい」

 いつものニヤニヤした笑顔はせずそう言い、俺の手を注文口まで引いてった。

 内田先輩はバニラ味を注文すると、すぐに俺の後ろに下がっていった。店員が俺の方を見て注文を待つので、ついでに自分の分もチョコ味を注文した。

「ありがとね」

「いいですよ。何気に今回の合宿、というかキャンプでしたけど、楽しかったから。企画してくれたお礼ってことで」

 ソフトクリームが出来上がるのを待っている間、内田先輩はずっと黙っていた。

「・・・どうしたんですか。さっきから変ですよ」

「・・・スマホに付けてたあのストラップ、まだ付けてるの?」

「これですか?」俺はストラップのついたスマホを内田先輩に見せた。

「そう。それさ、手作りだよね?」

「子供の時に自分で作ったと思います」

 俺がそう言うと、内田先輩は驚いた顔をした。じっと俺の手元を見下ろし固まっている内田先輩は、やっと動いたと思ったらちょっと待ってとだけ言い、渡辺先輩のもとに走っていった。

 残された俺は二つのソフトクリームも持ち、歩いて皆のもとに戻った。

「急にどうしたんですか。これ、食べないんですか?」

「ご、ごめん。ちょっと有彩とトイレ行ってくる!」

 内田先輩は俺からバニラ味のソフトクリームを受け取ると、渡辺先輩とともにトイレのあるほうに歩いて行った。並んで歩いて話している二人の横顔は、何かを言い争っている様でもあった。

「お前何かしたのか」

「なにもしていませんよ。ただ、これを見せてくれって言われただけで」

「それだけか?」

「・・・あとは、自分で作ったと思いますって言っただけですね」

 二人して本当に不思議そうな顔をして話していると

「久地先輩、ちょっといいですか」

 ここまで黙っていた歩が久地先輩に声をかけると、スマホの画面を久地先輩に見せた。何を見せているのだろうと俺も覗き込もうとすると、歩はスマホを素早くポケットにしまった。

「詳しいことは飯島先輩に聞いてください」

 俺の姉がどうかしたのか?久地先輩に何か用でもあるのだろうか。

「姉さんがどうしたんですか」

「・・・いや、受験について聞きたいことがあってな」

 受験のことなら小林先生に聞けばいいのに、なぜわざわざ姉に聞くのだろう。

 小林先生の方を見ると、少し離れた壁のところで電話をしていた。おでこに手を当て、何やら困った顔をして話している。

 しばらくすると、内田先輩と渡辺先輩が戻ってきた。

 全員がそろうと、さっさと帰ることになったらしく、車に乗り込みすぐ出発した。どうにも、自分だけ何か置いて行かれている気がする。内田先輩はときどき急に変になるから気にしないとしても、さっきの久地先輩と歩の様子はおかしかった。本当に受験の件で姉に用があるのだろうか。帰ったら姉に確認する必要があるかもしれない。


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